そして裏面はこう。
ステータス
生命力 10
体力 1
知力 100
筋力 1
武力 0
魔力 9999
勇気 30
魅力 9999
幸運 100
能動的技能(アクティブスキル)
【精霊召喚・火】
【精霊召喚・水】
【精霊召喚・土】
【精霊召喚・風】
【精霊召喚・金】
【精霊召喚・木】
【精霊召喚・雷】
【精霊召喚・光】
【精霊召喚・闇】
【精霊召喚・氷】
【精霊召喚・時】
【従魔召喚】
【従魔合体】
常態的技能(パッシブスキル)
【召喚状態維持】
【複数同時召喚】
称号
【精霊王を統べる者】
【神魔に愛されし者】
みたいな感じ。裏面は基本的に、みんな隠しているらしい。なので私もステータスとスキルは自分にしか見れない設定にする。
なんかステータスも、いくつかすごい数値がある。力や体力は子供らしくからっきしだが、魔術においては無敵。そんな感じだ。
ちょっと魔術の練習、してみようかな。うーん、どれにしようかな。家の中で使っても大丈夫そうな奴......。
「氷、がいいかな。汚れないし、水浸しにもならなそうだし」
私は氷の精霊召喚を使ってみる事にした。特別な呪文などは必要なく、ただ強く念じるだけで使えるらしい。
「こうかな......えいっ!」
私は両方の手のひらを前に出し、氷、というよりも雪で出来たウサギをイメージしてみた。
すると家の中に風が舞い、私の前に雪が渦巻いていく。それはやがてウサギの形を形成し、ピョコン、と耳を動かした。
「やぁ、初めましてユウノ様。僕は氷の精霊王リスタ。こんな可愛らしい姿で召喚して貰えるなんて、光栄の至りだね」
リスタは真っ白な鼻をヒクヒクと動かし、同じく真っ白なヒゲをピコンと震わせる。彼? の全身は雪で構成されている為真っ白だけれど、目だけは真っ赤だった。
かっ、可愛い~♡ ぬいぐるみみたい♡ 雪で出来てる筈だけど、毛並みがモコモコしてて柔らかそう♡
「あ、ええっと。初めましてリスタ。どうして私の名前を知っているの?」
私はリスタに近づき、しゃがみこんで彼の顔を見た。僕って言ってるし、男の子って認識で合ってるよね、きっと。
「もちろん知っているさ。だって君は有名人だ。何せ、数万年に一度しか生まれない、【精霊王を統べる者】だもの。君が転生してきた事も、もちろん知っている。みんな君を待ち望んでいたんだよ、ユウノ様」
「えっ、私を待ってたの? この世界に転生してくるのを、待っていたって事?」
私が訪ねると、リスタは二本足で立ち上がって、前足を手のように広げた。
「そうとも。ようこそユウノ様、この世界へ。僕たちはこの世界をルーンアースと呼んでいる」
「ルーンアース......」
その名前は、初めて聞いた筈だけれど、なんだか私の胸に染み入った。
「君はね、この世界においては神にも等しい存在だ。やろうと思えば、どんな事でも出来る。この世界を構成する精霊たちを、思うがままに操れるのだからね。それにこの世界を作った神、そして人の心を惑わす悪魔やその眷属の怪物でさえも、君の事を愛しているんだ。けれど、この世界をどうするかは君の自由だ。君の行動次第で、この世界の行く末が決まるのさ」
リスタはしたり顔でそう言った。私は正直戸惑った。世界を自由に出来ると言われても、そんな大それた事、私には荷が重い。
「私は、エルと一緒に暮らしたいだけ。それ以上の事は望まないよ」
そう言うと、リスタはキョトンとした表情を見せる。
「えっ、そうなのかい? エルって君の保護者、元魔王のエルデガインの事だよね。そうか、勿体ないなぁ。望みさえすれば、君はなんだって出来るのに。だけど......そうだね、そう言う選択もアリだな。うん」
リスタは妙に納得した様子で、うんうんと頷いた。そしてやっぱり、エルは魔王エルデガインなんだ......。
「それじゃあユウノ様。その、あれだ。君に有益な情報を提供し、今後は強大な氷の力を君に貸す僕に対して、ちょいと褒美を授ける気はないかい?」
リスタは再び四本足で立ち、ちょこんと座って首を傾げた。
ふおお! やばい♡ 可愛い♡
「私であげられるものなら、もちろんあげるよリスタ。何が欲しいの?」
するとリスタは少し照れたようにこう言った。
「ふふっ、僕はね。君の抱擁が欲しい。それが何よりの褒美になる」
抱擁......? ああ、抱っこして欲しいって事か。もう、小難しい言い方するんだから。
「わかった。そんな事でいいならいくらでも。はい」
私はリスタの体を抱き上げて、ギュッと抱きしめて顔をすり寄せる。
「ふああ、冷くってモコモコで、気持ちいい♡」
リスタの肌触りは、雪って言うよりヒンヤリ冷たい羽毛布団って感じ。最高♡ ずっとこうしていたいくらいだ。
「ああ......ユウノ様に抱きしめて貰えるなんて、僕はもう死んでもいいくらい幸せさ。もちろん死にはしないけれどね」
「あはっ。喜んでもらえて私も嬉しいよ」
名残り惜しいけれど、リスタを床に下ろす。その直後、リビングの方からエルの叫ぶ声が聞こえた。帰ってきたんだ。だけどなんだか様子がおかしい。あの優しいエルが、こんな大声を出すなんて......。
「ユウノ! いるか!」
私は慌てて自室から飛び出し、リビングへと向かう。
「いるよ! どうしたの、エル!」
エルは辛そうな顔で玄関を後ろ手に閉める。そしてしゃがみこんで、両手を広げた。
「ああ、良かった。おいでユウノ。俺の愛しい娘」
エルはニッコリと微笑んでくれた。いつもの優しいエルだ。私はリスタに「待ってて」と告げ、エルの胸に飛びこんだ。エルは私を強く抱きしめ、髪を撫でながらこう言った。
「ユウノ、ごめんな。もう、この町にはいられなくなってしまった。大変な事が、起こったんだ......」
エルの声は震えていた。見上げると、エルの目には、涙が浮かんでいた。