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第13話 手を重ねて

 婚約成立した翌朝。


 婚約は成った! でもまだ結婚して初夜が終わるまで、油断は出来ないわ!


 さしあたって、何をすればいいのかしら?

自分磨き?

 夫となる人が初夜で萎えてしまわないように……あ、待って!? そもそもその気になってくれるのかしら?


 でも若い男性よ、まだ20代よ! そのような欲がないはずはない……わよね?


 ん? まさか竜の血を引く者は長命種のエルフのように性欲めちゃくちゃ薄くてごく短い時期にしかそのような行為をしないとかある!?


 そもそもラノべや少女漫画だと、このヒーロー達って白い結婚で、愛人もいない状態で一体その手の欲はどうやって解消しているの!? って状態がよくあるわ。


 ああっ!! とりあえずその手の欲を目覚めさせるには……身近にそういうものが有るのがいいのよね!?


 エロっぽい絵とかどう!?


 でも買うといいお値段がしそうよね、いっそ私が自分で描けば、ただみたいなものよね?

 画材代は必要だけど、時間はまだあるし。


 そんなことを自室の寝室で考えていたら、ノックの音がした。おそらくメイドか執事だろう。


 慌てて仮面をつけて、素顔を隠して対応したら、やはりメイドだった。



「何かしら?」

「旦那様がお呼びです、朝食をご一緒にと」


 朝食をご一緒してくださる!


 ジュリウス様のお呼びとあればと、私はまだ寝巻きだったので急いで着替をして、身仕度を調え、早速食堂へ向かった。

 食堂へ行けば、彼は今朝もかっこよかった。



「婚約証書はうちの文官と騎士が転移魔法を使って昨夜のうちに皇室に持って行き、渡した。つまり婚約はもう成立したとみていい」

「ありがとうございます!」


「婚約はしたが、私は婚約者同士でやることがよく分からない」

「はい?」


 この手の契約結婚では、放置が定石では?


「そなたは健康や体力に問題がある上、未だ外は寒い」 


「はい」

「それで執事に相談したら、邸の案内でもしたらどうかと言われてな……外よりはましだろうし。そなたさえよければ、食後の後にでも」

「案内をジュリウス様が直々にしていただけるのですか!?」



 お忙しそうなのに!



「ああ、それくらいはな」



 愛のないはずの政略結婚なのに、なかなか手厚い待遇!! もしかして私は顔面だけは強者のせいかしら? この仮面の下の容姿が! 綺麗過ぎて!?



「お忙しいでしょうに、ありがとうございます!」

「いや、大したものはないのだかな」



 謙遜よね? 大きいわよ、ここ。



「そんなことは……とても広くて温泉もありますのに……」



 ややして食事を終えてから、ジュリウス様は私の前に来た。


 そして超かっこいい軍服系の礼服をきっちり着ておられた彼はすっと私の前に腕を出した。



 これは!! 伝説のエスコート!!(伝説ではない)

 いや、貴族界隈ではエスコートなど、通常の事では有るのだけど、中味が元日本人としては感動してしまう!


 ゲームキャラみたいなクール&ワイルド系イケメンが! この私に!!



「どうした?」



 手をとる前にエスコートというものを目の当たりにし、感動で固まっていた私をジュリウス様が訝しんだ。


「よ、よろしくお願いします」



 私は動悸の激しい胸を左手で押さえ、そっと右手を彼の大きな手に己の手を重ねた。



 手を重ね、並んで廊下を歩くと、ちゃんと歩調を合わせてくださった。

 彼の長い足で、私に合わせるのは面倒だろうに。


 そして廊下の壁に掛かった1枚の絵の前で立ち止まり、説明をしてくれた。



「この城は、実際に我が領地にある、公爵家の城だ」

「え? 何故こんな大きくて立派な城があるのに、こちらの御屋敷を建てられのですか? あ、もしかして温泉がこちらにしかないとかでしょうか」


「まぁ、それもある。城はあまりに大きくて手入れが大変で、冬はかなり寒い。こちらの方が湯の湧く泉があるせいか、暖かい」

「ああ、なるほど」


「戦争でもあれば守りの硬い石造りの城に行くが」

「戦争……」


「人間も魔物もいつ牙を剥くか分からんからな」

「よく出張して魔物狩りをされているのですね」


 彼はああ。と、うなずいた。

 そうやって、彼は領主として、食料や外貨を稼ぐのだろう。

 本当に、冬の長いこの土地の皆を守る為に、頑張っておられるのね。



「人間相手なら自領の騎士でもどうにかなるのだろうが、やっかいな魔物がいるからな」








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