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猿三郎編05 「オッス、オラ、ウータン!」

 施設内『密林エリア』。


 その名の通り、密林が鬱蒼と繁っており、エロっぽさがあるようなミッチミチのゾーンから、湿気がムアッというかモアッというか南国風のスケベっぽいムラムラでムラッている。


「そうだぁ! そこでいい! そこに固定だぁっぺよ!」


 樹上から、1匹のオランウータンがダミ声で指示を出す。


 フランジと呼ばれる顔の周りにある出っ張りは強い雄の象徴であり、まあそれはともかくとして、なぜか牛乳瓶の底のような眼鏡をかけている……というより、牛乳瓶の底そのものを付けており、上に白衣だけをまとっている。


「ピキュイキュイ?(ほ、本当に大丈夫ですかー?)」


 側のいかにも助手っぽいオランウータンが不安を顔に浮かべる。


「あったりめぇだの栗キントンだべさ! オラさぁの計算によりゃ完璧だぁー!!」


 雄と雌のオランウータンが、ほぼ平行に生えている2本の木の上で向かい合わせに立つ。

 この2匹は互いに太いツタで胴を結ばれており、それとは別のツタが自身の立っている木と結び繋がれていた。


「さあ! 行け! やれ! 新たな世界の“性”の始まりを見せとくれぇー!!」


 雄と雌が、勢いよく木から、ほぼ同時に後方へとジャンプする!


 落下でツタが伸び、地面すれすれまで落ち込み、そして両者が跳ね上がった!!


「ゴムの木から採取したラテックスで伸縮性を持たせたバンジーだぎゃー! いっけー!」


 跳ね上がった2匹は最頂点へと達し、今度は2匹を繋ぐツタが縮むことで、互いが木と木のちょうど真ん中あたりで“結合”する!!


「ウホピャー!(あッー!)」「キューイ♡(あーん♡)」


 かつてない経験したことがないほどの快感に、2匹は嬌声を漏らした!


「やったー! 成功だぎゃーー!!」


 牛乳瓶のオランウータンは感涙し、周囲のオランウータンは手を叩いて喜び合う。


「しかーし、まだ早い! これからが本場なんだぁー!!」


 牛乳瓶がニヤリと笑う。


 結合した雄と雌だが、木に結びつけられていたツルが限界まで引っぱられたことで収縮し、勢いよく離れる!! 


 そう! これはゴムの伸縮反動を利用した装置であったのだ! 


 そして、雄と雌は再び結合する!!


「ウホピャー!(あッー!)」「キューイ♡(あーん♡)」


 両者はゴム毬の如く、超高速で結合と分離を繰り返す!


 ビョ〜イン! バチン! 


「ウホピャー!(あッー!)」「キューイ♡(あーん♡)」


 ビョ〜イン! バチン!


「ウホピャー!(あッー!)」「キューイ♡(あーん♡)」


 牛乳瓶は唇を震わせて、しどとに涙を流してガッツポーズをした!


「すんばらしい! さすがはオラだ! これで原始的なセクロスをする必要はもうねぇだや! 我々、オランウータンの進化の夜明けだべ! オラたつぁ、科学的なセクロスを手にしただ!

 この“自動ピストン機”がありゃ、足腰が弱った、体力に自信のねぇジイサマでもセクロスできる! 気持ちよくエッチして、チルドレンも増える! 一石二鳥だべさぁ!」


「キュキュィ!(は、博士!)」


「ん?」


 助手であるオランウータンの1匹が、牛乳瓶の白衣の裾を掴み引っ張る。


「キ、キュイキュイ?(こ、これどう止めるんで?)」


「止める? …ハッ!」


 牛乳瓶は驚愕した顔をする! 


 自動ピストン機はさらに勢いを増していたのだが、当の2匹はすでに果ててグッタリしていのであーった!


 しかーし! 当人たちの意識を無視して、強制ピストンは止まらない! 止められない!


「しもうた! 動かすことばかり考えとって、止めることを考えておらなんだべ! まさに弘法も筆の誤り! まさに猿も木から落ちるだっぺ!」


 落ちるどころか、落ちることすら許されぬ2匹を前に、何をトチ狂ったことを言っているのかと周囲のオランウータンたちは思った。


「あいや! 致し方ねぇ! このまま無理やりやっていては“中折れ”しちまぅ! 2匹を繋ぐツタを断ち切るだぁ!!」


 牛乳瓶の指示で、オランウータンたちがツタを断ち切る! 


 激しく動いている最中、そんなことをしたらどーなるのか!?


 賢明なる読者諸君はすでにお気づきだろう! めーいっぱい木の側の引き寄せられていた2匹は、紐を断ち切られたことで、密林の彼方へと吹っ飛んで行ったのであーーった!!


