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第14話 金の精霊王は、モフモフ子狐ちゃん。

 シーラさんの日記に書いてある「おもてなし計画」は、とてもワクワクしてしまう内容だった。本当に色々な内容があって、まるで遊園地を再現したかのようだ。


「この空をドラゴンに乗って飛ぶ奴とか、人魚と一緒に地底湖への滝を滑る奴とか、魔狼に乗って森を疾走する奴とか、絶対楽しいじゃん!」


 私はエルの「元魔王フルコース」をたっぷり堪能した後、部屋に戻って再び日記帳を読んでいた。


「ふふっ、そうだな。だが、それらの準備はかなり骨が折れるぞ。ドラゴンは卵から孵化させなければならないし、人魚の説得も慎重に行わなくてはならない。魔狼達も、元は俺の配下だが、今は新たなリーダーもいるだろうしな」


「そうなんだ......まぁ、少しずつコツコツだね。でもとりあえず料理はエルが出来るし、大きなお風呂もある。もうおもてなし出来るんじゃない?」


 私は目をキラキラさせたが、エルはウーンと唸る。


「訪れる冒険者の人数にもよるな。料理の手際には自信があるが、客が十人以上だと少し手こずるかも知れん。風呂も同様だ。勝手に入れと言うなら別だろうが、ある程度接待するのであれば、もう少し働き手がいるぞ」


 むむっ、確かに。


「そっか。じゃあ城の働き手を増やそう。誰かアテはある?」


「ふっ、単純な事さ。ユウノ、お前の従えているのはなんだ?」


 あっ、そっか。


「精霊王達を使えばいいんだね。でもなんだか申し訳ないなぁ。精霊の王様なのに」


 ディーネやラマンダに掃除を頼むのも、ちょっと罪悪感あったし。


「そう気に病む事はない。奴らはお前の役に立つのが何よりも幸せなんだからな。だがそんなに気にかかるなら、精霊王のさらに眷属の精霊達にやらせればいいだろう」


「ああ、その手があった。ディーネも眷属の水玉ちゃん達使ってたもんね」


「そう言う事だ。その中で、接客に向いてそうな奴を召喚すればいい」


 接客に向いてそうな精霊かぁ......。一体誰だろう。うーん。


 私はしばらく熟考し、答えを導き出した。


「金の精霊王にする!」


「うむ。判断はユウノに任せるぞ。呼び出してみるがいい」


「オッケー! えい!」


 私は両手を前に突き出し、金の精霊王を呼び出した。


 すると金色の葉っぱがヒュルルーッと渦を巻き、ドロンッと煙に包まれる。


 モクモクとした煙が消えると、そこに金色の子狐がチョコンと座っていた。


 ふおおー! 尻尾モフモフ! 可愛いー♡


「シーラ様がユウノ様として転生してからは、お初にお目にかかるのう。わらわは輝夜(かぐや)。練金術を極めし金の精霊王。して、何ようじゃ?」


 カグヤは狐でありながらも、なんだか優美な立ち振る舞いで私を見つめた。


「あのね、なんだか恐縮なんだけど......お料理とか、お掃除とか、接客とか、雑用とか......とにかく人手が足りなくて。その手伝いをして欲しいの。お願い出来るかな」


 私は片目をつぶって両手を合わせ、カグヤにお願いをしてみる。なんだか気位が高そうだし、聞いてくれるかは不安である。


「ふむ、気高き金の精霊王たるわらわに、小間使いのような真似をしろと。そう言うのじゃなユウノ様は」


「ごっ、ごめんなさい! やっぱり嫌だよね......」


 私が頭を下げると、カグヤはクスクスと笑った。


「すまぬ。幼子となったユウノ様が、あまりにも可愛いものでな。ちとからかってみたくなったのじゃ。許して欲しい。ふむ、小間使いじゃな。わらわに任せよ」


 カグヤは再びドロンッと煙に包まれたかと思うと、次の瞬間には妖艶な和装の美女に変身していた。だが狐耳とモフモフの尻尾はそのままだ。


「この姿ならば、客人への接待も完璧にこなせるじゃろう。どうじゃ?」


 私はコクコクと頷いた。


「いいと思う!っていうか、すっごくいい!」


 私はカグヤの美しさに見惚れた。金色の流れるような髪に、切れ長の目。白い肌に、和装でもわかるプロポーションの良さ。


「ふふっ。それは何よりじゃ。では我が眷属も、呼ぶとしよう」


 カグヤはそう言ってイチョウの葉を周辺に撒くと、「いでよ!」と叫んだ。するとドロンッと煙が立ち、葉っぱのあった場所に十数人のキツネ耳の幼児が出現。全員が黒髪のおかっぱで、とてつもなく愛らしい。


「皆の者! これより我々はユウノ様の小間使い! どんな要望にも完璧に答えるぞ。良いな!」


「はいな~カグヤ様」


 みんな可愛いすぎるぅー♡


「ありがとうカグヤ。それじゃあ、料理や掃除、接客や雑用をお願いします!」


 私はペコリとお辞儀した。


「そうかしこまるでないよ、ユウノ様。そなたが我らの主人であるが故に。では、早速仕事にかかるとしよう。ご指示を」


「あ、うん!」


 私はカグヤ達に指示し、お客様をお迎えする手筈を整えた。カグヤは錬金術によって、新しい食器も準備してくれた。眷属のおかっぱちゃん達も仕事の覚えが早く、カグヤを筆頭にテキパキとこなして行く。


 さぁ、これでとりあえずのおもてなし準備は整った。あとは私が二代目魔王だって、しっかりみんなに宣伝しなくっちゃ!


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