(なんで取り外し式の爆弾にした?そもそも奴らの科学力なら対象者が絶命すれば死亡するなんてことも簡単にできたはずだ。)
「先輩?先〜輩?」
(何か見落としてる部分があるはず。そもそもなんでついさっきの侍は不意打ちせずに真正面から私に挑んできた?奴らはSPYであってアサシンじゃない。基本的な戦闘の型は不意打ちのはず。)
「せ!ん!ぱ!い!大丈夫ですか!」
(すぐに爆発させては何か都合が悪かった?なんで?私たちをすぐに仕留められるなら何も都合は悪くない。私が簡単に爆弾に対処できることを知っていた?まさか・・・油断を狙った?)
「先輩!上!」
闇乃が上を向くと空中に男がいた。男は闇乃目掛けて刀を振り下ろして入り、闇乃は持っていたナイフを相手と自分の間に挟み込み、攻撃を受け止めようとした。結果、ナイフはひしゃげてしまったが相手からの攻撃は完全に防ぐことができた。
「完全な不意打ちのつもりだったんだが。やっぱり化け物か。」
「誰ですか?言わなくてもわかってます。どうせSPYでしょう?」
「正解。ちなみに追加で言っといてやろう。お前は完全に包囲されている。」
男が合図をすると周りの建物、路地などからゾロゾロと黒いスーツを着た人間が出てきた。その服装は完全に統一されており、闇乃が今までに殺してきたスパイと全く同じもだった。しかしそんな中で1人だけ血液のような真紅の色のスーツを着ている女がいた。その髪は白く染まっており、どうしても彼女の存在がこの場で浮いていた。
「どうしても彼女がお前が死ぬ前に会いたいというのでまだ殺さないでおいてやろう。」
「まるで私が殺されるみたいない言い方ですね。」
「確かにアンタは四国支部を全滅させた。しかし四国支部には幹部クラスがいなかった。」
「まるで幹部が今いるみたいな言い方ですね?」
「このお方が我々スパイ組織『フォールヘブン』幹部の『サキメ』様だ。」
「サキメで〜す。強い奴がいるっていうのできました〜!」
サキメを名乗る少女は闇乃の目の前まで来ると背中に背負っていたリュックから刀を抜き出した。その刀の刀身もシンクに染まっており、なぜか禍々しく感じた。
「厨二病ですか?刀にペイントって。」
「言ってくれるね〜。いいよ?サキメそういう子好き。」
するとサキメが刀を鞘に戻し、刀を抜刀する姿勢で力を込める。瞬間闇乃のセンサーが異常な反応を示し、闇乃はすぐさま地面に伏せた。
瞬間。闇乃のすぐ後ろにあった車が横に両断された。しかしサキメと車との距離は少なくとも十数メートルはあった。
「ッ・・・!化け物ですか。」
「化け物じゃね〜よ?サキメは殺し合いが大好きな少女です!」
サキメが闇乃に対して刀で切り掛かる。闇乃はこれを回避し、すぐさま距離をとってピストルを発砲する。サキメはこれを簡単に切り伏せ、そのまま闇乃と距離を詰める。闇乃はひしゃげたナイフの取手の部分で一瞬だけ刀をとめ、そのままの勢いでサキメの腹を蹴り抜いた。サキメは少し後ろに後退したが、特にダメージを負っている様子はなかった。
「つよ。」
「意外と弱いですねブラックさ〜ん!」
サキメは闇乃をおちょくる様に攻撃の間に刀を使わずにあえて蹴りを入れるなど隙を晒してきた。闇乃はなんとか攻撃を避けながらそんな攻撃の隙を狙って反撃しようとしたが、サキメの攻撃が激しすぎて隙があってもそれに対応している暇がない。
「っ・・・理不尽じゃないですかねぇ?私刀持ってないんですけど?」
「持たせるわけないじゃん。サキメが遊んであげてるから生きてるだけで本来だったらもう死んでるんだよ?」
「隙あり。」
会話の途中でピストルを至近距離で発砲してみたが、それも攻撃の間に挟む刀の移動で弾かれる。
違和感。
(今私が撃つ前に反応してなかった?)
