それから色々あり、存在もしないゾンビビスに1ヶ月ほど警戒して籠城したり、ベンザーが運転できると豪語した船が動かす前に大爆発したり、サクラの入浴シーンを猿三郎とマーくんが盗み見たり、等々の出来事があったわけであるが、そんな事はあんま大した話でもないので割愛させて頂く!
んでもって、猿三郎が隔離島ワクワク動物園を脱出するのに、園内の鳥共を脅迫し「焼き鳥にされたくなきゃ言うことを聞け!」と畜生らしい交渉の果てに、鳥共に荒縄を括りつけ、某妖怪の代表気取りの何とか太郎の如く、空中を大移動するという離れ業をやってのけ、本島への帰還を果たすに至ったのであーーる!!
そして、やっとこさ、超日本超東京都うんももす町に! 猿三郎たちは辿り着く!
「つ、ついに帰ってきたわーい!」
猿三郎は感涙にむせび泣く。
そして彼の側には、グルグル巻きにされた雉四郎がグッタリとした様子でいた。
ここまで数百キロを休まず飛んできたのだから仕方がない(結局、ロリゴスロリだけでなく船長まで始末したのも、この雉四郎がやったことだと特定され、その責任を負わされ強制労働させられていた)。
「よーし! さっさと犬次郎のヤツを見つけて、今までの恨みを込めて、あんのクソガキをフルボッコにしたるけんのぉ!!」
ドス黒い笑みを浮かべる猿三郎に、雉四郎はフンと鼻を鳴らす。
「忘れたの? 犬次郎はアタシたちの中で最強よ。誰も勝てるわけないわよ」
「ハン! それは前回、『畜生転移』の話じゃろがい! 今回は『畜生転移2』! この猿三郎様こそが主役よ! それに前回の主人公は次作目ではパワーダウンするのがセオリー! 下手をしたら、物語冒頭で死んでフェードアウトもあるあるじゃーい!」
「そう上手くいくかしら?」
「ゲェフェフェフェッ!! ヤツはこの生温い現代で飼い犬になって、無様に肥太っとるハズじゃけぇ! あの地獄のような隔離動物園で鍛えていたワシとは違うわ!
異世界でレベル99になった上に、それを維持してきたワシが負ける要素など万が一にもないわい!!」
「しかし、敵の戦力を知らねば危険だっぺ! オラが作った相手のスケベ値を測れる“スケウター”を使っ…ンバッ?!」
猿三郎のローキックが、ベンザーの持つスケウターを破壊し、牛乳瓶の底を叩き割り、顔面にめり込む!!
「黙れ! このクソの中のクソが!! なぁにが知恵者じゃい! そんな役立たないゴミなんて、オメェと一緒にゴミ箱に捨ててしまえ!!」
「ひー! ゆるしてくんろー! ゆるしてくんろー!」
ベンザーをタコ殴りにする猿三郎!
散々、大嘘をぶっこいたことで、ベンザーの株はもはやゴキブリ以下となっていたのであーーる!!
「オメェらは足しか引っ張らねぇクズじゃけぇ! クソの役にも立たねぇ!」
猿三郎に怒鳴られ、ゴリッポもベンザーも縮こまる。
「…だって」
「だってもヘチマもあるか! このボケゴリが!!」
ゴリッポもまた本当に役立たないヤツだった。
このゴリッポは本当に単なる力馬鹿でしかなく、この本島にまでやってくる際にも、空を飛ぶのが怖いだのと駄々をこね、ただでさえ図体がデカくて運ぶのが大変なのに、勝手にパニックを起こして周囲を危険に晒しただけでなく、事実として何匹もの鳥類が海の藻屑となった。
猿三郎は何度、ゴリッポを海に突き落としたほうが早いんじゃないかと思ったことか。
「しかーし、ワシはキサンらに情けをかけたァァァ! なぜかァァァ!?」
「実はオラたちのことが好きだからだっ…ンべえェッ?!」
猿三郎のボディブローがベンザーに叩き込まれる!!
「犬次郎との決戦時のオトリとして使うためじゃぁ!! せいぜいその命の限りを使ってワシを守り、あのクソ犬をぶっ倒すんじゃー!!」
復讐の鬼と化した猿三郎は、すべての攻撃力がバーサーカーのように強化されているのであーった!!
