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第3話 「SPYとアサシン」

「お前の因縁の相手の『スパイ』の1人に暗殺依頼が出ている。」


善野が闇乃にそう告げると闇乃は誰が見てもわかるほどに嫌そうな顔をして善野から標的の資料を受け取る。その場にいた後輩でさえ周りの雰囲気が少しピリついたのがわかった。


「せ、先輩!なんでそんなに不機嫌ですか!先輩の大好きな仕事ですよ!?」


「仕事が好きっていつ言ったの・・・。スパイか〜。スパイか〜。ハァ〜。」


「そうため息つくなって。確かに前の一件はお前の心に響いたかもしれないけどなぁ。これも一応仕事なんだよ。」


「この前の一件?社長、そもそもスパイってなんあんですか!」


「おま、それもしらねぇでこの会社入ったの?」


前のはため息をつきながら後輩に『スパイ』についての説明を始める。


SPY。基本的にスパイというとアメリカや外国などの映画をイメージする人が多いだろう。特殊な器具や道具を使い標的を抹殺する。有名なものだと先に記憶処理装置がついており、見たものの都合のいいところの記憶だけケスといたものが映画では紹介されている。しかし現実世界のスパイはそんなものではない。

SPY。正式名称は『非正規超常的戦力組織』であり、政府からの承認を受けていないのにもかかわらずアサシンと同じだけの技術力を有しており、上位のスパイは上位のアサシンとも互角に渡り合える。


「え、僕たちの技術力は国家が有している特殊技術の応用ですよね?なんでアサシンが国家レベルの技術力を持ってるんですか?」


「それがわからないから現在国はスパイの処分に対して強気になれていない。もしかすると俺たちアサシンが全滅してスパイの国は滅ぼされる可能性だってある。」


「そ、そうなんですね。では先輩のこの前の一件とは?」


「・・・昔のこいつの相棒がスパイとの戦闘で殺された。」


「殺された!?アサシンがですか!?」


「あぁ。だから言っただろ?スパイの戦闘力はアサシンに匹敵する。」


「そ、そのあと先輩はどうしたんですか!?」


「その場にいたスパイ全員を惨殺したのちスパイの四国支部を全壊させた。」


「はぁ」


一瞬時が止まる。それと同時に後輩の頭がフル回転を始める。先ほどスパイの戦闘能力はアサシンに匹敵すると言っていたがそれほどの実力者の集団の支部を壊滅させた。先ほどの分のスパイをアサシンに置き換えるとどれだけすごいことをしているか分かった。


「せ、先輩ってそんなに強いんですか?」


「もともとこいつは強かったがそれでもこの組織のTOP5には入ってなかった。その件があった時期に急激に戦闘力を上げ気づいたらこの組織のTOP二だ。」


「昔の話はいいでしょう社長。引き受けます。」


「了解した。詳しい資料は後輩くんのパソコンに送信する。あと闇乃。無理だけはするな。」


「別にしてないです。それでは。」


必要最低限の会話だけ済ませると闇乃はすぐに自室に入って行った。その後を追うようにすぐに後輩も部屋に入っていった。2人の後ろ姿を見て善野は何か懐かしいものを感じていた。


「お前が子供だった頃もあんな感じで鍵山とも仲良かったんだけどなぁ・・・。」



後輩のパソコンに届いた情報だと今回国から暗殺いらが来ているスパイは「狩山」という名前のスパイとその部下。どうやらこのスパイのせいで国の重要な情報が盗まれ、国営に多大なる損害が及ぼされたらしい。さらに情報を盗まれる時に国直属のアサシンを数人殺していったので今回暗殺依頼が出ているらしい。そしてその狩山が今回定期的に部下と集会をひりあており、そのビルの位置を特定できたらしい。早速闇乃はそのビルの向かいのビルに車を走らせる。


「先輩、なんでわざわざ反対のビルなんですか?」


「反対のビルから狙撃した方が確実に殺せるから。もし接近戦闘が得意な相手だったら勝てはするだろうけどめんどくさい。」


「なるほど。・・・で、なんで先輩はボルトアクションを二丁持ってるんですか?」


車を運転する後輩の真横の助手席で闇乃はボルトアクションスナイパーライフルを二丁かちゃかちゃしながら暇を潰していた。質問をされた闇乃はさも当然かのように言い放った。