闇乃はこのままでは勝てないと判断し、サキメの隙を見て車の方に走り出した。
「後輩くん!銃!」
「わ、わかりました!」
「渡させないよ!」
闇乃と同じ、いやそれ以上のスピードでサキメが追いかけてくる。闇乃は一か八かでサキメの足止め目的でノールックで後ろに銃弾を撃ちまくる。これが意外にも有効だったのか、サキメは少しその場で立ち止まり、銃弾を避けた。その隙に後輩がいる両断された車まで戻り、一丁のボルトアクションを受け取った。それと同時に車の荷台を確認してみるが、持ってきていた予備の武器の半分以上がダメになっていた。その中でもなんとか使えそうなボルトアクションを手に取り、遠くからサキメに呼びかける。
「サキメさん!わかりましたよあなたの弱点!」
「・・・ハッタリはやめてもらっていいですか〜?サキメに弱点なんてあるわけないじゃないですか〜!」
「目!目を見てると相手の動きの予測ができるんじゃないですか?」
「え、なんで?ナ、なんでアンタがそれを知ってるの!」
「先ほど私が近距離か撃った弾丸は簡単に切れたのになんで中距離の弾丸は切れなかったんですか〜?」
「そ、それは中距離と近距離では風の動きとかも違うし!」
「最初1発私中距離か打ちましたけど。普通に反応してましたよね?」
「そ、それがどうしたのよ!アンタは目を閉じながら戦えるっていうの!」
「戦えます。」
「は、はぁ?」
「しかしそれだと圧勝してつまらないので普通に戦いますがね!」
闇乃が両手に構えている二丁のボルトアクションでサキメのことを狙撃する。サキメは動揺しているのか弾丸は二つ切れたのだが、そのうちのかけらの一つが足に突き刺さった。
「いたっ!落ち着きなさい、落ち着きなさい!いつも通りやるだけよ。」
(ボルトアクションを普通に防いだ。つまりあの刀も普通じゃないですね。刀を破壊するのは無理そうか。)
闇乃はそのままサキメに走って近づいていく。サキメは再び最初に見せた抜刀の構えをとる。
サキメの抜刀術『神斬』。サキメが自らの先読みの技術と剣術を掛け合わせてできた最高奥義。シンプルにとてつもない威力の斬撃、それに合わせて彼女の先読みも合わせて相手の進行方向に向けて抜刀を行うことで必中の技に昇華させた。
「今度はしゃがむだけじゃ避けらんないわよ!『神・・・。!?」
「流石にその威力の攻撃をここまでずらすことは不可能でしょう。」
サキメが抜刀した瞬間、闇乃はそこら辺の電柱ほどの大きな跳躍を見せた。サキメの抜刀は空をきり、サキメの体制が崩れた。サキメの『神斬』はとてつもないスピードの抜刀術が故に空振りをすると体制を崩すという弱点が存在した。もちろんそんな弱点を闇乃が知っていたというわけではなく完全にたまたまなのだがそれでも闇乃は完全に圧倒的有利な状況を作り出した。
このままサキメにボルトアクションを放てば簡単に終わるだろう。
「サキメさん!あなたには情報をはいてもらいます!捕獲します!」
「え、ちょまt
闇乃はそのままサキメ目掛けて落下していき、サキメの頭目掛けてドロップキックした。サキメはその強烈な一撃で意識が飛び、その場に気絶した。周りで見ていたSPYはその状況に絶句していた。そんな中1人の男、一番最初に闇乃に切り掛かった男が話しかけてきた。
「さ、サキメ様をどうすr パァンッ
男が近づいてきた瞬間一切の躊躇もなく男の頭を撃ち抜いた。男はその場で死体になり、他のSPYはその状況に絶望した。
「普通に考えて自分を殺そうとしてきた相手を逃すわけないよね?」
「に、にげr パァンッ パァンッ
「殲滅だ。」
その後スパイを全滅させた闇乃と後輩は2人で一旦angel本社に戻ることにした。
本社の近くまで戻るとangelの建物の方から叫び声や悲鳴などの様々な声が聞こえてきた。よくみると全面ガラス張りだったエントランスのガラスが全て破壊されており、中に何人か武装した人物が見張りをしていた。
「ど、どうなってるんですか?」
「ぼ、僕が聞きたいですよ先輩!」
「じゃあ俺がお前らに事情を説明してやるゼェ!」
「「か、鍵山!」」