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第5話 精霊王を統べる者。

 そして裏面はこう。


 ステータス

 生命力 10

 体力 1

 知力 100

 筋力 1

 武力 0

 魔力 9999

 勇気 30

 魅力 9999

 幸運 100


 能動的技能(アクティブスキル)

【精霊召喚・火】

【精霊召喚・水】

【精霊召喚・土】

【精霊召喚・風】

【精霊召喚・金】

【精霊召喚・木】

【精霊召喚・雷】

【精霊召喚・光】

【精霊召喚・闇】

【精霊召喚・氷】

【精霊召喚・時】

【従魔召喚】

【従魔合体】


 常態的技能(パッシブスキル)

【召喚状態維持】

【複数同時召喚】


 称号

【精霊王を統べる者】

【神魔に愛されし者】


 みたいな感じ。裏面は基本的に、みんな隠しているらしい。なので私もステータスとスキルは自分にしか見れない設定にする。


 なんかステータスも、いくつかすごい数値がある。力や体力は子供らしくからっきしだが、魔術においては無敵。そんな感じだ。


 ちょっと魔術の練習、してみようかな。うーん、どれにしようかな。家の中で使っても大丈夫そうな奴......。


「氷、がいいかな。汚れないし、水浸しにもならなそうだし」


 私は氷の精霊召喚を使ってみる事にした。特別な呪文などは必要なく、ただ強く念じるだけで使えるらしい。


「こうかな......えいっ!」


 私は両方の手のひらを前に出し、氷、というよりも雪で出来たウサギをイメージしてみた。


 すると家の中に風が舞い、私の前に雪が渦巻いていく。それはやがてウサギの形を形成し、ピョコン、と耳を動かした。


「やぁ、初めましてユウノ様。僕は氷の精霊王リスタ。こんな可愛らしい姿で召喚して貰えるなんて、光栄の至りだね」


 リスタは真っ白な鼻をヒクヒクと動かし、同じく真っ白なヒゲをピコンと震わせる。彼? の全身は雪で構成されている為真っ白だけれど、目だけは真っ赤だった。


 かっ、可愛い~♡ ぬいぐるみみたい♡ 雪で出来てる筈だけど、毛並みがモコモコしてて柔らかそう♡


「あ、ええっと。初めましてリスタ。どうして私の名前を知っているの?」


 私はリスタに近づき、しゃがみこんで彼の顔を見た。僕って言ってるし、男の子って認識で合ってるよね、きっと。


「もちろん知っているさ。だって君は有名人だ。何せ、数万年に一度しか生まれない、【精霊王を統べる者】だもの。君が転生してきた事も、もちろん知っている。みんな君を待ち望んでいたんだよ、ユウノ様」


「えっ、私を待ってたの? この世界に転生してくるのを、待っていたって事?」


 私が訪ねると、リスタは二本足で立ち上がって、前足を手のように広げた。


「そうとも。ようこそユウノ様、この世界へ。僕たちはこの世界をルーンアースと呼んでいる」


「ルーンアース......」


 その名前は、初めて聞いた筈だけれど、なんだか私の胸に染み入った。


「君はね、この世界においては神にも等しい存在だ。やろうと思えば、どんな事でも出来る。この世界を構成する精霊たちを、思うがままに操れるのだからね。それにこの世界を作った神、そして人の心を惑わす悪魔やその眷属の怪物でさえも、君の事を愛しているんだ。けれど、この世界をどうするかは君の自由だ。君の行動次第で、この世界の行く末が決まるのさ」


 リスタはしたり顔でそう言った。私は正直戸惑った。世界を自由に出来ると言われても、そんな大それた事、私には荷が重い。


「私は、エルと一緒に暮らしたいだけ。それ以上の事は望まないよ」


 そう言うと、リスタはキョトンとした表情を見せる。


「えっ、そうなのかい? エルって君の保護者、元魔王のエルデガインの事だよね。そうか、勿体ないなぁ。望みさえすれば、君はなんだって出来るのに。だけど......そうだね、そう言う選択もアリだな。うん」


 リスタは妙に納得した様子で、うんうんと頷いた。そしてやっぱり、エルは魔王エルデガインなんだ......。


「それじゃあユウノ様。その、あれだ。君に有益な情報を提供し、今後は強大な氷の力を君に貸す僕に対して、ちょいと褒美を授ける気はないかい?」


 リスタは再び四本足で立ち、ちょこんと座って首を傾げた。


 ふおお! やばい♡ 可愛い♡


「私であげられるものなら、もちろんあげるよリスタ。何が欲しいの?」


 するとリスタは少し照れたようにこう言った。


「ふふっ、僕はね。君の抱擁が欲しい。それが何よりの褒美になる」


 抱擁......? ああ、抱っこして欲しいって事か。もう、小難しい言い方するんだから。


「わかった。そんな事でいいならいくらでも。はい」


 私はリスタの体を抱き上げて、ギュッと抱きしめて顔をすり寄せる。


「ふああ、冷くってモコモコで、気持ちいい♡」


 リスタの肌触りは、雪って言うよりヒンヤリ冷たい羽毛布団って感じ。最高♡ ずっとこうしていたいくらいだ。


「ああ......ユウノ様に抱きしめて貰えるなんて、僕はもう死んでもいいくらい幸せさ。もちろん死にはしないけれどね」


「あはっ。喜んでもらえて私も嬉しいよ」


 名残り惜しいけれど、リスタを床に下ろす。その直後、リビングの方からエルの叫ぶ声が聞こえた。帰ってきたんだ。だけどなんだか様子がおかしい。あの優しいエルが、こんな大声を出すなんて......。


「ユウノ! いるか!」


 私は慌てて自室から飛び出し、リビングへと向かう。


「いるよ! どうしたの、エル!」


 エルは辛そうな顔で玄関を後ろ手に閉める。そしてしゃがみこんで、両手を広げた。


「ああ、良かった。おいでユウノ。俺の愛しい娘」


 エルはニッコリと微笑んでくれた。いつもの優しいエルだ。私はリスタに「待ってて」と告げ、エルの胸に飛びこんだ。エルは私を強く抱きしめ、髪を撫でながらこう言った。


「ユウノ、ごめんな。もう、この町にはいられなくなってしまった。大変な事が、起こったんだ......」


 エルの声は震えていた。見上げると、エルの目には、涙が浮かんでいた。





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