「……あーあ」


 牛乳瓶は他人事のようにため息をつき、鼻ホジーする。


「ま、偉大なる研究には犠牲はつきもんだべ。次行ってみよ〜」


 牛乳瓶が明るくニカッと笑って言うが、仲間を実験材料にされたオランウータンたちは仄暗い憎悪に満ちていた。


 実は、この牛乳瓶はボルネオ・オランウータンなんかではない。

 20年前、突如としてオランウータンたちの森の前に、謎の国家的研究機関からやってきた、謎の科学者が、謎の研究を使って、オランウータンを模した謎のホムンクルス生物を造り上げて置いていった…なんで置いていったのかも謎な、そんな謎な牛乳瓶だったのだ。

 つまり、バイオ・ホムンクルス・オランウータン…それが牛乳瓶の正体であり、オランウータンの名誉のために言わせてもらえれば、こんなアホなことを思いついて危険な行為を実行するわけがないのだが、今回の本編とは全く関係がないので割愛させて頂く!


「おーい!」


「ん?」


 背中に声をかけられ、牛乳瓶が振り返るとそこには超日本猿とリーゼント・ゴリラが居た。


「おお! オッス、オラ、ウータン!」


「いや、そのギャグおもしろくねぇから。ベンザーさんよ」


「ベンザーさん!? なんだかどこぞの大百科に出てきそうな浪人生っぽい名前じゃ!」


「失礼な! ベンザーは“便座”からとられたんだっぺ! 生まれた時は便座のように真っ白で珠のようなベイビー[※]だったんだわ!」


[※…ホムンクルスの生成過程で、試験管の中にいた時の話である]


「いや、便座から名前とられた時点で失礼な気もせんでもないが…えーっと、コレが…」


「ああ。この園ナンバーワンの知恵を持つ、ドクター・ベンザーだ」


 猿三郎は胡散臭そうに、牛乳瓶ことベンザーを見やる。


「フフ。いっちょめぇに疑っておるだっぺ。オラが天才ちゅうんを…えーっと」


 ベンザーは変顔しつつ、2匹を見比べる。


「…“浜本”」


 ベンザーが超日本猿を指差して言う。


「…“松田”」


 次にリーゼント・ゴリラを指して言う。


「……“ハマちゃん”と“マッちゃん”でええか?」


「いいわけあるかーい! それヤバいじゃろが! ワシは猿三郎じゃけん!」


「…相変わらず名前覚えるの苦手な野郎だな。俺はゴリッポだろうが」


「そうかそうか! そうだったっぺ! なら“サブ”と“ゴッさん”な! ワシは“ベンさん”でええっぺよ!」


「…な、なんなんじゃ。このジジイは…」


「まあまあ」


 呆れる猿三郎を、ゴリッポが宥める。


「そんな話より、オラの天才的な発明が見たいっぺ!? なら、これ見とくれや!」


 ベンザーは木の根の間から何かを引きずってくる。

 それは椅子だった。しかし普通の椅子ではない。素材は合成樹脂、膝下ちょうどの高さで、半楕円形をしていて中は空洞だ。しかしちょうど座る上部には前後の切れ込みがあって、平たく言えば凹のような形をしている。


「見てみろ! この大発明を! 風呂場で座りながらエロッティなスケベッティができる椅子じゃ!!」


「単なるスケベ椅子じゃろがぁ!」


「“左部之信”よ! これを知っとるちゃか!?」


「誰やねん! “サブノシン”って! サブと呼ぶって言ったの自分じゃろがーい! 

 それはそうと何が大発明じゃ! こんなんどこのソープランドにも出てくるマイナーアイテムじゃ!」


「ソープランドとな!?」「ま、まさか三郎!? 行ったことが…」


 驚愕するベンザーとゴリッポ。この園で育った2匹にとって、ソープランドはまさに神話な世界の聖域なのであーーった!!


「あ、あたりまえじゃろがい!」


 ここで猿三郎が見栄を張って嘘をついたとは、賢明なる読者諸君ならばすでにお気づきだろう!


 猿三郎は確かに行った! ソープランドに!


 しかーし、それは飼い主こと、猿三郎を飼っていたキビダンゴをやった塵太郎(故人)のお供であり、ただ単に駐輪場のポールに括り付けられていただけなのであーーった!!


「そんなことより、脱園の話じゃ!」


「脱園とな? ほう、それでチンパンジー看守のロリゴスロリをなんとかし、海を渡って本島に戻り、オメェさんをこんなクソ園に閉じ込めた元凶に復讐したいと…そういうわけだっぺな?」


「な、なぜにそれを知っとるんじゃ!?」


「ドクター・ベンザーの名は伊達じゃなっぺよ! “かくかくしかじか”なんてやらんでも、この類人猿最強の脳味噌は、じい様の名にかけてズバッとお見通しの真実はいつもひとつなんだっぺ!」


 ベンザーはカチャリと牛乳瓶の底を上げて笑う。


「マジか! よく解らんが、よく解ったわい! それなら話が早いんじゃー!」


「話が早い? 確かに早いっぺ! もう3,000字をとうに過ぎておる! ここ一気に進めるべきだとオラの天才的な脳味噌は言っとるべ!」


「む? そうじゃのぅ。ネオペ読者は5,000文字以上を長いと思う傾向にある! ならば次回にする!」


「解ったッペ! では尺を巻くとする!」


 そんなわけで、また雑に次回につづーくぅ!!

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