あれから数時間後……。
俺は冒険者ギルドの借り部屋に戻り、現在フカフカのベッドの上で横になっている状態だ。
(借り部屋とはいえ、宿屋以上の豪華客室状態で中々居心地はいい……)
ふと天井を見上げると、硝子製の豪華なシャンデリアが見えるし、二階にあるためかエメラルドグリーン色の海も見えるしで、眺めは最高の一言だ。
正直サーフィンは見た目に反して全身の筋肉を使うので、絶賛筋肉痛状態で俺はへとへとになっているわけです。
(パドルだけでも実質クロールと同じだし、そりゃね……?)
程よい疲れを感じながら、昼からの一日を俺は振り返ることにする。
で、ギルド長に数時間にかけて色んなサーフィンの技を教えて貰ったわけだけど。
だが実際にやって見ると、バランスを取るのがなかなか難しく、結果的に俺は小波にすら乗れずにいたのだ。
(流石にヘタレな俺でも悔しいので、明日には乗れるようになりたいかなと……)
俺は疲れから窓辺から聞こえる心地よい波音を聞きながら、静かに
……それから数週間たったある日……。
朝からギルドの接客部屋で豪華な食事を取った後……。
俺はギルド長達とサーフィンをしながら、その合間で『セカンドビーチ』の見回りをしていた。
正直ギルドメンバーがここいらにガードマンとして散在している関係か、治安はすこぶるいいので、もめ事は少ない。
早い話が空いた時間をサーフィンにつぎ込めるってことだ。
……お陰で俺のチャラ男道、もといサーフィンの腕はメキメキと上達していく。
ギルド長という優秀なチャラ男マスター、もといプロサーファーとしての指導者。
それに恵まれた食事に環境、そして素晴らしい報酬……。
(そりゃ俺でもメキメキ上達していくわな……。ということで、素敵コンパに向けてひたすら練習だっ、練習っ!)
俺はエメラルドグリーンの透き通った水面にサーフィン板を乗せ、慣れた手つきでパドルしていく。
そう、俺はお陰で小波なら普通に乗りこなせるようになったのだ!
白波で砂浜まで押し戻された俺の側にウィンフィルさんが駆け寄って来る。
「だいぶ慣れて上手くなってきたね!」
「え? ええまあ……」
にっこりと優しく笑みを浮かべるウィンフィルさん。
(おそらく体育会系だからか、スーパー爽やかだな……)
俺は海からあがり、砂浜にいるウィンフィルさんの元へ歩み寄る。
(正直、他にやる事無いしね……)
「ほら腕や足、それに腹筋も大分ついてきて逞しくなった!」
彼女は俺の腕を無造作に掴み、にこやかに笑う。
「あ……」
確かに自分でも気が付いていなかったけど、かなり体が締まってきている。
ストレスもないからか、何だか体が軽くなって来てるしね。
(気持ちも軽ければ、体も軽いって言うのかな?)
なんか雰囲気的に落ち着いてるので、俺は当初から聞きたかった事をウィンフィルさんから聞いて見る。
「あの……ギルド長ってウィンフィルさん、奥さんから見てどんな人なんですかね?」
「うーんそうね……? 立ち話もなんだし、ちょっとそこに座って話さない?」
俺は言われた通りに波が届かない砂浜まで移動し、ウィンフィルさんと一緒に座り込む。
「逆に……貴方から見てここ数週間でどんな人だと感じたの? ん?」
(そう返してきますか……。まあ、奥さんだしな……)
青い綺麗な瞳に見つめられ、俺は
「えっと、最初の印象は、その……真面目で威厳があるギルド長って感じでした」
俺は言葉を選びながら
「そうね……で?」
ウィンフィルさんは納得するように軽く頷きながら、続きを催促する。
「ここ数週間の感想は……その真面目だけど
「そ、そうね……。で、でっ、どんなところが?」
ウィンフィルさんは楽しそうにくすくすと笑いながら、再び催促する。
(ちょっと言いにくいけど、この人ならいいか? なんか話しやすいし、気が許せるしね)
「奥さんが7人もいたり、いきなり俺をサーフィンに誘ったり、夜はコンパの練習になるからといって……」
「うんうん……?」
(し、しまったっ! 夜の飲み屋の話はまずかったか?)
「まあ、話しても飲んで帰るだけでしょ?」
「あ、まあ……」
(おっしゃる通りで、俺も含め後は帰るだけなんだよな……。なんかコンパ前にいらんことしたくないしね)
なんだか相手のダークマギデ族のお姉さんが、何処かで見てそうな気もするしな。
あとさ、ダークマギデ族の働いている飲み屋が長期間閉まっているのも気になってはいるんだよね。
それはさておき、お陰様で成果? としてオートナンパスキルはレベル7になったけど……。
「で、でたぞっ! デ、デビルシャークだっ!」
その時、聞き慣れたギルド派遣メンバーの大声が聞こえて来る!
「えっ! デビルシャーク? ここって、結界でアクティブモンスターは来れないんじゃ?」
「海は別! 早い話、結界外よ! 行くわよっ!」
(ま、まじか……)
俺はその事実に驚きながらも、とりあえずウィンフィルさんについて行くのだった!