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第34話 立川チョーチューのファンとユン その1

国士館連合との高田馬場駅抗争でも活躍したチョーコー3年、ユン・ケンホウとファン・シュウスケが、まだ立川のチョーチュー3年生時のお話・・・・・・。



1970年 昼頃 立川 西東京朝鮮第一初中級学校内


「もし相手こうやって攻撃してきた場合、ここ!ここの金玉を思いっきり蹴り上げろ!そしたら・・・・・・」


昼休みの時間、アイパー姿の教師が初級学生の生徒たちに、喧嘩のやり方を教えていた。

もちろん、これらは全て初級生たちが他校の日本人生徒たちから襲われた時の護身用であるのだが、子供の時から教師が喧嘩の仕方を学校内の休み時間や授業中に教える。

これもチョーコー生が喧嘩に強い一因でもあるだろう。



校舎裏


2人のチョーチュー生が、学校を背にしてヤンキー座りをしながら煙草を燻らせている。

チョーチュー三年、ユン・ケンホウとファン・シュウスケ。

チョーチューで一番と二番目に喧嘩が強い男たちである。

二人ともほぼ同じ身長170前半で、そこまで大きいガタイという方ではなかった。

ユンとファンは、それぞれ拳道会とテコンドーの黒帯を所持していた。

ユンの右手には喧嘩の時、相手のが振り回したハンマーを右腕で受けた時についた大きな傷があり、立川の日本人の不良たちは、その右手を見ただけで「チョーチューのユン」として恐れをなして走って逃げ去る。そういう存在であった。

チョーチューの二番手であるファンは、腰にベルト代わりのチェーンを巻き、日ごろから立川の街中を鎖をジャラジャラ鳴らしながら歩くので、その音を聞くと立川の学生は早足でその場を後にするのだ。

この2人の坊主は、立川の駅を中心に様々な娯楽施設や不良の溜まり場に出向いて、日本人の女をナンパしながら深夜まで踊りあかしたり、日本人狩りを行ったりを日ごろの日課にしているのだが、今日は日課の日本人狩りをどうしようか二人で相談していた。


「今日はどうするよ?」


ファンがユンに聞いた。


「どうするも何も、まずは日本人の女だべ。最近朝日友好の橋を渡れね~もんだから、腰が寂しくていかん。誠に遺憾であります!」


ユンは、おどけながら答えた。

意外と詩人的な奴でもある。


「ちっちっち。ユンはわかってね~な~」

「何がやねん」


少しむっとするユン。

ファンは、揺らしていた右手の人差し指を、自分の股間部分に移動させた。


「チョッパリ女にはよ~、朝鮮を35年も植民地にされた朝鮮民族の苦しみ痛みが、お前らチョッパリにはわかるか!?・・・・・・こういうのよ~」

「な、なるほど・・・・・・頭がキレるなお前」

「こう言えば、相手は罪悪感からこちらに同情してくれるってわけよ。ディスコではこれで連戦連勝や~」


女をナンパした後の事を想像しながら会話に花が咲く二人。

だが、今日は、楽しいデート、という訳にはいかなかった。




夕方 立川チョーチュー校内


ユンとファンが下校しようとしていたグラウンドにいた時。

血相を変えてオ・コウテツがユンたちの元にやってきた。


「センが二中の奴らに拉致られた!」


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