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猿三郎編01 隔離島ワクワク動物園

◇前作を読まなくても解るあらすじ(読み飛ばしてきてる方、および最新話しか読まない方のため)◇


犬次郎、猿三郎、雉四郎の3匹は異世界へ!


キビダンゴ・ザ・ババアを倒して現代に戻ってきたのであーる!


しかーし、飼い犬となった犬次郎丸以外、猿三郎と雉四郎は保健所よって捕獲されてしまったのであっーた!




★★★




 そこは超沖縄より、遥か南東に位置する地図にも記されていない島!


 通称、超日本のアルカトラズ島!


 荒れ果てた岩地ばかりで平地がないせいと、嫁姑の口論が如く荒れ狂う海に阻まれ、入る事も出る事も難しい絶海の孤島!


 口さがない者たちは、ここを“隔離島”とも呼ぶ!


 その島にポツンとある施設!


 岩肌を抉り天然の要塞と化した無骨でおどろおどろしい建物群! 


 堅牢な格子窓から、眼のイッてしまわれた軍人が「キルユー!」と叫びながらM16をぶっ放してもまるで違和感がないほど物々しい!


 この建物は一体なんなのか!?


 賢明なる読者諸君はもう気づいておられることだろう!!



 ──隔離島ワクワク動物園──



 そう! お察しの通り! そこは人間が管理しきれない、最悪凶暴な極悪非道の動物を閉じ込める監獄…もとい、とっても“楽しい楽しい動物園”なのであーーった!!




★★★




 施設内『超日本猿山エリア』。


 管理用の出入口で、頭から血を流した飼育員が手足をピクつかせていた。その周囲では白骨化した遺体が散らばっている。 

 こんなのは別にどこの動物園でも珍しくない。餌やりに失敗したら自分が餌になることは日常茶飯事である。


 そして出入口の側、螺旋状に延びるコンクリート製スロープは中心に向かって行くに高くなっており、それは灰色の“巻きグ◯”の様相を呈した、とどのつまり人工物の富士山マウンテンである。


 その猿山の頂上で、ボスのオスは本能に根ざした行動を行っていた!!


「あーーッ!!」


「ウッキーィ…」


 オスは半分白眼を剝いて、痙攣しつつ下半身を前後させ、前傾姿勢のメスは羞恥からか屈辱からか涙を流して顔を真っ赤(超日本猿の顔は元々真っ赤だけどね!)にさせ、その越権行為が終わるのをひたすら堪え忍んでいた。


「あーッ! ええぞぉ! ええぞぉ! もう少しじゃあッ! スパートかけるぞぉ!! …ん?」


 一心不乱に快楽を追っていたオス猿が、何かに気づいて顔を上げる。



「あー、あそこのお猿さん! なんかヘンなことしてる!」


「アハハ! おもしろーい!」


「こら、マーくん! 見ちゃいけません!」


 エリアは擂鉢になっており、その上の端は強化アクリル板で360度グルリと覆われていた。


 その板の先に居た、黄色い帽子、青い割烹着のような服を着た、園児と思わしき人間の子供のたちが、オスザルをケラケラと笑いながら指差していたのである。


 側にいるおっとりとした鼻眼鏡の巨乳美女がアワアワとしている。

 背格好からしても先生なのだろうが、園児に好き勝手に振り回されているといった感じだ。巨乳なのに(大事なことなので2回言っておく!)!



「クソガキ共が! なーに見とんのじゃ!! 見せもんちゃうぞ!! 見るなら、拝観料払わんかーい!!」


 オスザルは怒り狂い、萎えたブツの代わりに中指をおっ立てる!!


「キッキーキッ!(あーん! もっと! もっと! もう少しよ、早く動いて、猿三郎♡)」


 メスザルは片手で顔を覆い隠しながら言う。


 そう! 賢明なる読者諸君は気づいているであろうが、さっきまで恥ずかしい雰囲気を醸し出していたのは、とどのつまり雰囲気づくり…つまりシチュエーションだったのだ! 本人はノリノリだったのであーーる!


 つまりこのメスザルは演技派淫乱であり、この猿山の中でナンバー1のメス! 人間界で言うところの花魁だったのだ!


 嫌がる素振りを見せ、オスの嗜虐心を煽り興奮させるという高等テクニックを持ったサルビッチだったのであーーった!


