目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第31話 王子の美知子とチマチョゴリ その2

キム・ショウミは、隣の車両を意識を向けてみた。


ワー!キャー!

コノヤロー!

ブッコロス!


確かに、隣の車両から若い女の争う声が聞こえる。

キムショウミは、連結部分に近づき、そこから隣の車両、声がする方角を覗いてみた。

覗いた先で、チョーコーの女子生徒とスケバンが罵詈雑言を吐きながら、取っ組み合いの喧嘩をしているのを目撃し驚いた。


(あれ、チョーコーじゃん!何でこんな所で喧嘩してんのよ)


連結部分のドア付近で、野次馬が数人、その喧嘩を眺めているのを後ろから覗いていたキムショウミは、加勢しようかどうしたものかと悩んだ。

悩みながら、10人の団体戦をよく凝視した。


「カンジャンネムセ!スシノジャ!(醤油臭い!スシ女!)」


キムショウミが、朝鮮語でスケバンの髪を掴んでいるチマチョゴリをの女生徒が目についたので顔を見てみると・・・・・・。


「あ!パクじゃん!」


思わず大きい声をだすキムショウミ。

それに驚いて前にいたサラリーマンや男子中学生たちが振り返る。

スケバンと取っ組み合いをしているチョーコー生は、キムショウミの友人だった。


「ちょ、ちょっとすいません!」


キムショウミは慌てて、前にいる野次馬を押しのけて連結部分に侵入し、その先のチョーコー女学生たちがスケバンと喧嘩している車両に繋がるドアをいき良いよく開けた。


その時、園田美知子がパクエイヒに馬乗りになり両手で首を絞めていた。


「てめー、生きて電車から降りれると思うなよー・・・・・・」


髪の毛がボサボサになり、引っかき傷がついた顔でパクエイヒを睨みつけながら、首を絞めた両手に力を入れる園田美知子。


「ぐ・・・ぐぅー・・・・・・」


うめき声をあげながら、何とか両の手を振りほどこうと、園田美知子の両の手首を握るパクエイヒ。


(勝った!)


内心、園田美知子は勝ちを確信した。

まずは、この邪魔なチョン公をつぶした後、残りの4人に加勢しなくては。

そう頭の中で計算し始めていた。


「あたしのチング(友達)に何してくれてんのよ!」


園田は、後方から女の声が聞こえてきたことに反応。

後ろを振り返ろうとした───。


ガン!


園田の後頭部に、キムショウミの左足で繰り出した横蹴りが完璧に入る。

その拍子に、キムショウミが履いていたオープントゥパンプスのヒール部分が「ポキッ」と折れた。


「あー!折角かったばかりだったのにー!」


ドサァツ!


振り返ろうとした瞬間に後頭部を蹴られた園田は、意識外の打撃を喰らった事も影響して、そのままうつ伏せに倒れてしまった。

倒れた園部の下敷きになっていた、パクエイヒが園田をどかして起き上がると目の前にはキムショウミがいた。


「ショウミ!何でここに!?」

「私が聞きたいわよ。スケバンと喧嘩してるなんて」

「話はあと!ショウミ、加勢して!」

「え!?ええ・・・・・・」




京王線 つつじヶ丘駅ホーム


5人のスケバングループが下着姿で正座させられていた。

それを11人のチョーコー女学生グループが両腕を組んだり、腰に手をやったりしながら見下ろしていた。

11人なのは、キムナオミたちが応援を呼んで、5人のチョーコー女学生(2年)が駆け付けたからである。


「・・・・・・」


下着姿でうつむきながら、正座させられている園部美知子たちをホーム上の通行人たちがジロジロみている。

その羞恥に耐えながら唇を噛む園部。

スケバングループ5人とも髪は喧嘩の後な為にボサボサになっていた。

顔や体もアザや切り傷が何か所もあって乱闘の激しさが伺い知れた。


「さぁ。どうすればいいか分かるよね?」


キムナオミが園部美知子にキツメに問いかける。


「・・・・・・」


沈黙を続ける園部美知子。


「黙ってちゃ分からねぇだろ!朝鮮人舐めてんのかキサン!」


キムナオミは、怒鳴りつけながら、園部たちの背後の壁を思いっきり蹴飛ばした。


(ナオミってこんなキャラだったっけ?)

(車運転させちゃいけないタイプ)


カンとパクは、キムの変貌ぶりに内心驚いていた。


「すんませんでした!」


園部美知子が大声で謝罪しながら土下座した。


「「「「す、すんませんでしたー!」」」」


園部の土下座を見た、4人の子分たちも慌てて土下座して謝罪した。




京王線 つつじヶ丘駅ホーム


スケバンとの一戦を終えた5人のチョーコー女学生とキムショウミは、スケバンたちを先に帰らせ、京王線つつじが丘のホームで世間話に花を咲かせていた。

招集した5人のチョーコー女学生は、新宿のディスコにいくらしく、去っていった。


「ショウミ、何であの電車に?」

「ああ、歌舞伎町の風林会館にアボジが親分さんたちと麻雀打ってるから弁当届けに行ってた」

「あ~、あんたもよくそんなとこよく1人で行けるわね」

「そう?みんな優しくていい人よ」


キムショウミの返答にパクエイヒが驚く。

令和の時代、歌舞伎町の風林会館は、アミューズメント施設として有名だが。

昭和の時代は、ヤクザが多く出入りして麻雀をこうじたりするヤバイ施設でもあったのだ。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?