目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第14話 これは君の実力なんだ

 前方から、ガサガサと草を搔き分ける音が聴こえてくる!


 直後、黒色の毛並みを持つ数匹のダークウルフがうなり声を上げこちらに向かって襲ってくる!


 俺は例の如く、狼達が集団密集しているラインに向い素早く矢を放つ!


 それは先頭の数頭には避けられれてしまう。


 が、後方に何頭かいたおかげで無事その一匹の頭部に無事直撃し、その一匹は静かに倒れる。


 ライトボーガンとはいえ、くどいようだが風の力を纏ったマジックアイテム!


 その威力は普通のヘビーボーガンに匹敵、いやそれ以上の威力があるのだ!


「……2人とも少し目をつぶって!」


 俺とギルド長はレノアの大声に咄嗟とっさに目をつぶる。


 ……きっと事前に馬上で打ち合わせていたアレだろう……。


「光の精霊っ! 出力マックスで!」


 途端に目をつぶっても分かる具合の凄まじい光が周囲を照らす!


 ゲームとかでもよくある、閃光による目つぶし効果狙い!


「……ギャウン……」


 俺達が目を開くと、そこには悲痛な叫びをあげながらのたうち回る5匹の狼達がいた!


 どうやら効果は抜群だった模様。


「……フッ!」


 ギルド長の気合とも呼吸とも取れる声と共に、ギルド長の持つ大剣があっという間にその5匹を切り捨てる。


 良く見ると後方に1匹残りがいたので、俺は例の如くその一匹をアッサリ仕留める。


「ふふ、役割分担の出来た、いい連携だ!」

「ですね!」

「やるね杉尾! イェイ!」


 俺達はハイタッチをかまし、喜びを分かち合う!


 俺が牽制の矢を放ち、ギルド長が圧で動きを止め、レノアが目くらましをし、ギルド長が盲目状態のダークウルフの大半を殲滅し、遠くにいる残りを俺が殲滅する……。


 このPTでの一つの戦術が完成した瞬間であった!


 そんな感じで俺達は森の奥へ進みつつ、人食いコウモリやらトレントやらを軽く討伐していく。


(正直、ギルド長とレノアが優秀過ぎるんだよな) 


 そんなこんなで数時間後、ある程度討伐し終えた俺達は目の前に黒い塊が密集した場所にたどり着く。


 それは森の暗闇より深い黒色の花々であった……。


(レノアの光の精霊で何とか見えるけど。これ確かバイカオウレン(梅の花に似た宿根草)だよな?) 


「あ、杉尾! ここいらの花は加工すると高く売れるから全部採取するからね」

「あ、じゃあ、もしかしてこれが本命ってわけ?」


「杉尾君ご名答だ。ま、これらはちょっとした希少アイテムの材料になるのでな」


『①職業チャラ男スキルの内訳 【チャラ男知識レベル4 金儲けの知恵アップ』


 ああ、色々なるほどである。


 てなわけで、俺達はその花を摘めるだけ摘み、無事港町セカンドに帰還する。


 んで、その花をいつもの如くレノアに加工してもらい、後日町のギルドに持っていったところ、なんと金貨1000枚強もらえたっ!


 あ、当然、ギルド本部とはいえ色々時間がかかる関係で分割で貰いましたけどね!


 俺達は一階のギルド室客間のソファーでそれを数えながら、ニコニコ顔だったりする。


(やっべ、笑いが止まらん!) 


「杉尾君! 先日のデビルシャーク討伐と森での功績で君も晴れてプラチナ冒険者、即ち上級冒険者の仲間入りだ! おめでとう!」

「あ、ありがとうございます! で、でもいいんでしょうか? 俺そんな大した事してないのに?」


(ギルド長が褒めてくれるのは有難いけど、なんかね?) 


「実際倒せている事実はあるんだし、いいんじゃない? それにあの時、エリクサーの材料である花を見つけたのは間違いなく貴方の功績だしね」

「そう。それにその風揺らぎのボーガンを選んだのは君であり、それを使いこなせているのもまごうことなき事実! 君が普段から色んな訓練しているからこそ瞬時に使いこなせた、違うかい?」


「そうそう! それに杉尾は目利きの才もあるし、運もいいからサブの職業として商人がピッタリなんだよね」

「そ、そっか! 2人ともその、あ、ありがとう……」


 俺はレノアとギルド長の言葉に目がうろこ状態だった。


 そうだよな、ギルド長も言っていたが人にはそれぞれ役割がある。


 目利きの良さは、知識と昔の仕事の関係で分析力があるからなんかもしれん。


(それにしても運がいいかあ……) 


 マギデ族のママもなんか言っていたし、それを考えると本業チャラ男、サブ商人か。悪くないかもしれんね。


(なんといってもこの皆との出会いこそが、天啓かもしれんしな……) 


「……し、失礼します、ギルド長っ! 例の道が数か月後開くことが判明しましたっ!」


 と、その時ギルドの斥候がギルド長に跪き、ギルド長と話しているのが聞こえる。


「……そうか、なんとか間に合いそうだな……」

「ですね」


 それはさておき、ギルド長らが何故か俺の顔を少しチラ見したのが気になるんですけどね?


 んで、その翌日。


 俺は素早く朝食を取り、太陽が照りつける暑い砂浜、即ちセカンドビーチの見回りに向かう。


 今日は体を休めるのがメインとのことなので、俺はヤシの木の下の日陰に座りながらのんびり海を眺めてたりする。


(昨日は瘴気の漂う森の中を結構な距離を歩き、かつ戦闘で気疲れしたのでヘロヘロなんだよな) 


 サーフィンと見回りで体を鍛えてなかったら、進めてなかったかもしれんな。


「や、杉尾君っ! 調子はどう?」


 ボーっとしていたからか、気が付くとウィンフィルさんがいつの間にか横に座っていた。


「……え? ええ、ちょっとバテてますね」

「まあ、あの二人について行けるだけ大したもんかな? あ、そういえば上級冒険者になったんだって!  おめでとう!」


「あ、ありがとうございます!」


 俺は少し照れながらウィンフィルさんにペコリと頭を下げる。


「あの、ちなみに上級者になったら何か特典でもあるんですかね?」

「当然あるよ。えっと、まず、町の宿は無料になるかな。勿論食事もね! あ、それとね! 上級冒険者専用のクエストを受託することが出来るようになるかな」


 なるほど、おそらく働く内容のレベルが上がるから、その手間を与えずに働いてもらおうってのが冒険者ギルドの考えかもね。


 それはいいとして……。


「あの、上級冒険者専用のクエストって?」

「んと、文字通りなんだけど、実例で例えると7魔将の討伐クエストとかかな?」


「え?」

「あれ、知らない? 杉尾君は今回の水魔龍討伐メンバーに選出されてるよ。あ、ちなみにこの内容は昇給のお知らせと共にギルド掲示板に張り出されていたものね!」


「へ? えええええっ⁈」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?