それから数日後……。
シトシトと小雨が降る昼下がり、俺達はユニコーンの背に跨り海岸際をひたすら進んでいく。
雨が降っている関係か若干海の波が荒く、際に大きな波が激しく叩きつけられのが見れる。
ちなみにこの雨はレノアが召喚した水の精霊が対策してくれていたりする。
詳しく説明すると、水の精霊の力で雨水を操り『雨よけ効果』が発動し、俺達のいる場所だけ雨が振っていない状態になっているのだ。
流石はレノア、子供の様な見た目に反してダイヤモンドクラスの上級冒険者であり頼りになる。
……と、前方を良く見ると
「……あ、ほら! 灯台が見えてきたからもうすぐだよ!」
「ああ、確かに……。良く見ると遠目にうっすらと街並みらしきものが見えるな……」
なんか灰色の煙が上がって見えるしね。
多分昼飯用に何か焼いてるんだろうと思われるが……。
(や、やっとだ!)
俺は港町の上手い飯と宿にありつけると、ほっと胸を撫でおろす。
そう、あれから俺達はファースト平原を抜け、東寄りに進み海岸を見つけ、そのまま海岸線沿いを南下していった。
そんなこんなで数日間かけ、ここ港町セカンドに到着したのだ。
幸い故勇者ファーストの結界のお蔭で、アクティブモンスターは当然おらず道中は安全だった。
(例の件で軍資金は潤沢にあったし、野宿道具は田舎町で買いそろえていたしな)
俺は馬上から波うつ海岸を見て、悪天候の中、大木の間や大岩の隙間で野宿した日々を思いだした。
底冷えするしで、レノアなんか俺の腹をマクラして毎日寝ている始末。
(レノアよ、ワン公かお前は……?)
不覚にもこれらの行動が「ちょっと可愛いかな?」って思ってしまう俺がいますけどね?
それはさておき、しばらく野宿はもういいかな、うん。
現代っ子の俺はやっぱ、あったか宿屋生活がいいわ。
こうして俺達は通行証代わりになる冒険者ギルド章を門番に見せ、港町セカンドに無事辿り着くのであった。
「こっちこっち! 杉尾っ! こっちだよ!」
「あーハイハイ……! 分ったって!」
俺はレノアに手をグイグイ引っ張られ、町の真ん中にある宿屋に向かう。
港町セカンドの名前の由来はお察しなので省く。
で、ここは港町なので、歩いている道中に様々な魚の売り買いが盛んに行われている。
その為、海岸線沿いには大小様々な船が
(うん、丁度昼時だし、宿屋に行ったら真っ先に魚貝系のスパゲッティとスープを食したいな……)
新鮮でおいしそうな魚貝類を見てすっかり感化された俺は、そんな事を考えながら歩いて行く。
あ、そうそう! レノアに道中教えてもらった話では、ここに住まう有力者がギルド関係者らしい。
その関係か冒険者ギルドは町の真ん中に建てられているのが見えた。
冒険者ギルドは宿屋の真隣にあり、田舎町の小さな建物とは違い屋敷のように大きい。
そんな事を考えている最中に、木づくり2階建ての宿屋が真正面に見えてきた。
「あ、ちなみに昼飯は宿屋で食べないからね?」
「は? 何でだよ? 俺腹ペコペコなんだけど?」
「それなんだけどさ、美味しい港町の料理を前金替わりでたらふく食べさせてもらえると言ったら?」
「……む?」
港町の美味しい料理をたらふくか……。
魅力的な言葉だ。
が、しかしだな、俺にはとても崇高な目的があるのだ!
俺の思惑を知っているのか、勘がいいだけなのか、続けてレノアはとんでもない事を言い放つ。
「ここのギルド長は色んな場所に顔が利いてね……? きっと杉尾が理想とするお店も紹介してくれると思うよ?」
「……ッ! ……さ、レノアさんお腹も空いたし、サクッとギルド長を
『①職業チャラ男スキルの内訳 【チャラ男の勘レベル6】にアップ! ???』
『①職業チャラ男スキルの内訳 【チャラ男スタイルレベル6】チャラ男道に少し近づく』
(ダブルスキルアップ⁉ ……えっと? これ今までにない反応なんですけど?)
チャラ男の勘は正直何に反応しているか分らん。
が、俺の長年のゲーム経験により重要な分岐点っぽいな?
(うーん? ちょっと、スキルが上がった条件を整理整頓してみようか)
えっとまとめてみると、チャラ男の勘が今まで反応したのが、①レノア②ダークマギデ族。
そして、③俺の理想のお店で3つだな。
②ダークマギデ族③俺の理想のお店はほぼ同義語なんで察しだけど?
①レノアがよくわからん……。
こいつマギデ族系統とは明らかに違う種族だろ? 小さいし、コロポックルとかそっち系だろ。
(あ、もしかしてダークマギデ族に関する何かという意味では共通しているかも。俺の理想のお店を探すツテに繋がったし! きっとそれだよ、うんうん!)
それは置いておいて、チャラ男道から光属性が消えたんですが?
(……ま、まあ、ねえ? ほら俺普通の人間だから、仕方ないよね?)
何はともあれ、宿屋の支払い等をレノアに任せ俺は宿屋の外で待つ。
「じゃ、行こうか!」
「……御意っ!」
俺は自身の胸に手を当て、外に出て来たレノアに敬礼をする。
てなわけで、俺達は冒険者ギルドに向かうことになったのである。