闇乃と後輩は会社支給のタブレットで標的の情報を確認しながら車を走らせる。今回『angel』に暗殺依頼が来たのは『多田 日糸』。最近テレビなどに出ているほど有名な大量殺人犯だ。現在警察が追っているがなかなか足取りがつかめずに操作が難航しているというところまでが「世間」が知っている情報だ。
「後輩くん。新しい標的についての情報は?」
「えぇ〜と。どうやら彼は最近一つのビジネスホテルだけを利用しており、そこを出待ちすればおそらく簡単に殺せるそうです!」
「違う違う、そうじゃなくて。強さ。そこまでわかってんだから警察が捕まえられない理由は別にあると思だけど?」
「あ〜、はい!標的の戦闘能力についてですが、警察の特殊部隊が容疑者の確保に向かったそうですが全員惨殺され近くの交番に全員分の死体が置かれていたそうです。」
「なるほど。その実力は一歩こっちの世界に入っちゃってるね。警察が捕まえられないのも納得だ。」
「せ、先輩でも戦って勝てなかったりするんですか!?」
「バカ言っちゃいけないよ。私は「一歩」入ってるって言ったんだよ?私みたいにずっぷり使っちゃってるアサシンには流石に手も足も出ないと思うよ・・・。」
闇乃は愛想笑いを浮かべながら標的が頻繁に使用していると言った情報があるビジネスホテルへと車を走らせる。
ビジネスホテルに着くと闇乃と後輩は車から降りエントランスに入る。受付のおばあちゃんにお金を支払うと2人用の部屋に入った。
「こっからは後輩くんの出番だよ〜。」
闇乃が支持をすると後輩くんが背中にかけていたリュックサックからパソコンを取り出し、タイピングを始める。2分ほどタイピングを続けると後輩は顔をあげ、パソコンの画面を闇乃に向ける。
「こちらがこのビジネスホテルの全監視カメラの映像です。」
「うむ。くるしゅうない。それじゃあ張り込みしよっか。」
基本的にアサシンは標的が来るまではすることがないので近場で待機をするか、標的がその場に現れないか周辺で張り込みをする事になる。
ーー2時間後ーー
「来ないね〜!本当にここ使うの〜?」
「そのはずなんですけどね〜?あ!来ました!標的です!多田来ました!」
闇乃がパソコンの画面を覗き込むと確かにただのの姿がエントランスの監視カメラにバッチリ写っていた。それを確認すると闇乃は足早にエントランスに向かって走っていった。
闇乃がエントランスにつくとそこでは多田が宿泊料金の清算をしていた。多田は闇乃、正確には人が近づいてきた事に気づくと首のうろに回していたパーカーのフードで顔を隠す。
「すいませ〜ん。多田さんで間違い無いでしょうか〜?」
「・・・・コロス。」
「はぁ?」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスッッッッッ!!!!!」
すると急に多田がポケットからナイフを取り出し闇乃目掛けて突進してくる。闇乃はその突進を横に避けて回避した。突進を交わされ壁にぶつかった多田だったがそんなもの関係なく再びナイフを構えて闇乃に突進をしてくる。
「危ないドラッグでもしてるんですか〜?そんな単調な動きが当たるわけないですよ〜?」
闇乃は今回はただ避けるだけではなく避け際に腰に刺していたホルダーからナイフを取り出し、多田の脇腹を切り付ける。その一撃が痛かったのか多田はナイフを手から落とし、脇腹を抑えてうずくまる。
「なんだ。もう終わりですか。まぁ、仕事が早く終わるんだったら終わるに限りますけど。」
「先輩!早いですって!て・・・もう終わったんですか?」
「だって早く終わったからねぇ。」
「・・・うちの会社って戦闘狂が多いですけど先輩は違うんですね。戦闘一瞬で終わらせてますし。」
「いや、強い相手と戦うのは好きなんだけど・・・。
そもそも私より強い相手がなかなかいないし、先輩とかなら私より強いかもだけどそもそも戦わないし。」
闇乃と後輩がそんな世間話(?)をしていると多田が起き上がる。よくみると脇腹からの出血が完全に止まっており、止血が完全に成功しているのがわかる。
しかし闇のに一点の疑問が生じた。
(結構深く切ったつもりだったんだけどな?なんであんなに早く、しかも完璧に止血できてんだろ?)
闇乃がそんなことを考えているとただがよろよろと走りながら闇乃の横の壁を殴る。もちろん闇乃はそんなパンチを避けた。
(なんで私今避けた?受け止めた方が早く処理できるのに・・・?)
ヘロヘロな軌道をしながらゆっくりと闇乃のすぐ横の壁に着地した拳は壁にめり込みながら、壁にとてつもなく大きいクレーターを作った。その威力は壁のクレーターの大きさをみればわかるだろう。身長179ほどの闇乃が余裕で縦に入るレベルの大きさだった。
「えぇ〜?なんで〜?」
「せ、先輩!?早く仕留めてください!」
「了っ解ッッ!!」
返事をしながら闇乃がナイフで多田の首を一閃する。瞬間多田の首が体からずるりと音を立てながら分離する。
「死んだ。後輩、処理班呼んで。できれば解析班に死体を回すように指示しといて。」
「りょ、了解です!」
「ただの馬鹿力・・・なんて訳はないよね〜。」
こうして2人はテレビやニュースで騒がれていた連続殺人犯である『多田 日糸』の殺害に成功した。
一度仕事を終えた闇乃と後輩は帰りの車の中で多田のことについて会話を交わす。
「・・・後輩くん解析班から何か多田の死体について何か聞いてない?」
「まだ完全に分析が終わっていないのでわからないですけど、何か現段階では解析不明の成分が使用されている薬物がしたいから検知されたらしいです。」
「薬物・・・。筋力増強とかその類にしても強化されすぎだよね・・・。まるでゲームのアイテムみたいな。」
「まだ完全に解析が終わってないのでわからないですけどね。」
「けどいくら薬物で筋力が強化されてもあそこまで知能が低下すると力を扱いきれてないからそこまで戦闘力が上がるわけではないんだよね・・・。」
「そうなんですね・・・。まぁ、解析班の解析結果を待ちましょう。」
そうやって2人が会話をしていると車が目的地である『angel』につく。車を車庫に格納して寮の自室に帰ろうとした矢先に『angel』の社長である善野が2人の自室の前で2人が帰ってくるのを待っていた。
「社長、ストーカー行為は嫌われますよ・・・。」
「ストーカーじゃねぇって!依頼だよ依頼!」
「もう依頼ですか?最近私にくる依頼のペースが早くなってませんか?」
「仕方ないんだよ・・・。だってお前を名指しで指名してるんだから・・・。」
「分かりました。今回の依頼はなんですか?」
「お前の因縁の相手、『スパイ』の1人に暗殺依頼が出ている。」