猿三郎たちは園内をダダダッと走り続ける!
なぜ走るのか?
理由なんて特にないが、とりあえず走らせていた方がカッコいいので走らせる!
「なんか警備がゆるくなっとる気がするけんなぁ!」
「そういやそうだな。いつもいるチンパンたちがおらん…てっきり戦闘になると思ってたが」
「ウヒヒ。きっと“PH”タイムだっぺ」
「なんじゃ? PHって言うんは?」
「カーッ! なんも知らんっぺな! PHちゅーうたら、“
「…知ってたけ? ゴリッポ?」
「…知らん。初めて聞いた」
「どうしようもねぇ! どうしようもねぇ! H.ロリゴスロリの“エイチ”も、“エッチなロリゴスロリ”だべさ! オラが考えたこの言葉を知らんとは情けねぇ!」
「「そんなもん知るか!」」
こんな価値のない、わけ解らんやり取りをしつつ、3匹はワクワク動物園の監視棟付近にまでやって来た!
もちろん手下チンパンは出てきた!
そりゃボスがやられようと、手下くらいは警備している!
しかーし、猿三郎の【疾風怒濤波】に蹴散らされ、ゴリッポの白濁汁の沼に沈み、ベンザーの“乳首自動引っ張り機(左右交互式)”によって落とされる!
協力し合う、この3匹に、もはや敵などなかったのであーーる!
「ここが監視棟だっぺ! きっと島と外界を行き来する方法が隠されてるはずだべよ!」
やり慣れた風に、ベンザーは小枝を取り出してピッキングを試みる。
「ベンザーさんよ。そんな技術をどこで身につけたんだ?」
「決まってるべ。深夜の真っ暗な中、娘っ子の股ん中さぁ、オラは手探りで…」
「いや、もういい。…聞くんじゃなかった」
ゴリッポは、ベンザーがニヤニヤ笑いながら鍵穴をほじくってるのを見て吐き気を覚える。
カチン!
「お! イッた! …間違えたっぺ! 開いたべさ。御開帳だべ! 油断さするな! ここには敵がわんさか…」
「解っとるわい! ワシが蹴散らすけん! さっさと開けたれ!」
ベンザーがコクリと頷き、猿三郎とゴリッポが構え、勢い良く扉を開く!
「ッ! …なに?」
猿三郎の両肩が脱力し、ゴリッポのイキり勃っていたリーゼントがへニャンと垂れ下がる。
「これは…ワシを見物に来ていたガキ共じゃないけ?」
そう。扉を開けた先には、子供たちが集まって泣いていたのだ。
猿三郎をからかっていた時の生意気な態度は嘘のように消え、今では小さな肩を震わせて泣いている。
「あ、あなたがたは…」
憔悴しきった青白い顔で、鼻眼鏡のゆるふわ系巨乳美女が顔を上げた。
3匹の“オス”がムクムクと何か盛り上がる気配があったが、まあ、本当に男ってヤツはどうしようもないものである。
普通の作者ならこんなこと書いても致し方ないので飛ばすことだろう。
しかし、この作品は正直な作風をウリにしているので飛ばさない!
敢えて言おう! ムクムクとしているのだ!
「オメェ、確か先生じゃったけんな」
「ええ。
「サクラ先生ー」
「大丈夫よ。大丈夫」
サクラは、さめざめと泣く子供たちの頭を撫でる。
「観光客だべか。しかし、こげなところで何を…」
ベンザーは周囲を見回す。彼も初めて入ったわけであるが、どうやらそれはロビーの様だった。
ここは監視塔の1階に当たる部分であるが、外界からやって来た者が一時的に待機できる様になっているらしい。
食いカスや糞便、死体だらけの小汚い園内とは違い、清掃が行き届いており、ロングベンチや自販機、接客カウンターなどもあり、明らかに来客向けに造られていた。
「ここで帰りの船を待っていたのです。ですが、受付にも誰もいなく…それに…」
サクラの言う通り、接客カウンターには誰もいない。
その奥側の休憩室も覗き見るが、そこで従業員がちちくりあっている様な気配もなかった。
「それに?」
「その椅子の奥を見て下さい…」
サクラは目を伏せて、苦し気な顔をした。
猿三郎は言われた通り、ヒョイと顔を出して椅子の奥を見やる。
「こ、これは!」
そこには死体が転がっていた!
やっぱりここにも死体はあったのだ!
眼の左眼内眼角から出血し、脳髄をぶちまけている死体だ!
それは髭の生えた人間の中年男性の死体であった!