「え、二丁持ちで使うからだけど。」


「は?スナイパーを二丁持ちですか!?」


「そうそう。私のボルトアクションちょっと特殊でね?私が使うとリロードに秒もかからないから二丁持ちでも十分使えるんだ。」


「スナイパーを片手で打って軸と被れないんですか?」


「全く?」


運転中の後輩は真横にいる化け物に対して少し引き気味で会話を続ける。こうして2人が少しの間会話をしていると目的のビルにつき、2人はエレベーターで最上階まで登る。最上階から屋上への扉を開け屋上に着くと闇乃は立ったままで二丁のスナイパーライフルを構えて標的の狩山を狙う。


「し、しかもたったまま狙うんですか!?」


「うん。そっちの方がやりやすいんだよ。」


闇乃と後輩が10分ほどそのままの体制で待機していると向かいのビルの会議室のような場所に狩山が入ってくる。狩山は部屋に入るとまず壁にかけてあるカーテンを閉めたが、そこは後輩の出番。部屋にあるカメラをハッキングして室内の映像を映し出す。部屋の映像には狩山と他三人ほどの人物が確認できた。狩山は部屋に備え付けのホワイトボードがあるのにもかかわらず持ってきたパソコンで部下と思わしき人物たちと何か話し合いを進めている。


「先輩!映像だけで本当に狙撃できるんですか!?」


「できる。舐めんな!これでも国お抱えのTOP2アサシンだぞ!」


闇乃が引き金を引くと瞬間同時に二つの銃弾が隣のビルの会議室に向けて発射される。サープレッサーをつけているので音はならないがかなりの衝撃で銃弾が飛んでいったことが近くにいた後輩にはわかる。そして銃弾を撃った瞬間ボルトアクションを手から離し空中に浮いている瞬間に一瞬で弾を装填し、もう一度射撃を行う。監視カメラの映像を見ると部屋は赤い血で濡れており、そこには横たわっている4人の死体が転がっている。    はずだった。

何故か狩山がその場に立っていた。狩山はこちらの存在に気がつくとすぐに監視カメラを破壊し、こちらの視線を切った。こなった以上闇乃たちは狩山を見つけるの時間がかかるが狩山は2人が屋上にいるという情報がわかっているためこちらが不利になってしまう。


「まずった。逃げるよ!」


「わ、分かりました。」


2人が屋上から出るために扉に手をかけるとそこに狩山が立っていた。後輩はパソコンで狩山に殴りかかるが狩山は簡単に後輩の攻撃を防ぐと後輩を壁に叩きつけた。後輩はその一撃をもろにくらい、壁に叩きつけられたまま、その場で気絶した。狩山が後輩にとどめを刺そうとしたところで闇乃が間に割って入り、狩山を蹴飛ばした。狩山は屋上のフェンスまで吹き飛ばされ、すぐに銃を構えて体制を立て直した。


「誰だお前たちは。俺の部下になんの恨みがある。」


「勘悪すぎませんか〜?頭に脳みそ詰まってます?」


「誰だと聞いている。」


「貴方たちを殺しにきたアサシンで〜す。」


「アサシン!?まさか居場所が特定されたのか!?」


「その通り。わかったら国のために死んでください。」


しかしそんな大口を叩いているが側から見ると状況は完全に狩山に有利だった。闇乃は後輩を助けるために早く走るためボルトアクションをその場に置いてきている。そしてそのボルトアクションは狩山の近くにある。闇乃は腰のショルダーからナイフを取り出すとそれを構える。狩山が自分お近くに落ちていたボルトアクションを拾い上げ、それを眺める。


「良い銃だ。手入れが隅々まで届いている。」


「そりゃ手入れはちゃんとしてますからね。仕事道具を雑に扱う奴は二流ですよ。」


「だがそんな良銃でさえ扱うものがお前のような凡人では扱いきれまい。やはり私のような一流が扱わねば意味がない。そうろうっ!!」


狩山がボルトアクションを1発闇乃に対して発砲する。その銃弾の軌道は一直線に闇乃の頭を狙っており、その正確さはさすが『SPY』だとしか言いようがなかった。


「だから軌道が読みやすいんですよッッ!」


ガギンッと大きな音を立てて狩山が放った銃弾が闇乃が構えたナイフによって一刀両断される。両断された銃弾は闇乃に当たることはなくそこら辺の床に落ちた。狩山は信じられないようなものを見るような目で闇乃のことを見る。実際それほどのことを彼女はやってのけた。


「自分が使ってる銃の対策をしないほどお宅の会社はバカばっかなんですか?」


「ほ、ほざけぇ!」


今度は狩山が持っていたピストルを闇乃に向かって乱射する。その軌道ももちろん正確で、一直線に闇乃の体の大事な部分を狙っていた。よく言えば正確。悪く言えば単調。闇乃は簡単にナイフで銃弾を切り飛ばす。


