目次
ブックマーク
応援する
4
コメント
シェア
通報

猿三郎編03 ゴリッポだけよ

 猿三郎は今度はちゃんと自室で目覚める。


 メンタル面は、腐った牛乳をクサヤの漬け汁と合わせ、オッサンの靴下と一緒に数ヶ月漬け込んだ、クソボロ雑巾のようなそんな感じであった。


「あんクソがァッ! あのチンパンめがァァッ! 絶対に許さんけーん!!」


 烈火の如く怒り狂う、エテ公こと猿三郎!


「復讐じゃ! 復讐してやるけーんッ!!」


 とても絵にできない、小説で良かったと思う程の怒りの形相で猿三郎は怒り狂う!


 それはそうだ! 黒歴史を白日の下に暴露され、出逢い系のみならずSNSから垢banされ、あまつさえ、『変態ザル』や『痴態公』、『尻穴解放戦線』などと揶揄され、変態から世界を守る正義ハッカー集団からダイレクトウイルスを送りつけられて、猿三郎のスマホは大破したのであーーった!


「そうじゃ! そもそもワシがこんなところに閉じ込められとる必要などなーい! ロリゴスロリを倒し、ワシはこのクソ園から脱出するんじゃーい!!」


 猿三郎は思い起こす!


 そもそもここに閉じ込められる原因となったあの柴犬を!!


 暴力で支配され、奴隷のようにこき使われたあの異世界での出来事を!


 そして、よく解らない自分勝手な理由で元の世界に戻ってきたはいいが、保健所によって取っ捕まってここに放り込まれたのだ!!


 そうだ! すべて元はと言えばあの柴犬が悪いのだ!


 猿三郎の抱く、すべての怨み怒り嫉み妬みなどの負の感情が凝縮されるッ!!


 と、爆発する寸前に、小指の爪のカスほどの理性がなんとか機能し、超日本猿は我に返る。


「……そうじゃ。しかしながら、ワシの力だけでは足りぬのも事実! 仲間じゃ! 強力な仲間が必要じゃーい! 犬次郎(+ロリゴスロリ)を抹殺する為のなぁ!!」


 猿三郎は起き上がると、部屋の隅にある便所の脇のタイルパネルをズラす!


 そこには何と隠し通路があった!!


 なんでこんなところに隠し通路があるのか!?


 賢明なる読者諸君はもうお気づきだろうが、以前ここに宝があると狙いをつけ、侵入しようとしたトレジャーハンターが、間違えて貫通させてしまった通路だったのであーーる!


 その証拠に、通路脇に冒険者風の白骨死体が転がっており、その手には愛する娘に向けた手紙が握られていて、『愛する娘サクラへ…』などと綴られていたのであるが、そもそも超日本猿である猿三郎に読めるわけもなかったのであーーった!


 遺体に敬意など持ち合わせていない畜生こと猿三郎は、白骨を足蹴にして、スットコトコトコと通路を駆けていったのであーーる!!




★★★




 施設内『ゴリッポエリア』。


 動物園にはいつもアイドルがいる。それは見目麗しいホワイトタイガーや、2本立ちするレッサーパンダであったり、極寒の北海より流れ着いたアザラシだったりする!


 そして、この隔離島ワクワク動物園ではゴリラだ!!


 ニシローランドゴリラ!


 学名ゴリラ・ゴリラ・ゴリラは、アイドルであーーった!


 つまりアイドルはゴリラ・ゴリラ・ゴリラなのであーーる!!


 猿山とは違う形をした人工岩場。まるでお立ち台のような円形の丸石に、スポットライトが当たる!


 その中央にゴリラがいた!


 テカテカのリーゼントのカツラを被り、内八の字の眉を寄せ、演歌歌手が小節を利かせるように頭を左右に振る!


 そしてタンピングランマーでも使っているかのように激しく前後に揺れる下半身!


 前傾姿勢で「アッアッアッアッ♡」と揺さぶられるメスゴリ!


 このゴリラは何をしてるのか!? 説明するまでもない交尾だッッッ!!!


 観客席からは好機の視線とクスクスという笑い声が響く。そこには嘲弄侮蔑侮りなどが浮かんでいた!


 笑っている大人たちよ。お前たちも家に帰ったら同じことをしているじゃないか!


 笑っている子供たちよ。お前たちはこれがなきゃ生まれてこなかったのだぞ!


 そんな自分の愚かさを棚に上げ、観客たちは動物たちの本能の営みを見下しているのだ!


 しかし、ゴリラたちはまるで気にしない。何を恥じることがあるというのか!!


 “性”という字を分解すれば、“心”が“生”…つまり“心が生きている”ということなのだ! 別に特に意味はないが、意味がありそうなんで言っておく!!


 そして、リーゼントのオスゴリは両手を開く! “まるで俺を見ろ”とばかりに(下半身の動きもスピードアップ)!!


 その堂々たる振る舞いに、神秘的とも思える光景に、子供たちは目を丸くし、老人は入れ歯を落とし、若い男は嫉妬心を表し、若い女はポッと頬を赤らめる!


「ウホオッ(もうらめぇ!)! ウホウホイ〜(もっとちゃんと奥まで〜)!」


 メスゴリが哀願するように叫ぶ!


 言葉は解らない。


 しかし、非童貞の観客は驚愕する!


 賢明なる非童貞の読者諸君はもうお気づきだろう!