「まさかオメェが殺したんけ!?」
「まさかです! そんなことしません! 恐ろしいこと言わないで下さい! 私たちが来た時にはもう…」
「こ、これは一体、誰なんじゃ?」
「……私たちを乗せて来てくれた船長さんです」
「エッ!?」
そういえば、なんだか海賊みたいな格好をしている。
猿三郎はてっきり宇宙海賊か何かのコスプレだとばかり思っていた。
「…しかし、この傷。まるで鳥のクチバシにでも突かれたような痕だぜ」
ゴリッポの何気ない一言は、まさに正鵠を射ていた!
これが探偵物作品だったらおまんまの食い上げである!
そう! 賢明なる読者諸君はもうお気づきであろう!
何を隠そう、このコスプレ船長も、雉四郎の愛人のひとりだったのであーる!
そして、前話の如く、ロリゴスロリと同じような末路を遂げたのであーーった!!
「そんなわけあってたまるかい! ゴリッポ! オマエは頭が悪いけん! ここは黙っとくんじゃい!」
「お、おう。確かに…そうだぜ」
悲劇! まさに悲劇!! まさしく悲劇!!!
こうやって小さな声の正しい意見というものは、往々にして潰されてしまうのが世の常であーーる!
「こういう時は、ドクター・ベンザー! 知恵者の出番じゃ! 頭がイイ奴の話を聞くべきじゃい!」
猿三郎が振り返ると、ベンザーはまるでムンクの叫びのような顔をしていた。
「ど、どうしたんじゃ?!」
「こ、これは…見たことがあるだ!」
ベンザーは牛乳瓶の底をガチャリと上げ、遺体をクンカクンカし始める。
「そうじゃ! “ゾンビビスウイルス”だっぺ!」
「「ゾンビビスウイルス!?」」
猿三郎とゴリッポが驚いた顔をする。
そして、なぜかしばらく沈黙の時が流れた。
「…………?」「…………?」
彫像のように固まってしまったベンザーを前にし、猿三郎とゴリッポは首を傾げる。
「……おい。はよ、ゾンビビスとやらの話をせんかい」
「ん〜〜」
「なんだってんだ? ベンザーさんよ」
ベンザーは頬をポリポリしつつサクラを見やる。
「話したいつーぅ気持ちもあるんだべが、どうにもこうにも気になっちまうださぁ」
「気になる?」
サクラが小首を傾げるのに、ベンザーは頷く。
「オメェさの…」
「私の…?」
「乳のサイズはいくつだっぺ?」
「!」
サクラは真っ赤になって胸元を隠す。
「あの、今の話と関係ない…ですよねッ」
少し怒り気味にサクラは言う。
「いや、ワシも気になる」「俺もだ」
猿三郎、ゴリッポ……畜生2匹も真面目な顔をして言った。
「こ、ここでそれを教える意味が……」
「……なら、オラもゾンビビスの話したくなかっぺよ」
ベンザーは小指で耳の中をほじりはじめ、それに合わせたかのように猿三郎とゴリッポが「あーあ」などとムカつく呆れ顔で言う。
「…………Eです」
サクラは真っ赤な顔を俯かせた。
「んん〜? 小さな声すぎて聞こえんぺぇよぉ!」
「ですから、Eカップ…です!」
3匹がまたムクムクとした。
「……本当は?」
「え?」
「オラさぁの目はごまかせねぇださ! 本当のサイズは違うっぺよ! Eカップのブラじゃ小さ過ぎんじゃねぇだべか!?」
牛乳瓶の底をカチャカチャ上げて、ベンザーは畜生らしく歯を剥き出しにして威嚇する!
「…………か、限りなく…」
ベンザーは怖い顔をしたまま頷く。
「“Fに近いE”ですッ」
頬を染めて、羞恥に堪えつつ、そう叫ぶサクラは激萌えであった!
畜生3匹と、ついで園児1人の鼻から、ロケット噴射のごとく鼻血が飛び散る!!
「うっし! オラの疑問は解消したっぺ!」
「おう!」「よし!」
サクラのジト目をよそに、畜生3匹はやり遂げたいい笑顔で互いに拳を突き合わせたり、なんならハイタッチまでして団結力を高めた!
「さーて! んだば、本題に戻るとするっぺよ!」
ベンザーは牛乳瓶の底をガチャリと上げたかと思うと、再び遺体をクンカクンカし始める。
「そうじゃ! “ゾンビビスウイルス”だっぺ!」
「「ゾンビビスウイルス!?」」
白々しくも、猿三郎とゴリッポは再び驚いた顔をしたのであーーった!!