「じゃあかしゃぁッ! この状況でイケるかぁ!」


「キキキッ!(なによ! 他のサルたちは気にしないでやってるじゃないの!)」


 猿三郎はチラリと猿山の下を見やる。確かに見物人がいるというのに、関係なしにそこらかしこで本能的な行為に耽っている。


「オマエら節操なしと一緒くたにするな! ワシは普通の超日本猿じゃないけん!!」


「キキキィーィ!(なによ! 人間の言葉が喋れるぐらいで偉そうにしないで!)」


「黙らんかーい! 猿語しか喋れんメスザルのくせに、いっちょ前にワシに意見などするなぁ!!」


 猿三郎と呼ばれたオスザルは真っ赤になって怒る(繰り返すが、もともと赤い顔だけどね!)。


「ここには猿しかおらんけん! 暇つぶしに相手しただけじゃぁ! そうじゃなきゃ、オメェとなんて誰が交尾するかッ!!」


「キィッ!(キャアッ!)」


 猿三郎に突き飛ばされた憐れなメスザルは、スロープをでんぐり返しするかのようにして転げ落ちて行く!


「クソがぁ! この何もすることのない暇で退屈なエリアじゃ、交尾ぐらいしかやることがないんじゃあーッ!!」


 猿三郎は血走った目をして頭を掻きむしる。


 異世界で格闘スキル最強…モンクマスターとなった猿三郎にとって、この猿山のボスになることは、耳糞を鼻糞の代わりに詰めるより簡単なことであった。


 しかし、ボスになってからが問題だった。ボスになったところで別に待遇が変わるわけでもなし、時たまやってくる飼育員をボコボコにして餌を奪い取る以外は、こうやって下半身を振って自分を慰める他なかったのであーーる! 


「交尾はキライじゃないが、もう猿は飽きたんじゃー!」


 さっきの花魁は最下層でピクピクと痙攣しており(奇しくも倒れている飼育員と向かい合わせで)、心配した他のメスたちが集まっていた。


 猿三郎は血の涙を流し、メスザルたちに向かって両手の中指をおっ立てる!!


「オマエも! オマエも!! オマエも!! みーんな同じ顔! 同じく毛深い! 同じく真っ赤なケツをしとる!!」


 悲劇! まさに悲劇!! まさしく悲劇!!!


 人間世界に慣れ親しんでしまった猿三郎の性的嗜好は歪みに歪み、超日本猿であるのに、超日本猿を愛せなくなってしまっていたのであーーる!!


「せめてボディに凹凸くらいあってもええじゃろがい!! 見てみろ!! あそこのスケを!!」


 猿三郎は観客席をビシッと指差す!


 巨乳美女先生が、たわわな巨乳を揺らして、「え? わ、私?」と、巨乳をプルルーン揺らして戸惑う(大事なところなんで巨乳を3回言った)。


「交尾するなら、あの女じゃあー!! もう辛抱たまらーーん!!」



「あのおサルがヘンなこと言っている!」


「サクラせんせーを守れ! あんなおサルなんかにせんせーをわたさないぞ!」


 子供たちが先生を取り囲み、猿三郎に向けて中指をおっ立てた! そしてそのまま親指で首をカッ切る真似をして、逆さまに落とす!


「み、みんな! そんな事どこで覚えたの!?」



「いい度胸じゃけんのッ! こんの糞餓鬼どもォ!

 そもそも冒頭の説明からしておかしいんじゃー! 通行手段が殆ど無いに等しいこの島に、なぜに客がフツーに来とるんじゃい!!」


 猿三郎はメタ発言をしつつ、右拳を腰だめに構える。


 そして、「コーッ」というニワトリ人形の如き呼吸音で意識を拳に集中させる!


 その時の猿三郎の顔は、いにしえのエアダッチ式ラブドールの如き様相であーーる!!


 そして拳にポテンシャルが溜まる!


 思春期の睾丸に集まる溢れんばかりの白きオタマジャクシの如く、異世界のエナズィーだか魔法だかよく解らん、「とりあえず光らせとけばいいんじゃね?」のような、そんな感じの程で浅はかなクリスマスのイルミネーションの如く光る!


「必殺【疾風怒濤波しっぷうどとうは】!」


 回転を利かせ、超瀬戸内海の渦潮のような光る波動が勢い良く飛び出す!!


 生意気盛りの園児たちも流石にびっくらこいて腰を抜かしたが──



 カッキーン!



 なんと! 人類の叡智を結集して作られた超強硬なアクリル板を前に、軽く跳ね返されてしまった!


