山手線内回りの電車内で始まったチョーコー25名vsサカン連合24名の乱闘は、前日同様周辺の一般乗客と周辺住人をパニックに陥れた。
隣の車両にいた大多数は、国士連合が電車を破壊し始めた辺りで、駆け足で逃げ初め、高田馬場駅周辺の店は、乱闘のとばっちりを恐れ、早めに閉店した。
乱闘が起こっている隣の車両にいたのは、そういう喧嘩が好きな若者や女性、そして山手線の電車を撮影しようと偶々ホームにいた撮り鉄ら数人程度。
彼らは、隣の車両とホームから、チョーコーと士官連合の乱闘を巻き込まれないように距離を取りつつ見学していた。
撮り鉄は、カメラを構えて一心不乱にシャッターを押していた。
乱闘場所が新宿駅山手線ホームから、山手線電車内に変わったというだけで、その激しさは新宿決戦同様、殺し合いの様相を呈するが如く激しかった。
士官連合は、金属バットや木刀、中には短刀を振り回し、チョーコー勢は、刃物対策で両前腕に牛革ベルトを巻く者や、腹に新聞紙を巻き(刃物で腹を刺された時の防御に有効)、士官勢とステゴロで対抗している者もいた。
士官勢は、チョーコー生に向かって木刀などを振り回すが、ホームとは違い、狭い電車内。
角材などが人ではなく、窓やドア、手すりなどに引っ掛かったりぶつかったりして破損。
車内のほとんどの窓は、この乱闘で割れてしまった。
閉じていたドアも、チョーコーと士官連合のぶつかり合いで大きく凹んでしまっていた。
だが、サカン連中はドアや窓を破壊してもお構いなし。
ひたすらチョーコー生に向かって木刀など武器をふりまわして襲い掛かってきた。
だが、チョーコー勢も歴戦の猛者が揃った精鋭部隊である。
「しねや!リー!」
士官大1年・加藤は、190cmの巨体を誇るリーを見つけ、この男に狙いを定めた。
(角材で頭ミンチにしたる)
加藤は、持っていた角材でリーの頭部を狙う事を決めた。
しかし、角材を振り回すと電車の天井に当たるので、角材を床と平行にして構え、リーエイシュクの顔に向かって思いっきり突き刺した。
ドン!
角材が、リーの顔を貫かんとするが如く大きい音が車内に響いた。
手ごたえありと感じた加藤は、リーがどんな苦痛の表情を浮かべているか確認しようと顔をあげた。
「!!」
加藤は驚愕した。
角材で顔を思いっきりついたはずのリーエイシュクは、鼻血を出しているが、全く動じることなくピンピンとしていたのだ。
「ニヤリ」
鼻血を出しながら不敵な笑みを浮かべるリー。
加藤の顔が一気に青ざめる。
「アニョハセヨー!」
りーは、加藤に対し、大声をあげながら朝鮮語で威圧すると、加藤の持っていた角材を奪った。
「あっ・・・・・・」
加藤は、リーの巨体と打たれ強さに完全に腰が引けていた。
「おらぁ!」
そう叫んだリーは、手にした角材を膝蹴りで叩き折った。
「あ、折っちゃった・・・・・・」
加藤は小さくつぶやく。
加藤は内心逃げたかった。
だが、車内はお互いの勢力で満員になっており、逃げ道はどこにもなかった。
そんな、加藤をよそに、割った片方の角材を思いっきり振り上げるリー。
「ジャバラは消毒じゃー!」
バゴォォーン!
折れた角材を思いっきり加藤の脳天に叩きつけた。