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第16話 刺激物爆弾

「風魔法の使い手と腕のいい弓兵ですか?」

「ええ」 



 サロンでホットミルクに蜂蜜を入れたお茶を飲んでいる時、公爵家の家令にそんな人材がいるか訊いてみたら、ちゃんと紹介してくれた。


 いつのタイミングがはよく分からないのだけど、領主の留守を狙って公爵邸に悪さしに来るやつがいたという話を前世で聞いたような気がするのだ。  

 だから、やれる事はしておきたい。


 そして農業の本も読んだけど、やはりまだまだ改善の余地はある。少しずつ頑張っていこう。


 契約結婚はビジネスだから、何かしらこの領地の為に、私は役に立たなくては。



 ◆ ◆ ◆


 サロンで件の騎士と魔法使いを待っていたら、



「カダヴィード公爵家に仕える魔法使いウィードです、風魔法も使えます」

「同じくカダヴィード家の弓兵で、名はアーロンです。以後お見知り置きを」



 二人の騎士はこんな仮面をつけてる不審者みたいな女にも礼儀正しく挨拶をしてくれた。



「お顔を見せに来てくれてありがとう、二人ともよろしくね。もしかしたら仕事を頼むことがあるかも知れないから」

「はい、御用の時はお声がけ下さい」



 ◆ ◆ ◆


 そして自室のテーブルセットで両親に当てて婚約と結婚報告の手紙を書いて、数日後に返事が届いた。


 更に出すのを完全に忘れていた兄からも連絡が来た。

 おそらくお父様経由で伝わったのだろうと推測される。


 前世の、日本人だった時の記憶がだいぶん表に出て来ているせいで、今世の家族への関心が薄いわね、私。



「まぁ、アカデミーにいるお兄様がわざわざ様子見にこちらまで来て下さるのね」



 私は本日は仮面の代わりにレースを目元隠しに使ってみた。

 こちらの方が見栄えがいい。


 通常布系で目元を覆うと視界が悪くなるけど、魔法使いのウィードが特別に視界を確保できる魔法をかけてくれたものだ。白と黒のレースで作ってくれた。

 替えもあってとても親切!



 なかなかテクニカルな魔法が使えて素晴らしい。

 流石に竜血公爵家の魔法使い、伊達ではないなと、思わず感心した。



 そして更に自室で卵の殻に穴を開ける作業をしようとしていると、メイドのマノンが怪訝そうな顔で見てる。


 確かに卵に穴を開ける作業をする女なんて珍しいわよね。

 因みに針を使って開けた穴からは当然中味は出す。


 必要な道具はまず新鮮な生卵。

 そして穴を開ける用の裁縫針などを用意。


 小さなスプーンやストロー(中身をかき出す、または吹き出す用)卵の中身を受け止める為のボウルと殻を洗う為の水と酢。拭く為の布。


 ホントは使い捨て可能なキッチンペーパーとかが欲しいところだったけど、無いものは仕方ない。

 そして乾燥用のスタンドに小さなリングである。


 作業手順はまず、卵に穴を開ける。

卵の上下(尖った方と丸い方)に小さな穴を1つずつ開ける。尖った側を上にするのが一般的。


 針をそっと刺し、少しずつ広げて、直径2〜3mm程度の穴にし、大きすぎると殻が割れやすくなるので注意する。


 次に中身を取り出す。

 穴が開いたら、尖った側の穴から息を吹き込んで、中身をボウルに出す。


 ちなみに卵の中身は料理に使えるので捨てずにとっておく。


 そして殻を洗う。空になった殻に水を少し入れ、軽く振って残った卵白や黄身を洗い流します。


 酢を数滴混ぜた水を使うと、キレイになるし、臭いも防げる。


 最後に水でよくすすぎ、穴から水をしっかり出し、乾燥させる作業。

 布で外側を拭き、穴を下にしてリングで固定し、自然乾燥をする。


 完全に乾くまで数時間〜1日程度かかったりする。  そして直射日光は避ける。


 私が今回作るのは卵型刺激物爆弾だけど、本来はイースターエッグ等の作り方だ。


 私はゴーグルで目を覆い、口を布で覆って、きちんと保護をしてから、敵の視覚などにダメージを与える為の激辛唐辛子と麻痺毒を持つ植物の粉末などを入れた。


 パウダー系とオイル状態の物と二種作っておく。


 最後に穴を塞ぐ蓋は特殊な油紙とノリのようなものでする。


 死に戻りができたといっても、私自身が特別な武力を持っている訳ではないから、小細工をする。


 でも毎回卵爆弾を作るのって大変よね。

 今度スプレー容器を何処かの工房に注文して作って貰おうかな? 香水を売る時にも便利だろうし。


 予算については……公爵家が出してはくれるだろうけど……お父様、ちゃんと私の結婚の為の持参金、急な事とはいえ、そこそこ出して下さるらしいし。 


 鷹のレースでも多少は儲けたし……少しは当てにしてもいいわよね?



 そして刺激物爆弾を作った後は、離れにある岩風呂温泉に塩を入れて入浴し、ぽっかぽかになった。








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