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第三十四話 革新の兆し、京を動かす

永禄十一年(1568年)秋。

京の都。

信長の上洛によって、都は大きく揺れ動いていた。


宗則は、信長の家臣として、上洛の行列に加わっていた。

彼は、都の街並みを見つめながら、心の中で、様々な思いを巡らせていた。


(これが、京の都…か…)


宗則は、白雲斎の寺で聞いた、華やかな都の物語とは全く異なる、荒廃した街並みに、心を痛めた。

焼け落ちた家々、行き倒れる人々、重苦しい空気…。


(以前訪れた時よりも、さらに荒廃が進んでいる…)


宗則は、数年前に春蘭様に連れられて都を訪れた時のことを思い出した。

あの時も、都は、戦乱の傷跡が残る、痛々しい姿を見せていた。

しかし、今は、さらに状況が悪化しているように思えた。


(信長様は、本当に、この都を救うことができるのだろうか?)


宗則は、信長への期待と、同時に、言い知れぬ不安を感じていた。


信長は、将軍・足利義昭を奉じて、堂々と都へと入城した。

彼の軍勢は、整然と隊列を組み、その姿は、力強く、そして、恐ろしいほどだった。


「信長が来たぞ!」


「あれが、尾張の風雲児か!」


都の人々は、道の両脇に集まり、信長の軍勢を見物していた。

彼らの表情は、様々だった。

信長に、戦乱の世を終わらせる希望を託す者。

信長の力に、恐怖を抱く者。

そして、信長の到来によって、自らの立場が危うくなることを恐れる者…。


宗則は、人々の様々な表情を見ながら、都の複雑な状況を、改めて実感した。


信長は、二条家の屋敷を接収し、自らの宿舎とした。

二条尹房は、すでに失脚し、二条家は、没落の一途を辿っていた。


「二条尹房は、朝廷の財産を横領し、私兵を集め、帝を操ろうと企んでいた。このような悪逆非道は、決して許されるものではない!」


信長は、家臣たちを前に、そう宣言した。

彼の言葉は、力強く、家臣たちの心を、震わせた。


信長は、朝廷や公家たちとの関係を築きながら、都の改革を進めていった。

彼は、楽市楽座を実施し、商工業を活性化させた。

また、関所を撤廃し、人々の往来を自由にした。


「わしは京を戦乱の世から救う!」


信長は、家臣たちを、鋭い眼光で見据えながら、言った。


「そのためには、古い秩序を壊し、新しい時代を築かなければならない!」


「楽市楽座を実施し、商工業を活性化させる。兵農分離を進め、強力な軍隊を編成する。そして、朝廷の権威を回復し、天下に号令する!」


信長の言葉は、力強く、家臣たちの心を、震わせた。


宗則は、信長の言葉に、心を揺さぶられた。

彼の言葉は、力強く、そして、希望に満ちていた。


(信長様は本当にこの乱世を終わらせることができるのかもしれない)


宗則は、信長への期待を、新たにした。


しかし、同時に、彼は、信長の冷酷さ、そして、その強大な力に、不安を感じずにはいられなかった。


(私は信長様の力を借りて都を救うことができるのだろうか?)


(それとも私は信長様の力に飲み込まれてしまうのだろうか?)


宗則は、自らの運命に、不安を感じていた。


一方、蓮は、信長の上洛を、好機と捉えていた。

彼は、この機会を利用して、自らの野望を実現しようと、暗躍を始めていた。


蓮は、反信長派の公家たちと、密かに会合を開いていた。


「信長は、我々公家を、ないがしろにするつもりだ!

このままでは、朝廷の権威は失墜し、我々は、信長の傀儡となってしまう!」


公家たちは、口々に、信長への不満を訴えた。


「ご安心ください、諸卿」


蓮は、静かに言った。

その声は、冷たく、鋭く、公家たちの心を貫くようだった。


「わたくしには、信長を都から追い出す計画があります」


蓮は、公家たちに、自らの計画を明かした。

公家たちは、蓮の言葉に、希望の光を見た。


(続く)


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