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犬次郎編08 飯時に話しかけるな!!

「翁の仮面? まさか…」


「何か知っとるんか? あの不気味な魔物を?」


「いえ、知らないけど…」


「知らんのなら思わせぶりなこと言うんじゃねぇけん!」


「…貴様らには最初から期待していない。困った時の神様だろう」


 俺はゴッデムポーズ(例の右手を拳にして、左手首を強く握って空高く突き上げる姿勢)を取る。

 何をするか悟ったクズカスも、同じポーズになる。



「「「ゴッデムッ!!!」」」



 我々が叫ぶと、異次元の扉が開く!


 前にも説明したような気がしなくもないが、これは偶然アルファネムス効果を生み、ハードリングチャンバレー現象が引き起こされ、観点相互作用反応が生じ、内閣総理大臣賞的な連鎖的に多角化式婉曲類型と思わしき多段次元のマシュマロ渦がまさにテラ時空と地球時空との空間の橋渡しをする…とのことだ。


 うん。やはり、さっぱり意味が解らん。


 解らんが、俺たち動物にはそんなことはどうでもいい。そんな些細なことは、下等生物人間どもにでも考えさせておけばいい。


 話を戻そう。まあ、平たく言えば、空に“窓”みたいなのが出てきたわけである。


 そこにゴッデムの後ろ姿が映し出される!


「おい、ゴッデムッ!」


 ゴッデムが振り返る。ラーメンをすすってる。醤油ラーメンだ。


「何だコノヤロウ! なに見てんだ! 拝観料とんぞッ!!」


「な、なんでいきなり怒り狂ってるんだ?」


「飯時に話しかけるな!!」



──本日のワンポイントアドバイス! 猛獣とゴッデムは食事中に話しかけちゃダメだ! なぜかって? そりゃ襲われるからだ!──



「いや、聞きたいことが…」


「ゴッデェームッ!!!」


 ブチッ!! と、まるでテレビでも切るかのように“窓”が消えた。


「ど、どうするのよ…」


「なんてフザケた神じゃい…」


「…まあ、仕方ない。やはり倒すしか…」


 あの黒い気味の悪い魔物どもは山から降りてきたようだ。

 まるで反復横飛びでもするかのように、こちらに近付いて来ている。


「ニンゲン! コロス!」


 草の影から小柄な何かが飛び出した。


「む? ゴブリンか! よりによって敵が増えたわい!」


「ゴブリン2体に、あの黒いの2体…計4体。数じゃ負けてるわね」


「関係ない。6体だろうが、俺ひとりで全部叩き潰せる」


「6体? ちょ、ちょっと待てい! それにはまさかワシらも…」


「……」


「なんか言わんかーい!」


「ん?」


 あの黒いのが動くのに、ゴブリンが振り返って首をひねる。


「ナンダ コイツ…」


「ミタコトナイ…」


 ん? なんだ? 仲間じゃないのか…


「ジィ!」


「ジィジィ!」


「ウア! ナンダ!?」


「コ、コッチ クルナ!!」


 なに? あの黒いのがゴブリンを襲った?


「ど、同士討ちかいな!?」


「よし。猿三郎。今がチャンスだ。犠牲になる覚悟で様子を見てこい」


「ふざけるなぁぁッ!!」


「ふざけてなどいない。なら雉四郎」


「絶対にイヤよ!」


 ふう。本当にワガママな奴らだ。どのみち肉塊になることは決まっているのに…


「何をする気だ? なに!?」


「ゲェッ!」「ウソぉ!」


 あの黒い魔物はゴブリンをそれぞれ鷲掴みにすると、口の中へと無理やり入り込む!


 ゴブリンは抵抗するが、あの黒い魔物は、口が裂けようが、血が噴き出そうがお構いなしに押し入って行く。


「「ジィジッ!」」


 最後に翁の仮面がこちらを向き、まるで不敵に笑っているかのようだった。


 そして、ゴブリンの身体が真っ黒に変色する。


 やがてその形状がみるみるうちに変わって行き…… 


「…プフゥッ!! ようやく受肉できたっちゃわいな」


 1体は『銭』と書かれた銀色の前掛けをつけた小太りの男となる。


「…ムゥ。低俗な肉体にござるがな」


 もう1体は細身で、眼鏡と釣竿と腰ミノをつけた男だ。


「な、なんじゃい、オメェらは!?」


 猿三郎がザコキャラの定番台詞を言う。


「おいどんは、“サカリがついた銭太郎”!」


「小生は、“玉毛箱の裏本太郎”!」


「……なんだ。また頭がおかしい奴らか」

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