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第2話 猿夢②

 悪い夢なら覚めてほしい。夢の中の電車で子猿たちに右目を抉られた亜里子は遅れてやってきた痛みに耐えかね、たまらずに絶叫する。猿夢は無言のままで亜里子が苦しむ様子を観察している。口元は黒のマスクで隠れているがきっとにんまりと笑っているに違いない。


ここは夢の中だというのにものすごく痛かった。右目を襲う激痛と血の臭いに声すらあげられない。もしかして目を醒ませば、この痛みから解放されるだろうか。


『いや〜……実に綺麗な色の瞳ですネエ。このサファイアかラピスラズリと見まがうほどのあお、素晴らしいじゃあないでスカ』


戻ってきた子猿たちから抉った亜里子の眼球を手渡され、虹彩の色を見た猿夢がひゅう、と大げさに口笛を鳴らす。


『ああ。ちなみに夢から醒めれば解放されると思っているなら無駄でスヨ。貴女のその右目はもう使えまセン。なにせ小生の夢は現実を侵食しますからネエ。逃れられるすべはありませンヨ』


猿夢が亜里子の頭の中の考えを見透かしたかのように告げる。猿夢に同意するかのように子猿たちがきぃ、と一声鳴いた。


『ああいや……たったひとつだけありまシタ。貴女がジャックをここへ連れてきてくれたらここからすぐに解放しましょう。どうです、今度こそ約束できまスカ?』


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