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第33話 明大前のキムさんと朝鮮総連 その2

夜 キム建設 本社 敷地内


キム・ショウミ達が、花火用のセットや鍋用の具材を近くのスーパーで調達し、それを持ちながら「キム建設」本社敷地内にやってきた。


「キムさん、本日も色々ご寄付ありがとうございました。」

「また、世間話がてらお伺いさせていただきます」


本社の入り口から2人組のスーツを着た男たちが、ドアの前に立っている50代くらいの男にペコペコ頭を下げながら別れの挨拶をしていた。

挨拶を終え踵を返して歩き出す2人組。

その2人組の男が、キム・ショウミと友人たち5人に気づく。


「キム・ショウミさん、いつもアボジにお世話になっております。世田谷支部のリー・タダヒロです」


20代後半くらいの見た目に、七三分けにした170cm半ばくらいの身長のリー・タダヒロは、明らかに年下のキム・ショウミに対して首を垂れる勢いで頭を下げてあいさつした。

その朝鮮総連の幹部らしき男が高校生のキム・ショウミにへりくだる様子を見た5人のチョーコーの友人の女生徒たちは一様に驚いた。


「こちらこそ、アボジがお世話になっております」


と友人たちの驚きをよそに、キム・ショウミは儀礼的に頭を下げた。


「あと、こいつは、パク・タイエイ。俺の部下で最近世田谷支部に配属された新人です。どうぞよろしくお願いいたします」

「パク・タイエイです!キム・スイケンさんにはいつもお世話になっております!」


少し緊張気味に頭を下げながら自己紹介するパク・タイエイ。

ラグビーをやっていたのだろうか。

身長はリー・タダヒロより少し低い身長だが、体が横に広くデップリしていて、耳が潰れていた。




「随分平身低頭だったわね。総連の幹部」


キム・ナオミが2人の朝鮮総連幹部の去っていく後姿を見ながら、驚きそう言った。


「いつも、あんな感じよ。私が幼稚園生の頃からああいう風にペコペコしてたもの」

「へぇ~」


キム・ショウミの言葉に、総連はそういうものかと思いながらキム・ナオミは頷いた。




朝鮮総連も慈善団体ではないので、やはり寄付してくれる人間とそうでない人間では接する態度も違っていた。

ましてや、多額の寄付をしてくれる人間には、その家族に対しても、懇切丁寧・慇懃な態度で接してくる。

だが、一たびその多額の寄付をしてくれた人間が没落した場合どうなるか?

まったくの無視である。

今まで長年にわたり、散々金銭面などで支えてきてくれた功労者であったとしても、助けてくれるどころか、相手にもしてくれなくなる。

多額の寄付をしてくれている間は、相手が幼稚園児であったとして土下座するぐらいの勢いでおべっかを使うが、没落すれば挨拶もしない。

そういう冷たい側面を朝鮮総連は持っているのだ。

だから、2002年に「末端の兵士が勝手に行った」ことで金正日が日本人拉致について兵士に変わり謝罪し、日本で拉致問題がクローズアップされて朝鮮総連に激震が走ったことにより、多くの在日コリアン達による朝鮮総連離れが起こるのだが、それ以前から、そういう冷たい側面を知り、朝鮮総連と縁を切る在日も多数いたのだ。


これらのエピソードは、キム・スイケン一家が朝鮮総連と縁を切る。それ以前のお話・・・・・・。


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