ユキナはテーブルに置いた自身のバッグから、スマホ用の小型ジンバルを取り出し、スマホに取り付けながら辺りを見回した。
「う〜ん。この辺はあんまり映えなそうね……。
洗面台に移動しよう」
狂弥とユキナは洗面台に移動すると、鏡の前は溢れた化粧水や洗濯物でゴチャゴチャとしていた。
あまりの汚さから呆気に取られるユキナに対して、狂弥は申し訳なさそうに頭を下げる。
「すみません……」
狂弥の声を聞くと、ユキナは顔を引き攣らせながら笑みを浮かべた。
「ま、まぁ。あのガサツな愛凰と一緒に暮らしていて、洗面台が綺麗な訳無いわよね……。
だけど、照明もあるし、撮影するならここしか無いわ」
「は、はぁ」
気が乗らない狂弥にユキナは振り向くと、両腕を胸に寄せて、頬を赤らめながら谷間を強調する。
「お願い! 片付け手伝って♡」
ユキナの美しい谷間は、思春期である狂弥の視界を埋め尽くした。
「は、はい!」
狂弥は顔を真っ赤にさせると、息を荒げながら洗面台を片付け始める。
あんなもん見せられたら、断れねぇよ!
洗濯物を物凄い勢いで洗濯機に詰め込むと、タオルで溢れた化粧水を拭き取る。
「凄いじゃん! もう片付いちゃった」
見違える程に整えられた洗面台にユキナは感動すると、小型ジンバルにハート型のライトを装着して、カメラアングルを探り始めた。
「お! この辺なんかイイ感じ!
狂弥君、この辺に立ってみてくれる?」
「は、はい」
狂弥はユキナの指示通り、緊張で体が小刻みに震えながら洗面台の鏡前に立つ。
日頃、狂弥には友人と気軽に記念撮影をすることはあったが、自分の写真を人に撮ってもらうなんてことは今までなかった。
しかも、写真を撮ってくれるのがユキナだと思うと、自然と緊張で顔がこわばってしまう……。
「そんな緊張しないで大丈夫だよ。リラックス、リラックス!」
緊張を
こりゃ、撮影が大変そうね……。とりあえず、準備だけ済ませよっと。
ユキナは鏡に映る狂弥を眺めると、ジンバルの下部に付いている折り畳みの三脚を展開して、狂弥の斜め四十五度付近に置いた。
「よし。これで良さそう! 一旦、画面を見てくれる?」
狂弥がジンバルのスマホの画面を見ると、洗面台の照明が肌に陰影を作って美しさを際立たせていて、ジンバルに付けられたハート型のライトは狂弥の瞳にハートを浮かび上がらせていた。
「凄っ!」
ライトの効果によって、更に美しくなった顔に狂弥は顔をウットリとさせる。
『パシャ!』
いきなりシャッターを押されたことに驚いた狂弥は、驚いてユキナの方を眺める。
「今の表情、すごく良かったよ!」
「え?」
ユキナはジンバルからスマホを外すと、撮った写真を見せた。
「ほら、めちゃ
画面に映し出されている写真は、まるでモデル雑誌の一ページみたいな仕上がりだった。
「こんな写真が家で撮れるなんて……。めちゃめちゃ凄いっすね!」
気分が撮影に乗ってきた狂弥を見ると、ユキナは安心すると笑みを浮かべて、スマホを再びジンバルに装着した。
「じゃあ、次は両手をグーにして顎の前に置いてみて!」
狂弥はユキナの指示を聞くと、拳を強く握って、両腕を顔の前で揃える。
その姿は、マイク・タイソンの構えとして知られるピーカブースタイルになってしまった。そして、構えたせいで目つきも自然と臨戦体制になっていた。
「こうですか?」
「ちょっと、ボクシングじゃないんだから! もっと力を抜いて、両手は顎の下!」
ユキナは狂弥の手を顎の下にずらすと、握り拳の力を緩ませて、外側に開く様に広げた。
すると、臨戦体制になっていた狂弥の顔も自然と和らいでいた。
「いい感じ! じゃあ、首を少し傾けて、顎を引いてくれる?」
「はい」
返事をすると、狂弥はユキナに言われた通りに動いてみると……。
「!?」
スマホの画面に映る可憐な姿に狂弥は絶句して、頬を赤らめる。
「良いよ! その顔最高!」
写真を数枚撮ると、ユキナは直ぐに確認した。
「バッチリじゃん! 狂弥君もこっち来て、確認してみ?」
「はい!」
狂弥は写真の出来栄えが気になって、急いでユキナの方へ駆け寄った。
「どうよ。やばいっしょ!」
狂弥はスマホの画面を確認して、目を疑う程の完成度に胸を躍らせる。
「ヤバすぎっす! ユキナさんの技術って本当に凄いですね!」
「技術って言っても、私はライティングを考えただけ。この写真を撮れたのは、モデルが良いからよ!」
「ユキナさんにそう言われると照れちゃうな! これ、SNSで上げたら、案外人気になるかもしれませんね!」
笑いながら狂弥が放った一言で、ユキナは何か思い付いたように俯いた。
「そうね……。それ、アリかも」
「ユキナさん?冗談ですよ冗談!」
「フフフ……」
不気味な笑みを浮かべるユキナを狂弥は心配そうに見つめる。
「あ、ごめん! つい妄想が膨らんじゃって」
視線に気がついたユキナは、今まで撮った狂弥の写真を全て確認し始めた。
「よし。上半身の写真はこれで良さそうね!
あとは全身の写真が欲しいんだけど……」
ユキナが狂弥の全身を眺めていると、ゆっくり視線を落として、足をじっと見つめた。
「あの〜、どうかしましたか?」
ユキナは決心が付いたかのように顔を上げると、不敵な笑みを浮かべた。
「狂弥君! すね毛、全部剃っちゃおう!」
「えええぇぇぇぇぇぇ!?」
To Be Continued…