「なぁにい!? ワシの全力で放った技が効かんじゃとぉ!?」


 猿三郎はやはり所詮サルだった。以前に同じ事とをして駄目だったんだから、無駄に決まっている。こんなんで割れるんだったらとうの昔に脱出して然るべきである。


 園児たちは嘲笑い、尻を叩いて猿三郎を小馬鹿にする。


「おのれいッ! こんのクソガキャー!」



 ビーッ! ビーッ! ビーッ!



 けたたましく警報が鳴り響き、回転灯が赤く光り、観客席のすべての窓にシャッターが降りる!


「……こ、これは! しもうたー! やっちまったけーん!」


 やはり猿三郎の知恵はサル並みであった。暴れたら“最凶最悪”のセキリュティがやって来るのは至極当然だったのであーーる!


 そして、通用口からガッガッガという複数のブーツの鳴り響く音が響き、倒れている飼育員とメスザルは憐れにも蹴り飛ばされる。2体はザーッと滑って隔壁にと激突した。


 そして現れたのは、モスグリーンの軍服に身を包んだチンパンジーたち!


 そう! 人類に最も近い類人猿チンパンジーだった!!


 チンパンたちは整然と2列横列を作ると、踵を打ち鳴らせてピタリと止まる!


「…オイオイ。また猿三郎の野郎か。懲りねぇ奴だネェ」


 そして一番最後に現れた一際大きなチンパンが悠然とやって来ると、真ん中が動いて道を作る!

 賢明なる読者諸君からすれば最初から開けとけと思わないでもないだろうが、チンパンにそんなことを期待しても仕方あるまい!


 ベレー帽、コーンパイプ、アビエイター風サングラス……それはどこぞの連合軍司令官を思わせる服装をしたチンパンだった!


「H.ロリゴスロリ!」


 猿三郎に名を呼ばれ、ロリゴスロリはサングラスを少し下げ、唇をめくって白い歯を剥き出しにして笑う。


「あんま手間させてくれんなやァ。サルはサルらしく“ウキウキ”言ってりゃいいんだヨォ」


「このダボハゼがぁ! チンパン野郎がいっちょ前に調教師気取りか!」


「クックック。チンパンジーは高等生物! その知性の高さを買われてこの園を任されているのよォ!」


 そう。なぜかこのチンパンたちは、この隔離島ワクワク動物園の秩序を保つために、治安維持を担っていたのであーった!


「そんな訳あってたまるかーい! オメェが高等生物なら、アリのクソでも神になっとるけん! 低能の黒毛ダルマが!」


「猿三郎、オメェも解らんアホザルだなァ。俺様の強さ知らんわけでもあんめぇヨォ?」


「知ったことか! 今日こそは引導を渡してやるけ! ワシの最強拳法こと、“猿回しサルマワーシャルアーツ”でな!」


 猿三郎は「コーッ」と鶴のようなポーズで構える!

 あれだ。昔観た映画、車のワックスがけさせて強くする空手ボーイの決めポーズだ!!


「そんなニワカ仕込みの武術で、この俺様、ロリゴスロリ様の“狂石クルイシー柔術”が破れるものか!」


 ロリゴスロリは両手を開いて構える。


 それは決戦! 超日本猿VSチンパンジーの近縁種まれに見る史上最大の戦いなのであーーった!


「死にさらさんかぁーいッ!!」


 物語の主人公にあるまじき台詞を吐き、猿三郎が飛びかかる!


 しかーし、ロリゴスロリはまるで動くことなく、飛び蹴りを軽く片手で捕まえる!!


「なんじゃ…キュエッ!」


 そのまま猿三郎は裸締めで締め落とされる! その間、ほんの0.5秒の早技であっーた!


 この結末は当然だ! 


 超日本猿の直立時の全長はおよそ130〜140センチに対し、チンパンジーはおよそ150〜170センチ(ロリゴスロリに至っては180センチ超)!


 体重! 超日本猿10〜18キロに対し、チンパンジー40〜60キロ(ロリゴスロリに至っては90キロ)!


 握力! 超日本猿が30キロに対し、チンパンジーは250〜300キロ!!


 ん〜ん〜!! 勝てるわけがぬぁい!


 赤ん坊がプロレスラーに挑むようなものだ!


「さあ! 連れて行けィ! 拷問部屋になァ!」


 ロリゴスロリの指示で、白眼を剝いてアブクを吹いている猿三郎が運ばれる!!



 あれま! 第1話にして主人公が無様に気絶してしまう事態! これから一体どーなってしまうのか!?


 勢いに任せて、次回につづーーくぅ!!

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