「単調。簡単。くだらない。これならまだ子供が撃つ予測不能な攻撃の方が避けるのは難しいですよ。」


「く、くるなぁ!くるなくるなくるなぁ!」


「いいえ。近づきます。そして、これで終わりです。」


闇乃は狩山の目の前まで近づく。最後の力を振り絞って狩山がほとんどゼロ距離で射撃するがそれも闇乃のナイフによって断ち切られる。すると全て諦めたかのように狩山はその場に座り込み、ため息を漏らした。


「ダメだったか。私は。」


「後悔ならSPYなんかになった自分を恨んでください。」


「あぁ。佐々木、真咲、井川今行くよ。」


瞬間狩山は闇乃に頭を真っ二つに切り裂かれて死亡した。その後闇乃はドアの近くで気絶している後輩を回収すると車に乗り込み『angel』本社に向かう。その途中で後輩の目が覚めた。


「せ、先輩!狩山は!」


「殺したよ。そんな強くなかった。」


「そ、そうですか・・・。ありがとうございました。」


「いやいや。感謝されることなんてしてないよ。仕事しただけだし。」


「それでも、ありがとうございました!」


「感謝するぐらいだったらもうちょっとつよくなってね〜。」


「は、はい。」


闇乃は薄々感じていた。明らかに後輩は戦闘向けのアサシンではない。アサシンの中にも戦闘だけではなく、情報収集などに長けている映画のスパイのようなアサシンもいる。闇乃は戦闘能力に全ブッパしている超脳筋タイプのアサシンだ。もちろん彼女には戦闘系の依頼が多くくる。そんな闇乃の相棒になぜ善野は後輩を選んだのかが闇乃にはわからなかった。とりあえず闇乃は依頼完了の報告をするために運転しながらスマホで善野に電話をかける。


「社長、狩山殺害完了しました。。けど後輩がちょっと負傷しました。」


『そうか、怪我の具合は?』


「気絶しただけ。多分骨とかはどこも痛めてない。」


『わかった。一応医務室にだけはよっとけ。』


「了解。・・・もう一ついいですか?」


『なんだ?』


「なんで私の新しいパートナーに後輩を選んだんですか。もう少し戦闘力が高い人を相棒にした方が依頼も達成しやすいですし、そもそも新しいパートナーをつけた理由は鍵山派からの刺客から私を守るためですよね?後輩が刺客から私を守れるとは思えないんですけど・・・。」


『あ〜。いずれわかる。・・・多分きっとおそらく。』


「んな!そんなんじゃ納得いきませんって!」


『お前がそこまで言うのは後輩くんを失うのが怖いからか?』


「そうですよ。それの何がいけないんですか!」


後輩、もとい相棒を一度失ったことがある闇乃には分かっている。いかにそれが仕事上仕方がないことだったとしても割り切れないこともある。


『安心しろ。後輩くんは必ず死ぬことはない。まぁ、強いってわけではないんだが。とにかく!これは業務命令だ。死ぬことはないから安心しろ!』


すると一方的に善野が電話を切った。闇乃は少し機嫌を悪そうにアクセルを強く踏む。後ろの席から心配そうに顔を覗かせる。


「せ、先輩。大丈夫ですか?」


「ん?全然大丈夫だけど?」 ピキッピキッ


「絶対大丈夫じゃないですよね・・・。」


「ん〜〜〜。はい!切り替えた!こっからも一緒に頑張ろっか。」


闇乃が後輩くんの方に少し振り向くと車の後ろに人が立っていた。それに関しては都会ではよくあることだ。車道に飛び出る馬鹿はよくいる。ただ一つおかしい点があった。何故か車をかなりのスピードで走らせているのにも関わらず後ろの男との距離が一向に変わらない。むしろ少しずつ近づいてきている。


「後輩くん!しゃがんで!」


後輩に指示を出し、闇乃も運転席で頭を抱えてしゃがんだ瞬間車が横に一刀両断されており、天井が横の壁にめり込んでいた。


「誰だ!・・・鍵山さん?」


「よぉ、久しぶりぃ〜。闇乃ちゃぁん〜。」


「やめてください。今から後輩くんを本社の医務室に連れて行くところなので。」


「そっか、じゃあ俺が運んどいてやるよ。なんたって今ここで闇乃ぉ。お前は死ぬんだからなぁ。」







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