目次
ブックマーク
応援する
5
コメント
シェア
通報

犬次郎編10 オーマイゴッド!

 俺はツギーの町へと戻る。


 町の中にさえ入ってしまえば、敵は追いかけては来ないだろう。


「さて、レベルアップのためにイベントをこなさなければならない」


 俺は手近にいた男に声をかける。


「なんだ?」


「殴らせろ」


「は?」


 ボグゥッ!!


 俺は男の腹にボディブローを叩き込む。


「ハウウッ! な、なにを…なにをするッ!?」


「うーん。レベルは上がらんか」


「レベル!?」


「やはり殺すしかないか」


「エッ!?」


 俺は鉄球を振り回す!


「な、なにを!?」


「人間どもめ。お前たちは存在だけで罪なのだ」


 そうだ。人間こそが我々柴犬にとってモンスターなのだ!


 俺は思い出す。八百屋のオヤジに蹴られたことを、魚屋のオヤジに魚を無理やり食わされたことを、そしてどこぞの学校教師に極太油性ペンで眉毛を描かれたことを……


 許せん!! 人間めが!! 駆逐してやる!!


「やめて!」


 目の前に美少女がいた。柴犬の俺でも解る良い女だ。ボーダーコリーだ。


 ボーダーコリー?


 なんだと? いや、人間のハズだ…???


「お察しの通りです。私もまたゴッデム神によって異世界異動してきた者なのです」


「そうなのか?」


「はい。ツギーの町に来られてからずっと見て参りました。しかし傍若無人なそのお姿…ンボォッ?!」


 俺は鉄球で女の顔を殴り飛ばした。


「なんで!? どうして殴った!?」


 さっきボディブローを加えた男がキャンキャンやかましく吠える。


「話が長くなりそうだからだ」


「そ、それだけで…」


「教会はどこだ?」


「え?」


「教会なら蘇生させられるんだろ?」


「そ、それはそうだが…」


「場所を教えろ」


「この町の北だ。ミカンみてぇなオブジェが屋根にあるからすぐに…ンバァッ!!」


 俺は男を鉄球で殴った。


「北のミカンだな。それだけ解ればもう用はない」




──




「オーマイゴッド!」


 血塗れの町を見て神父は漫画みたいな顔をする。


 そうだ。俺がこの町の住人全員を鉄球で始末したからだ。


「神などいない。…いや、いたがラーメンを食ってた」


「ユーは悪魔ですか? なぜこのような残酷なことを!」


「レベルアップのためだ」


 コイツらのおかげでレベルが10は上がった。


「ワッツ!?」


「それに蘇生させられるんだろう?」


「で、できるにはできますが…」


「ならさっさとやれ」


「え? えっと…町人1人あたりの蘇生代が500円ですから、この町の住人の数が1000人だとすると…」


「無償でやれ」


「は、はぁ!?」


「普段は神への奉仕どうのと言っておいて、タダ働きはしない気か? まるでペットのように良いご身分だな」


「な、なんという罰当たりなことを…」


「罰もクソもあるか。蘇生しないなら、貴様を今すぐに神の元へと送ってやる。ラーメン食ってる邪魔をするなと怒り狂うだろうがな」


「オーマイゴッド!」


「だから神などいない。お前を救う神などいないのだ」


「オーマイゴッド!」


 ダメだな。コイツは…


 まあいい。無理やりにでもやらせるだけだ。


「さあ、さっさと蘇生しろ! 少なくとも3周はするぞ! あとレベル10は上げる!」


「オーマイゴッド!」




──




 町の惨劇を、銭太郎も裏本太郎も唖然として見やる。


「こんな酷いやり口は見たことがないだっちゃ!」


「貴公らの仲間の方が常軌を逸しているでありますぞ!」


 捕らわれの身となった猿三郎と雉四郎は何とも言えない顔をする。


「まったくもって…」


「ねぇ」


 ツギーの町からは、犬次郎唸り声と人々の嘆き叫ぶ声が夜まで響いていたのであーった!!

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?