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第29話 チョーコー生、ワイドショーデビューと日本警察その2

新聞テレビや国会を賑わし、さらには関東中の不良たちから恐怖と共に連日語られた朝高vs国士館抗争事件。

学生の喧嘩を超えたこの抗争は、テレビのワイドショーの格好のネタにもなった。


「3時のあなた」


このタイトルの番組は、1968年4月1日から1988年4月1日までの20年間にわたり、フジテレビ系列局で生放送されたワイドショー・情報番組である。

「3時のあなた」でチョーコー生と士官生による新宿駅・高田馬場駅乱闘事件を特集。

番組内では、国士館大・高生が新宿駅と高田馬場駅で連日、帰宅中の朝鮮高校生を集団で襲撃。

その襲撃で朝鮮高校生が多数重軽傷を負い、如何に国士館生が悪辣非道な限りを尽くしたかを喧伝する内容であった。

そして、新宿駅と高田馬場駅の乱闘に参加していた、チョーコー生3年のヤン・リョウキがこの番組に国士館生による暴行事件の被害者として出演した。


ヤン・リョウキは、普段はオールバックでビシッとキメ。

中ラン、ボンタン、右手にチョンバッグ。

ベルトはワニの本革ベルト。

ゲソと呼んでる牛の本革靴で履いて都内を練り歩いているチョーコー生の鑑の様な男だ。


だが、テレビの中にいたヤン・リョウキは違った。

髪を七三分けにして、アナウンサーからの質問にしおらしく下を向きながら答える姿は、普段、都内で日本人の不良を鬼の形相で狩りつつ、都内のディスコでリーダー的存在として日本人の男女から羨望の的で見られるチョーコー内のファッションリーダーの姿とはあまりにもかけ離れていて、彼に狩られた日本人の不良たちが見たらあまりの落差に驚愕して人間不信に陥る事間違いなし。

そう言えるような変身ぶりであった。

さらにヤンは、被害者としての装飾品も忘れない。

左手に包帯を巻き、視聴者に向けて、これでもかとアピール。

それをテレビで見ていたチョーコー生たちは、普段のヤンを知っているだけに大爆笑。

これもあってか、世間は国士館の悪逆非道さを認識。

世論による痛烈な国士館バッシングが始まるようになる。

また、この報道は巨大組織・警察庁への猛批判にもつながった。


警察庁は、チョーコー生とサカンの衝突を防ぐ名目で、警察官をチョーコー生の都内通学路の至る所に警備として配置し、チョーコー生の動向監視を行っていた。

もちろん、それがチョーコとサカンの衝突を未然に防いだことも多々あったが、実際は「池袋での前哨戦と日本警察」にも書いた通り、都内の警察官はチョーコー生と日本人の不良学生が衝突した時、日本人側の味方をするので、チョーコー生が押している時など治安維持名目で喧嘩に介入し鎮圧してくるのが常だった。

じゃあ、日本人が押している時はどうだったかというと、前に書いた通り、その喧嘩を遠目で見ている警察官たちは何事もなかったようにスルーするかその場からいなくなったりするのだ。

そういう不平等・茶番も、新宿・高田馬場事件で一変する。

メディアによる、国士館大・高生と警察庁への猛批判・バッシングだけでなく、新宿駅・高田馬場駅乱闘事件で被害を被った国鉄や私鉄も激怒。

これら世論の圧力に警察庁も、新宿駅・高田馬場事件以降、昔の様な不平等・茶番の警備を改善せざるを得なくなり、「少し」真面目に警備をするようになった。


だが、サカンとの抗争はこれ以後もなくなることはなく、都内各所で激しい抗争が繰り広げられ続けるのであった・・・・・・。


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