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第10話 人生のビッグウェーブ

「ふむ、私の言っている意味がよく理解出来ていないようだね?」


(ええ、全く意味がわかりません。流石に言葉には出来ないので黙ってますが……)


「そうだな、早い話が私の趣味に付き合ってくれればいいんだ」

「は、はあ……」


 成程、ただの見回りだと暇すぎるからギルド長の趣味の遊戯に付き合えばいいわけか……?


(これもチャラ男の試練というわけか? でもなあ……)


「……勿論、これは別枠の私個人の依頼になるので別報酬を出す」


 ギルド長は俺の乗り気のなさを察知したのか、俺の顔をひょいっと覗き込む。


「えっ! 本当ですか?」


 サーフィンはやったことないので正直乗り気ではなかったし……。


(これは有難いが、一体どんな追加報酬なんだろう?)


「単刀直入に言うとだね。ダークマギデ族で君に非常に興味ある子がいてね? で、良かったら彼女とのコンパの場を設けようと思うのだが? どうかね?」

「えっ! え? こ、コンパですか……⁉」


(し、しかも、例のダークマギデ族と……? マ、まじか!)


 ま、まあ、俺の好みはレノアが把握してるくさいから、ギルド長にそれを報告してるんだろうけど。


 これは非常に美味しい話であるし、正直もう金なんかどうでもいい状態である。


 だって俺のここの世界での目標は理想の彼女を作ることだから!


(来たよ! 人生一番のビッグウェーブ‼ これは当然乗るしかないっ!)


『①職業チャラ男スキルの内訳 【チャラ男の勘レベル7】にアップ! ???』


(ですよね! やっぱそう言う事なんだよ!)  


 ただ、気になるのは……。


「あ、あの? とても嬉しい話なんですが、その子は何処で俺を?」


 「コンパ攻略法として情報は多いに越したことは無い」と知人から聞いていた。


「ん? んー……そうだな私の屋敷に入ってからずっとだな?」


 白い顎鬚を片手でいじりながら、少し笑っているギルド長の様子が少し気になるが?


「そ、そうですか……」


(じ、じゃあ、ある程度屋敷内の何処かで俺の品定めをしていたってことか……?)


 「コンパは反省会が楽しい」そんな話を聞いたが、俺はなるべく負け戦はしたくないしな。


 今回の場合、ギルド長のお墨付きかつ、本人もある程度俺に気があるタイプみたいなんで勝率はかなり高めだ! この依頼引き受けるしかないだろう! うん!


「ギルド長っ! この依頼是非引き受けさせてください! この杉尾、粉骨砕身頑張らせていただきますっ!」

「そうかそうか……よしよし! では物は試しだ。早速やってみようか!」


「はいっ!」


 ギルド長は近くの海の家からお揃いの長めのサーフィンボードを複数取ってこちらに持ってくる。


(……ってあれ?)


 良く見たらギルド長の隣に、ナイスバディのオレンジ色のハイレグ姿のお姉さんも一緒についてくるではないか!


「紹介しよう! 私の妻の1人ウィンフィルだ」

「初めまして! セブン=ウィンフィルです! よろしくね!」


 こ、このギルド長の事だから、もう多少の事なら俺は驚かない。


「は、はい! よろしくお願いします!」


 ウィンフィルさんは赤色のショートヘアを片手で掻き分け俺に握手を求める。


 俺は彼女のブルーダイヤモンドのような目を見つめながら、握手をする。


(き、綺麗な人だな……)


 年は30前後の人族の女性の様だが……?


 特徴は焼けた褐色かっしょくの肌、それにえらい筋肉質だ。


「あの? ウィンフィルさんもご一緒にって事ですか?」

「そうだ、その方が色々と効率的だからね」


(あ、もしかして俺のやる気とかをアップさせるためかな? あ、まあ、既にやる気はマックスですが? 俺のやる気ゲージがリミットオーバーですよ⁉)


「ところで、君は水泳はしたことあるかね?」

「あ、ハイ水泳は数年習っていたので、クロールからバタフライまで使い分けて泳げますね」


「……ああ、それなら基本は体感で覚えてそうだな」

「あ、はい! ビートバンを使って練習していたんでそのサーフィンボードに浮力が必要な事とかは理解出来ます!」


「ふむ、じゃあ早速だが私の真似をしてついて来てくれ」

「はい!」


 ギルド長は満足げに深く頷いている。


「ウィンフィルはそこで待機し、周囲の安全の監視を頼む!」

「はーい!」


 早速だけど俺達は腰の高さ位まで海の中に入っていく。


「でだ、まずはサーフィンボードの上にうつ伏せに乗り、クロールの要領で海を漕いでいく。これがパドリングといってサーフィンの移動の基本だな。状況によって正座してパドリングもある」

「はい!」


 もやしっこの俺だが、水上での浮力は平等に働くので、何とか手でこいでいける。


(幸い飯もたらふく食ってエネルギーも満タンだしね!)


 横目でウィンフィルさんのいる方を見るとこちらに気が付いたのか手を振ってくれている。


 そのはずみで、豊かなものがたゆんたゆんしているのが、もうね?


(いやー、サーフィン楽しすぎないか?)


 俺、職業チャラ男で本当に良かったよ……。


 俺は初めて女神様に心の中で「ありがとう」のお礼を言う事になる。

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