ーー同時刻 『angel本部』ーー
オフィスに尋常ではない数のSPYが傾れ込んできていた。扉の前で烈火が敵を食い止めているが、あまり以前状況が悪いことに変わりはなかった。
「烈火ぁ!あと何分耐えられる!?」
「持っても五分ってところか・・・。あと俺はレッドだぜ!グググッ・・・!」
2人が会話を交わしているうちにも少しずつ烈火が押され、部屋にSPYが入ってくる。
「うるさいなぁ!僕が五分で秘密兵器を持ってくるから君はそれまでそこで敵を足止めしといてくれ!」
「任せろ!味方のピンチを救ってこそのヒーローだぜ!」
博士が足早にangel最奥の研究室に向かう。その後ろ姿を見ながら烈火は気合を入れ直す。
「普段全然運動しないあいつが俺のために走ってくれてるんだ!俺も期待に応えないと合わせる顔がないぜ!うおおおおお!!!!!」
烈火がSPYの津波を少し押し返す。少し押し返したと思えばまた押され、今度こそ押し返したと思ってもまた押される。そんなことを続けていると何か、いつもと違う感触を烈火は津波の中に感じた。
「これはっ!やばいぜ!」
烈火が全力で横に避けると今まで抑え込められていたSPYたちがオフィスに傾れ込んでくる。瞬間、SPY達のちょうど中心ぐらいで大きな爆発が起こった。その爆発でつい先ほどまで烈火が踏ん張っていた地点の地面も消し飛んだ。烈火がまだ生き残っていたSPY達の集団で違和感を覚えた人物を見つけ出そうとするとSPYの中でも一際目立った真紅の服を着た男を見つけた。
「お前だな?自分の部下もろとも爆破したサイコパス野郎は!」
「俺やけどぉ?えへぇ。何が悪いん?」
「お前と部下の間には絆がなかったのかよ!」
「キズなぁ?そんなもんあるわけないやん。部下は道具です〜。」
「・・・決めた!お前は絶対にここで殺す!絶対だ!」
「殺せるといいですね〜。赤髪の坊ちゃん♪」
「お前を止められるのは俺だけだ!『兵装装着』!」
烈火が天に手を掲げながらそう叫ぶと研究室の方向から複数隊のドローンが飛んできて劣化の周りに浮遊した。そのドローンが急に変形し始めたかと思えばそのドローン達が烈火の体にくっつき、一つの鎧と化した。
「これが俺の秘策!
「ただちょっと頑丈な機械身に纏っとるだけやん。なんでそないなもんで威張れるんかお姉ぇさんようわからんわ〜。」
「フッ!そんなこと言ってられるのも今のうちだけだぜ!お前のド舌を抜いてやる!」
「それ言うんやったら度肝じゃなくて?」
「先手必勝!」
烈火が全景の構えをとった瞬間足につけられていたドローンのエンジンに火がつき、とてつもないスピードで飛び蹴りをかました。それを食らったSPYは壁まで吹き飛び、めり込んだ。
「ば、バカみたいな火力してるねぇ。ソンアン使えるんやったらほんまもんのバカかもねぇ。」
「バカで何が悪い!最後に勝てばいいんだぜ!」
足についているブースターでそのままスライド走法を行い、SPYの近くまできた烈火は腕にもついているブースターを使い、人間のものとは思えないスピードでパンチを繰り出した。なんとか体を捩ってSPYは攻撃を避けたものの、先ほどまで自分がいた壁を見ると人間が四人入れるくらいの大きな穴ができており、風圧でその後ろの壁3枚まで穴が空いていた。
「嘘やろ。んなバカな。」
「レッドォ!パンチィ!」
そんな1発でも当たれば即死級の攻撃を烈火は普通のジャブぐらいの感覚で撃ってくる。もちろんSPYは避けることができないので全てを間一髪のところで避ける。そもそものスピードがイカれているので避けるのでも手一杯だった。
「避けてるだけじゃ勝てないぜ!」
「バッ、なら少しでもッッ!避けれる隙をッッッ!?くれへんかなぁ!」
「無理だぜ!隙を敵に上げるほど心は広くないぜ!」
「いかれてる・・・。けど馬鹿で助かったわぁ!」
「何言って
烈火がふと足元を見てみるとなぜか蜘蛛がいた。ここはビルの13階。戦闘の途中で登ってきたとは考えにくい。しかし元々蜘蛛がいたといえばここはアサシン組織、蜘蛛の一匹もいない。烈火は急いで蜘蛛を踏み潰す。踏み潰された瞬間蜘蛛が大爆発を起こし、今度は烈火が壁まで吹き飛ばされた。
「グオッ!な、なんなんだぜ・・・。」
「蜘蛛型爆弾。わからんかなぁ?蜘蛛さん型の爆弾でちゅよ〜?」
「わかったぜ!わかりやすい説明ありがとう!」
「・・・はぁ。気分狂うわ〜。じゃあ死んでもろて。」
