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第19話 憂いをたつ

「……封印が解けた直後がチャンスだ! 皆行くぞっ! ドラネス!」

「はっ!」


 ギルド長と風龍騎士ドラネスは、水魔龍エウムの凄まじい雄たけびに怯むことなく猛ダッシュで間合いを一瞬で詰めていく。


 確かに、この手のやつって動きが鈍い開幕で如何に相手の体力を削る、もしくは倒すかが重要なのはもはや常識だしね。


 ということで、俺は俺の出来る仕事をするのみ! 


「フェニックスよ! 我が声に応じ貴方の再生の火の力、我に与えたまえ!」


 鳳凰司祭であるウィンフィルさん達も2人に強化魔法をかけるべく呪文を詠唱している。


「神の雷よ! 御身の一撃を我に預けこの愚かなるものに神罰を下したまえ!」


 レノアに似ている女性魔導士の方も何やら高威力の魔法を唱えている模様。


(すまん、ちまっとした低身長過ぎて今まで気が付かなかった……) 


 なんか冒険者ギルド内で頻繁にレノアと話してるのを見かけたから、仲がいい同種族なのかなとは思っているけど。


(詠唱には当然時間がかかるので、尚更俺が早いとこ行動しなきゃな) 


 そう思い、俺はライトボーガンに矢を素早く添える。


 俺は2人に当たらないラインを見据え、水魔龍エウムに向かってライトボーガンを撃ちまくる!


 正直、強敵である水魔龍エウムに当てれるとは思ってないし、2人の手助けの為に牽制出来ればいいというのが俺の狙いだ!


 なので、最初は頭、次に胴、んで脚かな?


 で、奴の頭を狙った所、やつは軽く首を捻り難なく交わされる。


 しかも冷静にこちらを警戒しつつ、ギルド長達への警戒も解いてない感じだ。


 知性があるのだろうし、そこを考慮すると間違いなくキングデビルクラーケンより強敵だろう。


 その証拠に水魔龍エウムは2人に向い、高出力のウォーターブレスを吐きかける!


 がっ、流石はギルド長達! そのモーションを良く見ているからアッサリそれを回避する。


「……フェニックスよ! 私らに再生の力を! 【フェニックスの加護】を!」


 と、同時にウィンフィルさんの強化魔法が完成し、俺達は温かい炎に包まれる!


 この感じ? なんか少しずつだけど体力が回復している感じだ……。


 【フェニックスの加護】……。


 おそらくリジェネ効果ってやつだろう、もしかしたら魔法防御とかの複合効果もついてるかもしれない。


(ということで、安心して行動出来るので次は胴狙い、いってみっか) 


 俺はライトボーガンを構え、素早く水魔龍エウムの胴目掛けて撃ちこむ!


 更にはギルド長とドラネスはそれを利用して、水魔龍エウムを左右に挟み込む行動を取る。


 流石戦闘馴れしている2人は機を逃さない!


 これで的を絞りにくくなったし、俺達後衛にも余波が届かない方向に散っている。


 しかも、俺が放った矢も回避しにくくなる上手い挟み込みだ!


 更にはドラネスはそこから物凄い突進力で、一気に間合いを詰め必殺の突きをかます!


 が、流石は水魔龍エウム、その必殺の槍と俺の放った矢を素早く左右の手で払っていく!


(くそっ、流石は7魔将! て、手強すぎる!) 


「……【神の鉄槌てっつい】よ!」


 丁度その時、狙いすましたように魔導士の雷魔法【神の鉄槌】が完成し、雷の槍が水魔龍エウムの体を貫く!


(な、成程っ、ドラネスの突きは囮であり、本命はこっちだったのか……!) 


 感電し、動きが止まっている水魔龍エウムに対し、ギルド長の流れるような必殺の上段斬りが水魔龍エウムを真っ二つにする!


「まだだ!」


 更にドラネスは高速の突きを真っ二つになった水魔龍エウムに向かって放っていく!


 ……こうして無数にも肉塊となった水魔龍エウムは岩肌に無残に転げ落ちる……。


(え? ……お、終わり? それにしても、あまりにもあっけなさすぎる……) 


 まあ、このメンツが強すぎるだけかもしれないし、それに封印から覚めたばかりだからってのもあるかもだしね。


 俺は念を入れてウィンフィルさん達にマジックポーションを素早く配ってい行く。


「……良し! これで憂いはたった!」

「はっ! これで奥さん達にかけられた呪いもじき解けますね!」


(ギルド長とドラネスは何か話しているが? ……はて?) 


「皆、目的は達成した出るぞっ! ついてこいっ!」 


 俺達は急いで、小舟に乗り来た道を折り返す。


 途中謎の振動が起き、天井から石や岩石が、って……?


(な、何が一体起きてるんだ?) 


「崩れるぞ! 急げっ!」

「ひ、ひえええっ!」


 俺達はガムシャラに小舟を漕いでいく!


 幸いウィンフィルさんの【フェニックスの加護】のお陰か、体力は尽きないので助かった……。


 ……というか、むしろこの為にかけていたと思える。


「いたっ!」


(イタタタっ! こ、こんな感じで上から降って来る大石とかがぶつかっても、回復してくれるしね) 


 ……それからしばらくして、何とか俺達は小舟で脱出することに成功する。


「では打ち合わせどうり、杉尾と俺以外は軍用船に戻れっ!」

「はっ! ギルド長、杉尾君幸運を!」


 文字通り俺とギルド長以外は軍用船に戻っていくが……?


「……え?」


(一体何が? というか何で? 水魔龍エウムは今倒したはずじゃ? 打ち合わせ? 俺何も聞いて無いんですが?) 


 その時、背後の祠が音を立てて崩れ……い、いや? も、盛り上がって……?


 気が付くと山のような大きさの大岩が盛り上がり、それは大蛇、……いや山のように大きな水龍の形に変化していた⁉


 水中でうねるようなとぐろを巻いたそれは、まるで大砲をぶっ放したかのような怒りの咆哮を上げていたのだった!

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