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猿三郎編11 ゴッデムの目にも涙

 命からがら逃げ出して来た猿三郎たち!


 猿三郎の頭頂の髪はごっそり抜け落ち、ゴリッポのリーゼントは落ち武者スタイルと化し、ベンザーの毛髪は真っ白になっていた!!


 サクラは息を切らして大きな胸を弾ませ(極めてFカップに近いEカップを)、雉四郎も……まあ、こっちはいいでしょう。


 とにかく! コレもソレもアレも、すべては恐怖によるストレスを彼らは抱えていたのであーーる!


「このままじゃいけん!! 喚びたくはないが喚ぶしかあるまい!」


「一体どうしたと…」「喚ぶって何だべ?」


 ゴリッポもベンザーも、そしてサクラも首を傾げるが、雉四郎だけは訳知り顔でガタガタと震える。


「だ、ダメよ! 猿三郎! 前に入浴中に喚んで大変な目に遭ったばかりじゃない!」


「じゃかましゃー! 異世界じゃ! またあの異世界に転移して、パワーアップする他、ワシがクソ柴犬から助かる術はないんじゃーい!」


 猿三郎は恐怖に錯乱していた。そして、猿三郎はゴッデムポーズ(右手を拳にして、左手首を強く握って空高く突き上げる姿勢)を取る!!


「な、なんだ? そのポージングは?」


「神じゃ! ワシらアニマルを転移させてくれる神を呼び出すんじゃ!

 ワシの真似をして、同時に『ゴッデムッ!』と叫ぶんじゃあ! 『ゴッデム』じゃないぞ! 『ゴッデム“ッ”』じゃ! 小さい“ッ”を忘れたら殴られるけんな! もう覚えたな! やれ! さあやれ!! 今すぐやれぃ!!!」


 明らかに常軌を逸した顔をしている猿三郎の剣幕に押され、全員が同じポージングをする。



「「「「ゴッデムッ!!!」」」」「ゴッサムッ!!!」



 猿三郎の顔が鬼の形相でベンザーを睨み、そしてローリングソバットを喰らわせる!!


「…ゴッデムッじゃ! 次間違えたら許さんけんな!」


「わ、解ったべ…」



「「「「「ゴッデムッ!!!」」」」」



 彼らが叫ぶと、異次元の扉が開く!


 何が起きたかと言うと、偶然アルファネムス効果を生み、ハードリングチャンバレー現象が引き起こされ、観点相互作用反応が生じ、内閣総理大臣賞的な連鎖的に多角化式婉曲類型と思わしき多段次元のマシュマロ渦がまさにテラ時空と地球時空との空間の橋渡しをする。


 まあ、平たく言えば、空に“窓”みたいなのが出てきたわけであーーる!! 


 そして、その窓からニョキッとグラサンの角刈りの強面が現れる!!


「きゃあ! なにこの人!」


 サクラが腰を抜かす。乳も尻も揺れた。エチエチである。


「人ではない! 神だ! 貴様らが呼んだんだろうが! 例え女でも殴るぞ! 神故に! ゴッデムッ!!!」 


 ビビリまくるサクラに、グラサン越しにもわかる血走った眼で怒り狂うゴッド!


 まーだ前作を読んでない困ったちゃんのために説明をすると、彼は武神ゴッデム(“ッ”は発音時のみ必要となる)!


 細かい説明は別にいらないが、とにかく何かを異世界に送る力を持つ偉大かもしれない神なのであーーる!


 え? なぜそんなことができるのかって? 知るか! そんなの神に聞け! 作者に聞くな!!


「ゴッデムッ! 聞いてくれーい!」


「厶!? 猿三郎ではないか! 久しぶりだな! 前回の投稿で出てきたのは2025年の2月23日だから、今日が2025年の3月4日だと……10日ぶりくらいか! いや、そんな久しぶりでもないな!」


「投稿言うな! そういうリアルタイムな話はやめてちょーだい! ここは近未来が舞台でしょ! 令和を超えた“超和ちょうわ(現在の元号)”の時代なのよ!!」


 よくやった! 感動した!


