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犬次郎編13 あるあるのある

 まるでド○フのように、頭がボンバーしたババアが鼻と口から煙をブスブスと吐きつつ気絶している!


「ついに倒したわい……“キビダンゴ・ザ・ババア”を!」


 頭頂部の毛を、皮膚ごと根こそぎ大根おろし機で持っていかれた猿三郎が言う。


 キビダンゴを作ったババア…まるでプロレスラーのリングネームのようだが、キビダンゴ・ザ・ババアというのが名前だったのだ。

 本名は“オ・ウーナ”らしいが、そんな情報はラスボスの回想をもはしょった畜生どもには知る由もなかった。


「ええ。グルコサミンの回復がなかったらヤバかったわね」


 燃え盛る炎で服が燃えてしまったが(お色気要素)、大事な部分だけは残った衣類で上手く隠してる雉四郎が言う。


「ごっつあんです!」


 ちゃんこ鍋を食いながら、グルコサミンは笑顔になる。


 読者も周知の通りであろうが、回復系力士は他人は力ずくで治せるが、自身の傷はちゃんこを食べないと治せないのだ。


 そして、これまた周知のこととは思うが、ちゃんこの具材は前回に倒した魔族のリーダー、軍魔司令パパチチイヤン2世だった。

 ラスボスの手前で倒した時から、コイツを非常食として持ち歩いていて正解だったのである。


「しかし、長い戦いじゃったのぉ。まさか塵太郎のヤツがこの世界に来て復活するとは思わなんだわい…」


「ええ。この世界の根源たる力、塵太郎がダークエナジーボールと合体した時にはもうダメかと思ったわ」


「じゃのぅ。時の賢者タイムの力を借り受けねばワシらでも…」


「そうね。伝説の魔術書ネクロノミコンも何度もアタシたちの危機に…」


「うるさい。そんな話はどうでもいい」


 気絶しているババアの頭を蹴り飛ばし、犬次郎が怒る。


「説明口調でとってつけたかのような経緯などいらん。結局は鉄球で解決したんだからな」


 猿三郎も雉四郎も遠い目をする。


 時の賢者タイムも魔術書ネクロノミコンも、敵によって消滅したわけではなかったからだ。

 とどのつまり、犬次郎の逆鱗に触れて、この世から消滅することになったのである。


「とにかく、だ! ゴッデムを呼ぶぞ!」


 犬次郎はゴッデムポーズを取る。


 何をするか悟ったクズカスもグルコサミンも、同じポーズになる。



「「「「ゴッデムッ!!!」」」」



 彼らが叫ぶと、異次元の扉が開く!



 しつこいようだが、偶然アルファネムス効果を生み、ハードリングチャンバレー現象が引き起こされ、観点相互作用反応が生じ、内閣総理大臣賞的な連鎖的に多角化式婉曲類型と思わしき多段次元のマシュマロ渦がまさにテラ時空と地球時空との空間の橋渡しをする。


 まあ、平たく言えば、空に“窓”みたいなのが出てきたわけである。


「おい、ゴッデム!」


「なんだ。迷えるアニマルズたちよ!」


 ゴッデムもゴッデムポーズを決める。どうやら今回は飯時ではなかったようだ。良かった。


「なにが迷えるアニマルズだ。なんでこのババアがこの世界に来ている? ギビダンゴの呪いから逃れるために俺たちはこの世界に異動してきたんだぞ」


「人の欲望は計り知れん! お前たちに対する恨みが世界を異動させるパゥアーを生んだと言うのが神からの体の良い回答だ!」


 ここもやはりご都合主義なのである。


「もうウンザリだ。俺は人間なんかにはなりたくなかった。キビダンゴの呪いから逃れたかっただけなのだ。俺たちを元の世界に返してくれ」


「「えッ!?」」


 犬次郎のとんでも発言に、猿三郎と雉四郎はびっくら仰天する。


「そうそう都合よく…」


 たしなめようとしたゴッデムが眉をピクリとさせる。なぜならば、犬次郎の眼が涙に濡れそぼっていたからだ。


「こんな、血ばかりが流れる無益な争いばかりの世界は沢山なんだ……」


 猿三郎も雉四郎もやはり遠い目をする。2匹とも、(鉄球で全員殴り殺しておいて、どの口がそんなことを言うんだ)と思ったが、口には出さない。

 洋画あるあるの、エンディングでホッと一息ついた瞬間に死ぬなんてまっぴらごめんだったからだ。


「…解った。俺はアニマルは大好きだ。そして動物虐待も許せん。元の世界に返してやろう。

 しかし、あるあるなんだが、元の世界とこの世界は時間の進み方が違う。従って、元の世界に戻ると500年ほど時代が進んでいる。それでもいいのか?」


「構わん。500年経とうが柴犬は柴犬だ」


「解った。なら、代金の代わりにお腹を撫で回させてもらおう」


「いいだろう。…わ、ワフゥ♡」


 赤パン一丁のグラサンオッサンが、美青年の腹を撫で回す……そりゃ、もうヤヴァイ絵面でしかなかったのであーーった!!

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