ゴッデムポーズ(右手を拳にして、左手首を強く握って空高く突き上げる姿勢。雉四郎は翼の先を拳に見立てている)を取る!!
「ゴッデムッ!」
彼女が叫ぶと、異次元の扉が開く!
何が起きたかと言うと、偶然アルファネムス効果を生み、ハードリングチャンバレー現象が引き起こされ、観点相互作用反応が生じ、内閣総理大臣賞的な連鎖的に多角化式婉曲類型と思わしき多段次元のマシュマロ渦がまさにテラ時空と地球時空との空間の橋渡しをしたのである。
まあ、平たく言えば、空に“窓”みたいなのが出てきたわけであーーる!!
そして、その窓が大きく拡がり、中から男が出てくる!!
「キャアアアッ!」
「喚び出しておいて叫ぶな!」
なぜ雉四郎は叫んだのか!?
説明するまでもなく賢明な読者諸君ならばお察しのことだと思うが、出てきた神ことゴッデムは乳首と股間を隠すようにアコヤガイの貝殻(しかも神サイズのデカさだ)を装着していたからだ!!
「へ、変態!! 変態よ!!」
「変態ではない! 写真撮影中に喚ぶな!」
「写真撮影!?」
「そうだ! 昔は神の姿を絵画などで残すのが当たり前だったが、アンベレグラム(写真投稿系のSNS)で
アコヤガイを揺らしながらゴッデムは拳を握る。よく見ると、サングラスも☆型になっており、肩にはファンキーなイルカのバルーンを抱えていた。
「海のモテ神が今年のイメージでな!」
「そんなものどうでもいいわよ!」
怒り狂う雉四郎に、ゴッデムはム厶ッと眉を寄せる。
「しかしだ! 最近、喚びすぎだぞ! 貴様ら、神をウー●ーイーツか何かと勘違い…」
「してないわよ! いいから、これが最後のお願い! アタシを異世界に…それもイケメソばかりの異世界に飛ばしてちょーだい!!」
「え? もう?」
ゴッデムがキョトンとしているのを見て、雉四郎は「あ?」みたいな顔をする。
「ほら、初めての『畜生転移』の時はさ、読者にインパクト与えるためもあって、開始ですぐ転移みたいなの必要だとは俺も思う。だがな、『畜生転移2』ではそれを引き伸ばしたじゃないか。それは読者に『どうせまた転移するんでしょ』みたいな先読みをされないように、飽きさせないためじゃないのか? 神的にもそれはありだったとは思うわけ。かといって、今回、即座転移みたいな原点回帰みたいなのをやってもどうせウケないというか…」
「何わけのわからんメタ発言ウダウダと連発してんのよ!! どうでもいいのよ! アタシは幸せになるために転移したいの!! いいからツベコベ言わずに転移させなさいよ!!!」
雉四郎は血の涙を流して叫ぶ!!!
「ど、どうしたんだ、雉四郎。いつもの貴様らしく…」
「いいから! もうね、この雉の姿ってだけで恋愛物の話としてはまったく進まないのよ!! 犬次郎とか猿三郎ならまだ読者もイメージが湧くでしょうけれど、アタシは雉よ! 雉!! 鳥類が主人公の話なんて地味すぎるのよ!!」
そう。彼女はアイデンティティに悩んでいた!
雉の姿でお色気をやっても誰も喜ばない。いや、もしかしたらそういった性癖の人もいるかも知れない。
しかーし! 作者はそうじゃない!
オッパイやオシリは大好物だ!
しかし、翼や尻尾を見ても性的興奮は覚えない! もうどうしていいかわからないのは、作者も同じだったのであーーる!!
「異動させろ! 異動させろ!!」
ゴッデムの頭を、雉四郎はクチバシでしつように突き始める!
「や、やめろ! わかった! 異動だな! わかった! それやめろ! わかったから! 異動させればいいんだろうが!! 異動させれば!!」
血まみれになったゴッデムが降参とばかりに両手を上げる。
「……はー、はー。もうしょうがないなぁ。の●太くんはぁ」
ダミ声でいいながら、ゴッデムは股間のアコヤガイから何かを引っ張りだそうとした。
「なにやってんのよ! アンタのイチモツなんて興味あるけどないわよッ!!!」
雉四郎のクチバシが、アコヤガイの脇からゴッデムの急所を強襲する!!!
「ああっ! な、なんてことをしてくれたんだ!!」
「なによ!?」
ゴッデムはハンディカメラみたいなものを取り出す。それは雉四郎のクチバシによって穴が開いており、バチバチと青白く放電していた。
「これは?」
「異世界に異動するための機械だ!」
「は? あ、アンタ…神の力で異動させていたじゃ…」
「神の力だ! 神の力で異動させていた!」
「なら、なんも問題ないじゃないの…」
「問題大ありだ! これで世界異動がもう二度とできん!」
「…は?」
雉四郎にはゴッデムが何をいっているかサッパリ理解できなかった。
「だって、神の力だったんでしょ? 別にその機械がなくたって……」
「だから! これが神の力だったんだ!」
「はぁ? 意味がわからないんですけど!」
「なぜわからん!? 神が人間を創って、その人間がこの機械を造ったんだろうが! なら、つまりコレは神がこの機械を生み出したといって過言ではない! つまーり、これは神の力なのだ!!」
「なら、“ゴッデムッ”て今まで叫ばせてたのはなんだったのよ!」
「それはノリだ! 何かやるのにそういう気合入れるモノが必要だろうが!!」
「あー! もうそんな屁理屈どーでもいいのよ! それが必要なら直せばいいじゃない!」
「簡単に言うな! 天才…もとい天災科学者がここにいない以上は直せん!」
「ちょ、ちょっと待って。なら、アンタは異世界に飛ばす力とか持って……」
「持ってた! さっきまでな!」
「はぁ!? それって機械使ってたんじゃん!!」
「うるさい!! 機械も神の力なのだ! 俺が持っている以上、俺の力なのだ!!」
眼を血走らせて叫ぶゴッデムはかなりヤヴァかった。
「しかし、それどころか、これが壊れたら異世界への扉が……」
ゴッデムは眉間を抑えて、自分が出てきた転移窓を見やる。
それはグネグネと、深鍋の中で茹だるパスタのように大暴れしていた!
「なんとか責任とって止めなさいよ!」
「止められるか! 地球の神だって、貴様らみたいな畜生のゴミクズを放置しているだろう!! どうにもならんものはどうにもならんのだ!!」
投げやりにゴッデムはそう言い切る。所詮は彼も異世界の神だ。この世界なんてどうでも良かったのだ。鼻ホジーである。
「で、でも、このままじゃマズイんじゃ…」
茹でたパスタは、茹ですぎたかのようにどんどん膨張して拡がりつつあったのだ!!!
「安心しろ。最後の手段がある」
ゴッデムは親指を立てる。
「え? 何か手立てが…」
「ここに“マニュアル”がある!」
ゴッデムの手に握られていたのは冊子だった。
「えーと、雉のクチバシが突き刺さった場合の対処方法は…」
「そんなもの読んでいる時間は…ってか、そんな対処方法が載っているわけが……」
そうこう言っているうちに、異世界へ行くための暴発したエネルギーは充満して超大爆発を引き起こしたのであーーーーった!!!
このまま雉四郎は異世界ではなく黄泉の国に逝ってしまうことになるのか!?
気になる展開は、ここでまた次回につづーーーーくぅ!!