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第13話 もう一人の7魔将

 そんな死闘のあった翌日、俺とギルド長は朝食後にいつもの【セカンドビーチ】の見回りにいつものかっこで出かける。


 で、俺は浜辺から海を眺めながら、昨日のデビルシャークの事などをギルド長に聞いて見ることにした。


「あの、昨日の海のモンスターってなんで襲ってくるんです?」

「うむ、いい質問だな。奴らは7魔将の1人、水魔龍エウムの配下達でね。ここいらの海岸地帯は不幸にも結界外なんで度々人間を襲いにやってくるわけさ」


(成程、という事はギルド長の事だ……)


「もしかしてギルド長が俺にサーフィンを教えている事と水魔龍エウムに何か関係している……とか?」


 でなければ、こんな好待遇こうたいぐう流石にないよな。


「ふふ、聡いな。そう、実は水魔龍エウムを倒すのに君に協力してほしくてね……?」

「……え? お、俺がですか⁉」


(正直、昨日のデビルシャークだけでもかなり危険を感じるので断りたいんですが……)


 でも、もう契約しちゃってるから断れないしな。


 ダークマギデ族とのコンパは絶対外したくないし……。


 仕方ない。


「あ、あの、相手はあの魔王の手先7魔将でしょ? 何か勝機はあるんでしょうか?」

「ああ当然ある! でだ、その鍵は君が握っているんだよ……」


 ギルド長はそう言うと俺の肩を力強く叩く。


「お、俺っ? い、一体どうすれば?」

「うん、私の言う事を聞いてこのまま鍛えて行けばいい! その証拠に体力も随分ついてきているだろう? 実際デビルシャークだって君が数匹倒したんだ。そう、君は間違いなく強くなっているのさ!」


「あ、た、確かに?」

「美味しい食事に規則正しい生活。……体力をとられる砂浜の移動、それにサーフィン! これらの行動で君の体は身体強化されてきているんだ」


(そ、そうだったのか! さ、流石ギルド長、遊びながら俺を鍛えてくれるなんて……)


 もしかしたらギルド長の事だから、他にも理由があるかもしれないけど?


「よし、ということでだ! このまま数か月間、君を色々鍛えるから覚悟するようにな!」

「は、はいっ!」


(まあ、こうなったら覚悟決めてやるしかないな!)


 幸い、周りにはギルド長やウィンフィルさん、レノアそしてギルドの皆がいるしな!


「では今日は、見回りとサーフィンだ!」


 という事で今日はみっ……ちりサーフィンを鍛えられる。


 で、翌日の朝食後。


「今日は南のセカンドの森に実践経験を積みに行く」

「ということで、今日は私もついて行くから」


 そんなわけで今日は、レノアのユニコーンに跨り、3人でセカンドの森へ行くことになった。


 当然、俺達の今日の装備は【風揺らぎシリーズ一式】だ。


 ギルド長は立派な装飾が入った、銀色の鎧一式と壁に掛けてあった装飾剣を背に担いでいる。


(……こうやって見るとギルド長はパラディンなんだけどね) 


 ちなみにウィンフィルさんは残念な事に他のギルドメン達とセカンドビーチ見回りの任務で居残りだ。


 数時間後、草原をある程度進んでいく。


 すると、真正面にうっそうと生い茂った木々がチラホラと見えてきた。


「ふむ、そろそろセカンドの森だな……」 


 俺達はギルド長の言葉に頷き、ユニコーンから素早く下馬する。


「そこで待っていてね!」


 ユニコーンはレノアの言葉と共に軽くいななく。


 で、俺達は枝葉をかきわけ、程なく前進していく。


 ……すると不思議な事に、周囲はまるで夕方になったかのように薄暗くなってくるではないか!


(こ、これは色々と怖いな……?)


「レノア……」

「分かってる!」


 レノアはギルド長の言葉と共に、何やら詠唱を始める!


「光の精霊よ、我が召喚に応じよ!」


 レノアの力ある言葉と共にぼんやりと光る、光の精霊が現れる。


「そのまま、私達のやや前方に……! そうそう」


 光の精霊はレノアの言葉通り、俺達のやや前方に位置し、暗がりを明るく照らしてくれる。


「おお、こいつは有難いね!」

「へへ、まあ定番だけど。ないと結構馬鹿にならないからね」


 レノアは俺の言葉にちょっと照れくさそうにしている。


「ほほう! 随分と嬉しそうだね? レノア?」

「そ、そんな事はないですよ?」


(……えっと、何やら口論が始まったんですが?)


「あ、そんな事より前方から何か来るって精霊が言っているわ!」

「……ふむ、この感じダークウルフか……」


「へ、ええっ⁉」


 と同時に素早く戦闘態勢に入る、ギルド長とレノア。


 俺も慌てて、ライトボーガンをリュックから取り出し、急いで矢を装填する。


 てか、俺には足音すら聞こえてこないのに、この2人感覚がちょっとおかくないか?


(こ、これが、レジェンドと上級冒険者達か……) 


 俺は改めて冒険者として2人との差を感じるのであった。

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