 このオスゴリは決して本能的なエロッティに突き動かされてスケベッティをしているのではない!!


「イッツァ! ショータイムッ!」


 オスゴリが叫ぶ!!


 そう! つまり、これは“エッチ”ではない!


 “パフォーマンス”をしているのだ! つまり“奥まで突いてなどいない”のだッッッ!!!



「“ゴリッポ”が…!」


「まさに“ゴリッポだけよ”ってことか!」



 そう! 彼こそがこの園のアイドルことゴリッポなのであーーった!!


「人間どもめ、観たければ観るがいい! 白き雨が貴様の穢れ歪んだ心を浄化することだろう!」


 まるで予言めいたことを呟き、ゴリッポはニヤリと口の端を吊り上げる。


 そして、その時は来た!!


「…ムッ! キタ! キタゾー!!」


 ゴリッポは慌ててメスゴリラを突き飛ばし、下半身を抑えて走り出す!!


 神秘的な光景に目を奪われていた観客たちは咄嗟なことにまるで身動きがとれなかった!


 そしてゴリッポの“ゴリッポ”から、狙いを定めた放水車の如くすべてが解き放たれる!!


 まさに阿鼻叫喚!! 幸いにして強化アクリル板によって直撃こそは避けられたものの、粘液質な大量の粘液によって穢され、隙間から容赦なく漂う激臭(イカ風味)によって、鼻粘膜がやられ、中枢神経系が狂い、観客たちはその場で激しく嘔吐した!


「ざまぁみさらせ! 人間どもめ!!」


 得意げな顔をするゴリッポ!


「ウホホー、ゴリッポ!(さすが、ゴリッポだぜ!)」


「ウホウホホイ!(普通のゴリラにできないことを平然とやってのける!)」


「ウホホンウホイホイ!(まさにゴリラ界きっての恥晒しだぜ!)」


 周囲のオスゴリラが歓声を上げる中、一番奥に鎮座していた長老ゴリラはある事を思っていた。


 実はゴリッポはニシローランドゴリラなんかではない。


 20年前、突如としてゴリラたちの里の前に、よく解らん星からやってきた、よく解らん異星人が、よく解らん技術を使って、ゴリラを模したよく解らん生物を造り上げて置いていった…なんで置いていったのかもよく解らない、そんなよく解らないそれがゴリッポだったのだ。


 つまり、エイリアン・ハイブリット・ミュータント・ゴリラ…それがゴリッポの正体である!


 そしてゴリラの名誉のために言わせてもらえれば、こんなAV物企画にありそうな大量の白濁(だいたいが小麦粉を溶かしたもので代用する)が噴水のように出るわけがなく、むしろゴリラじゃなくても、生物学的にあり得ない現象なのだと……そう長老は思ったのだが、今回の本編とはまったく関係がないので割愛させて頂く!


「ウ、ウホ…ウ、ウホホ(ま、まだ満足してないわよ、あ、アタシは)」


 ゴリッポによって突き飛ばされ、岩山に頭をぶつけたメスゴリがヨロヨロとやって来る。


「…ねンだわ」


「え?」


「今月、“バナナ券”もうねンだわ…」


 ゴリッポにそう言われ、メスゴリは目を伏せる。


 バナナ券とは何か!? たぶん、バナナと交換できる紙幣みたいなものだと思う!! 


「ウホイ…ウホ(わ、解ったわ…はい)」


 メスゴリは胸元にぶら下げていたガマ口のサイフから、バナナのイラストが描かれたバナナ券を全部取り出してみせると、ゴリッポは無造作にグワシャと掴み取る。


「っしゃ! スパート掛けるぞ! オラ!」


「ウホャ!(キャァ!)」


 ゴリッポはそのままメスゴリにラリアットをかます! 


 憐れ、メスゴリはゴロゴロと坂道を下り、ゴリッポが放って作り出した白濁の沼にヌポポと沈んでいったのであーった!!


「ひい、ふう、みい、よお……あのメスゴリラめ。こんなにまだ隠し持っていやがったか!」


 ゴリッポはバナナ券を数えると胸元へしまった。素っ裸なのにどうやってしまうのか?


 簡単な話だ! 垂れ下がった下乳に挟むのだ!! 哺乳類なら誰しも知っていることであーーる!!


「おーい。ゴリッポ!」


「ん? お。三郎やんか。久しぶりだな」


 リーゼントを整え(といってもカツラなので位置を戻して)、やって来た猿三郎に手を上げて挨拶する。


「またこげんな事しとるんけ」


「暇すぎて交尾しかやることないからな」


「相変わらず、えげつないのぉ〜。こんだけ好き勝手やってよくセキュリティが来ないもんじゃい」


 白濁の沼を見やり、猿三郎は鼻を摘んでしかめっ面になる。


「“攻撃”と見なされなければ平気よ。三郎、オマエはちとやりすぎなんだぜ」


「そんな話はいいけん! 話があるんじゃ!」


「ほう。話だと? …しかし、尺的にはもうとうに3,000文字超だぞ。ここでこのまま続けるのか?」


「む? そうじゃのぅ。ネオペ読者は1話5,000文字以上を少々長いと思う傾向にある! ならば次回にする!」


「なるほど! では尺を巻くとしよう! 次は俺の部屋から始まるぞ!」


 そんなわけで、雑に次回につづーくぅ!!

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?