「よーし。荷物持ちども。次の町に向かうぞ」
俺は道具屋からありったけのアイテムを購入し、このクズカスたちに持たせる。
(このクソガキャァッ! このワシにこんな真似をさせおってからに!)
「なんだか不満そうだな。猿三郎」
「そ、そんなことはごぜぇませんよ、グェヒヒヒ」
(今に覚えとけよ!)
道中、魔物どもに襲われる。だが俺の鉄球でひとひねりだ。
「金じゃぁ!」「金よぉ!」
「1円も残さずに拾えよ」
金の回収はクズカスの務めだ。
「ふむ。6,000円か。今日の宿代にはなるか」
ここら辺の魔物は弱すぎる。いくら叩いても大した金にはならない。
「さっさと行くぞ。ツギーの村へ!」
ハジメーの町の、ツギーの町に辿り着く。
宿だ! まずは宿だ!
「一泊4,500円だよ〜。ご休憩なら2,500円だよぉ〜」
「金が足りん。お前らは外で寝ろ」
「地下なら500円でいいよ〜」
「そうか。温情をかけてやる。地下で寝ろ」
「ちょ! 待てい! 一部屋借りんなら、ワシらも同じ部屋に!」
「そうよ! ここラ○ホでしょ! 2人で泊まるべきよ!」
「ふざけるな。お前らみたいな寝首をかくような奴らと同じ部屋で寝れるか」
俺はクズカスどもを地下に追いやる。言うことを聞かないなら鉄球制裁だ!
──
ドブネズミが這い回る地下部屋で、猿三郎は怒りで痙攣していた。
「アンニャロメェーッ! 調子に乗りすぎじゃーい!」
拳をコンクリ壁に打ち付ける!
「イタイわーい! これも何もかも犬次郎のクソガキのせいじゃーーッ!!」
「…うるさいわね。言ったってしょうがないじゃないの。あの鉄球で殴られるのはゴメンよ」
「ワシだってゴメンじゃー! じゃけん、許せん! かつての同じ釜の飯を食った仲間をこんな目に遭わせおってからに! ありゃサイコパスじゃぁー!」
「ま、イケメソにサイコパスって多いしね」
「なんじゃー! 顔か! 顔よりハートじゃぁ!」
「アンタの場合は顔も心根も腐ってるじゃない」
まんま汚い心が率直に猿三郎の顔に生じていた。
「そうじゃー! あの鉄球じゃ! あのタマフグリに似た武器を奪えれば、ヤツは無力なワン公と化すわーい!」
「…余計なことはしない方がいいと思うけど」
「じゃかましゃー!」
──
「なあ、兄さん、冒険者ギルドに…」
「興味がない」
「この先の遺跡ダンジョンは未知の魔物が…」
「別に用がない」
「町長が困っているの。一人娘の…」
「どうでもいい」
なんだ。この町にも特にイベントというイベントがないな。
「おい! テメェ、見ねえ面だな。この町を仕切ってるドン・クランベリー様…ンボッォ!?」
「うるさい。鉄球喰らわせ…あ。もう沈んだか」
ゴッデムの話だと、どの町にもクエストというのがあると聞いたんだが…そんなものが起きる気配もない。
「…はぁ。ドックフードが食いたい」
──
「ジィ!」
「ジィ!! ジィジィ!!」
奇妙な真っ黒な全身タイツで、翁の仮面を被った生き物が俊敏に岩陰を這い回る。
「さあ、行け! 我が下僕、
この世界の魔力を吸収し、力を膨張させつつあるババアが指示を出す。
心なしか若返っている気もする。嘘だ。全然そんなことなく邪悪さと醜悪さが増しただけだ。
「行って、逝かせておしまい! あの犬・猿・雉をッッッ!!」