 雉四郎がメタ発言を止める!


「……で、何の用だ!? 俺が大好きな柴犬の犬次郎はいないようだが!! 何の用で喚び出した!? つまんない用事だったら殴るぞ!! 心して答えろ!!」


 激怒しながらゴッデムは問い掛ける!


 基本的に動物には優しいのだが、超日本猿は嫌いなのである!!


 これがゴッデム神を今の今まで喚び出さなかった理由でもあーーる!!


 猿三郎はゴクリと息を呑む。


「ワシらをあの異世界に再び…」


「却下だァァッ!!!!!!!!」


 超新星大爆発のような大激怒が、窓から発せられる!!!!!!!


 全員がその場に伏せた!!


「な、なぜじゃぁ!?」


「なぜだと!? 逆に問いたい! なんで俺がそんな面倒なことをせねばならんのだ!!!」


 至極もっともな話である!


「それに今、俺は半身浴で忙しいのだ!!」


「え!? まさか顔しか出てないのは…」


「当たり前だろう!! 全裸だからだ!!! こんな公の場で全裸でいたら、公序良俗違反で逮捕されるだろうがッッッ!!!」


 滅茶苦茶なのに、変なところは律儀な神なのであーる!


「頼むぅ!!」


 猿三郎は恥も外聞もなく土下座する!!


 まあ、2話目で尊厳なんてすべて打ち砕かれてしまっていたのだから、もはや失うものなど何もなかったのである!!


「そうそう都合よく…」


 嗜めようとしたゴッデムが眉をピクリとさせる。なぜならば、顔を上げた猿三郎の眼が涙にぬれそぼっていたからだ。


(グヒヒィ! しめしめ! これで同情してもらえるわい!)


 説明するまでもなく、猿三郎はそんなサルの浅知恵的な打算的なことを考えていたのだが、事実として当のゴッデムはそんな風にはまったく思っていなかった!


 ここにゴッデムの現在の心情を書き連ねてみよう!!



──なんて浅ましく、醜い生き物だ。コイツはとんでもない失敗で生まれてきてしまった、とんでもない失敗作に違いない。ああ、あまりにひどくて某政治家みたいな構文になってしまったが、そんな感じぐらいに最悪な気分だ。


──そういや、前作『畜生転移』は犬次郎のプリティさのお陰で書籍化、アニメ化、実写映画化が間違いなしだったはずなのに、このクズカス(猿三郎と雉四郎)の下劣下品醜態のあまり、そんな夢は悪夢となって消え果ててしまった。


──特にコイツを主人公にした『畜生転移2』からは最悪中の最悪だ。神だからこそ、1話から10話まで内容は知っているが、どれも品性の欠片もない。どんなに才能に溢れ、いつも素敵な作品を生み出す天才作者であっても、この猿三郎が主人公ではこんな風になってしまうのも仕方ない(つまり作者は一切悪くない)。



「頼むぅ!!」


 涙ながらに懇願する猿三郎に、ゴッデムの目尻にも涙がたまる。


(もう一押しじゃぁ!!)


 もちろんそんなことはない!


 小汚い笑みを浮かべる猿三郎の顔を、ゴッデムは0.1秒たりとももう見たくなかった。


 こんなのと相対している自分自身が情けなくなって涙したのであーーる!!



──哀れだ。こんな畜生と一瞬たりとも同じ世界に存在していたくない。同じ酸素を吸うのも汚らわしい。


──ああ、その為ならコイツらを異世界にブッ飛ばしてやってもいいだろう。神様だってこんな畜生どもを放逐するなら、きっと笑って許してくれるはずだ。まあ、俺が神なんだけどね。



「……よかろう。異世界に逝くがいい。畜生転移だしな。転移させないとタイトル詐欺になってしまうが故に!」



「「「「「ゴッデムッ!!!」」」」」



 こうして、猿三郎たちは異世界へ異動したのであーーった!!

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