俺たちはツギーの町の周りでレベルアップを計る。
「スライム如きが! 【疾風怒濤波】じゃい!」
猿三郎が放った風圧でスライムが蹴散らされる!
「これでも喰らいなさい! 【矯正乳砕き】」
雉四郎が胸の谷間にスライムを挟んで粉砕する。ジェリーまみれだ。
「すこぶるダサい技じゃけんのぉ!」
「は!? お色気技でしょうが! 何が【疾風怒濤波】よ! この中ニ病患者が!」
「何がじゃーい! カッコいいじゃろうが!」
「やめろクズカスども。さっさと金を回収しろ」
不貞腐れながらも金を拾い集める。
しかし納得いかん。いくら経験値が均等分配方式だからといって、俺が倒してるのにコイツらのレベルまでアップするってのは納得がいかん。
「のう。犬次郎」
「なんだ?」
「その鉄球、ちぃとばかし汚れとるようだのぅ」
「そうか? どこがだ?」
「きっとゴブリンを叩いた時の血じゃろい」
ふむ。確かにあれだけ叩き殺せば少しは汚い血がついたかもな。
「拭いてやろう」
「そうか。頼む」
俺は大魔神の陰嚢玉を猿三郎に渡す。
「あッ!」
雉四郎が何かに気づいて目を丸くした。
「ハッハー! これさえ手に入れればこっちのもんじゃーい!」
猿三郎は大魔神の陰嚢玉を握り、俺から距離を取る。
「や、やったわね! 猿三郎!」
「オツムの出来が違うんじゃーい! さあ! 犬次郎! 鉄球制裁を受けたくなくば、今まで調子こいてたのを泣いて謝るんじゃー!」
そうか。やっぱり知能は超日本猿のままか。
「やれるならやってみろ。このエテ公」
「言うたな! ならこれでも喰ら…な、なにぃ!?」
「どうしたの!? 猿三郎!?」
「お、重い! 振り回せんじゃと!?」
鉄球は重力に負けた陰嚢のように地面に垂れ下がったままだ。
「その武器は選ばれた睾丸の持ち主にしか扱えんそうだ」
「な、なんじゃと!?」
「残念だったな」
俺は猿三郎から大魔神の陰嚢玉を取り返す。
「さあ、言い残すことはあるか?」
「ま、待ってくれ! つい出来心だったんじゃわーい!」
「わ、私は無関係よ!」
2匹は俺の前に平伏する。本当に懲りないヤツらだ。
「雉四郎。お前も何だか嬉しそうだったじゃないか」
「そ、そんなことないわ! アタシは犬次郎のモノだもの!」
「白々しいにも程がある。夜中に何度も俺の部屋に忍びこもうとしてたではないか。大方、猿三郎のようにこの鉄球を奪い取ろうとでも考えていたのだろう」
「そ、それはその、別の…目的で…」
「言い訳は、あの世で塵太郎の奴にでも言うがいい」
「おい! 待つんじゃ!」
「だから言い訳は…」
「違う! あそこじゃ!」
猿三郎が指差す方向を見やる。
山肌に何かが蠢いていた。明らかに生物だ。
「ジィ!!」
「ジィジィ!!」
なんだ? あの気持ちの悪い真っ黒な生物は!
「…おかしい。ゴッデムからもらった本にはあんな魔物の情報は載ってなかったぞ」
「言ってる場合!? こっちに近づいてくるわよ!」
「フン! 来るなら倒すまでだ!!」