「…で、なんで私までこんなところに」
子供らは無事に自宅に帰したというのに、サクラだけこの場に残されていた。
「知るか! なんとなくじゃーい!! お色気要員じゃ! せいぜい乳と尻を揺らしとらんかーい!」
時代錯誤な性差別を堂々と口にする主人公!
これはマズイ!
まさに炎上案件であーーる!!
「お色気要員ならアタシ…きゃああッ!!」
猿三郎は、雉四郎をロープごと振り回す!!
「うるさーい! オメェが余計なことしくさったせいで、もっと早く本島に戻れるところをこんな無駄に遠回りしたんじゃけえぇ!!」
「おい! 三郎! 来たぞ! あれじゃないか!?」
ゴリッポが指差す。
そう! ここはうんももす町お散歩ロード!
健康のためなら死んでもいいと思う細マッチョな老人たちがランニングシャツとハーパンで無軌道に縦横無尽に爆走しており、スマホを弄くり回しながら自転車を脇見運転でカッ飛ばす若者と、熾烈な争いを繰り広げるまさに戦場!!
巨大カラスはゴミステーションを我が物顔で荒らし、修羅と化した野良猫との血みどろの抗争が日々勃発している悪魔地帯!
都内でも最強最悪と呼ばれる暗黒界隈、まさに陸上のバミューダトライアングル!
こんな場所でお散歩するのは至難! まっこと至難!!
小型犬・中型犬はお断りの張り紙がされ、それを無視してお散歩したならば、間違いなく30秒以内にミンチと化すとまで地元ではまことしやかに囁かれている!
事実、警告を無視したアマチュア飼い主とチワワの白骨死体が芝生に転がっていた!
そう! ここは選ばれたエリートワンコしかお散歩を許されないのだ!
アメリケン大統領のボディガードを勤め、見事なまでに守り切った挙げ句に、与えられた安い餌に満足できず、飼い主と大統領一家を噛み殺したドーベルマンこと“ブルータス”!
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飼い主のプロテインを盗み飲みしまくり、中東付近にあった難攻不落の軍事基地を単騎壊滅させ、なお怒り狂い続けてシルクロードを踏破し、超日本海を泳ぎきった沈黙シリーズに出てきそうなピットブルこと“スティーブン”!
こういった歴戦の猛者しか、お散歩を許されない散歩道なのであーーった!!
飼い主に関してはワンコのインパクトが強すぎて紹介しそびれたが、やはりその最強ワンコに相応しい元殺戮軍人、脱獄死刑囚、最強格闘王などといった、パートナーとして相応しい人材であーーる!
そして、この3匹こそが、この散歩道を支配しているわけであり、いつものように肩で風を切ってお散歩していた!!
しかーし、懸命なる読者諸君ならお解りだろうが、当然ながらゴリッポが指差したのは彼らではない!!
超高熱のような気配に、文字通りに空間がグニャグニャと歪む!
巨大なプレッシャーに、最強犬3匹もその飼い主も、まるで借りてきた猫のようになった(犬なのに)!
そして、斜面から柴犬が下ってくる!!
それだけで最強犬たちがひれ伏し、飼い主たちはその場で昏倒し、爆走老人とスマホ若者、カラスや野良猫は慌ててその場から我先にと逃げ出す!!
「犬次郎!! …あれ? なんかムチャクチャ怒ってね? アイツ…」
そう!
それは犬次郎であった!
そして、その犬次郎は鼻の頭にシワを寄せ、歯を剥き出しにして怒り狂っていた!!
そんな柴犬に恐れをなして、最強犬3匹すらガクガクブルブルと震え縮こまり、お散歩ができずに道の端に頭を抱えてうずくまる!!
「あいつ、オラより強くねー?」
お決まりの台詞を吐くベンザーに、猿三郎のラリアットが決まる!
「元より強敵であることは解っていたわーい! しかし、今は鉄球(犬次郎のメインウェポン)も持っていない丸腰! ワシらの勝利は確定じゃ!」
そんなことを言う猿三郎の膝も笑っていた。
「行くぞ! 向こうが気づいていない今がチャンスじゃぁーいッ!!」
もはや最悪の未来しか見えないわけだが、やはり次回につづーーくぅ!!!