SPYの服の袖を見ると大量に先ほどと全く同じ形の蜘蛛が降り、その蜘蛛の大群が一斉に烈火の方に向かって進行してくる。それを見て烈火は笑いながら腕についてきた火炎放射器でその蜘蛛を焼き始めた。蜘蛛は火に触れた瞬間大きな爆発を起こし、ちょうどSPYと烈火の中心ぐらいで爆発を起こした。
「な、何バカなことしてんのや!」
「これで全部無くなったな。男ならタイマンだ!」
(あ、あかんやつやこれ。殺される。)
「しかしお前も一応最強の手を見せてくれたはずだよな。じゃあ俺も必殺技を出すぜ!」
烈火が再び天に腕を掲げるとその腕に全身のよりが集中していき、超巨大な一つの拳へと変貌していった。それを構え体を大きく捻りながら力を溜め始める。どんどん拳についているドローンのエンジン音が大きくなっていき、拳から蒸気も発せられるようになった。
「何バカな好き晒してんの?君もそこまでバカやったとは思わんかったわぁ!」
SPYがチャージ途中の烈火に攻撃しようとするが、謎のバリアによって防がれてしまった。
「嘘や!こんなバリアなんて創作物上の魔法!現実世界にあるわけないやん!まさか!政府はもうこんなとことまで技術レベルが上がって!」
「知らなかったのか?ヒーロのチャージ中に攻撃するのは御法度なんだぜ?」
チャージを完了した烈火が大きくSPYに対して歩みを進める。一歩、二歩、歩くたびに地面が大きく揺れる。絶望が近づいてくるのがわかる。
「い、いや。やめて。ごめん!わるかt
「『ハイパーメガビックバンレッドブレイク』!!」
大きな拳がSPYの体、全身の骨を折りながら大きく振り回される。遠心力でSPYを空中で5回転ほどさせた後にそのまま振り切って地面に叩きつける。どんどん地面を貫通させていき、やがて見えなくなるとレッドはドローンを全身に分散させ、残っているSPYたちを見つめた。
「お前達のボスは俺が倒した!これ以上は不要な争いだぜ!」
「あ、あぁ。」
「そうだ。大人しく床にでも座ってろ。」
「あ、あ、う、後ろ。」
「あぁ?後ろがなんだ
「絶版。」
ーーーーーーーー
「はぁ、はぁ!やっと完成したぞ!烈火に新しく装着させるための特殊装甲兵装!これであとは残りのSPYを全滅させるだけ!はぁ、はぁ!」
周りに新しいドローンを浮かばせて、自分は全力疾走で廊下を走っている博士は廊下の途中で大きな爆発音を聞いた。それが起きた瞬間地面が大きく揺れ、壁が少し凹んだ。
「れ、烈火が戦闘してるのかな?じゃ、じゃあ今頃もう終わってる?い、急がなきゃ・・!烈火に僕のいいところを見せる大作戦が!」
博士は急いだ。オフィスへと通じる曲がり角を曲がり、ドアを開けた瞬間目に飛び込んできたのは全ての特殊兵装が破壊され、真っ白なスーツを着た男に首を掴まれてもがいている烈火だった。
「れ、烈火君?」
「あ、がががっ・・・うぁぁ。」
バタバタと足をばたつかせているが、男の手が動く気配は全くなく、男はただにこやかな表情で烈火の顔を見つめていた。
「私も特撮好きなんだよね〜。仮面ライダーとか。スーパー戦隊好きでしょ?君。」
「れ、烈火君を離して!ドローン!」
博士の周りを浮かんでいたドローンが烈火の体に装着されようとしたが、その前に全て男の射撃で撃ち抜かれて爆発した。男は射的に勝ったかのような健やかな表情をしていたが、博士は逆だった。
「え?だってあのドローンは最高峰の素材を使ってて烈火の力にも耐えられるように?」
「あ、そうなの?もうちょっと強度強くした方がいいんじゃない?とりあえず彼殺しておくね?」
「や、やめてください。お願いします。なんでもします。烈火君を助けてください。」
「えぇ?女の子に頭まで下げられちゃったらお願い聞くしかないなぁ。」
男が博士をニコニコ見ながら、烈火をそのまま地面に落とし、博士の方に駆けて行く。博士の近くまで行くと腰に手を回しお姫様抱っこをする。
「ね?じゃあ今日から君は俺のお姫様だ!」
「はい。わかりました。命だけは助けてください。」
「殺さないって〜。そもそも君が目的だったし。」
「はいすいません。」
「あれ?壊れちゃった?まいっか。この子の頭さえあれば本来は良かったし。ま、体もいい感じじゃない?じゃ、おさらばするか。」
男が窓から逃げようとすると、烈火が男の足を掴んでなんとか博士を取り返そうとする。
「はガゼを・・がえぜ。」
「無理〜!今日からこの子は俺の婚約者〜!」
「やめでぐれ・・・。」
「あ、もしかしてこの娘のこと好きだった?乙!残念でした!」
「あ、あぁ!」
男は簡単に烈火の腕を振り解くとそのまま窓から飛び降りると同時にドローンが飛んできて体を支え、遠くに飛んでいった。