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スノーグローブ・シアターのテスト映像を見た翌日、夏樹の心は沈んでいた。なぜ自分には夢が映らないのか――その問いが頭から離れなかった。
その日の仕事を終えた後、彼は静まり返ったパーク内を歩いていた。夜の冷たい空気が肌を刺す。ふと気づくと、ダニエルがシアターの前で雪を見つめていた。
「考え込んでるな。」
ダニエルは夏樹に気づくと、微笑みながら声をかけた。夏樹は迷った末、自分の悩みを正直に打ち明けた。
「俺には夢がないのかもしれません。みんなが持っている“理想の未来”が、俺には見えない。」
ダニエルは少しの間黙っていたが、やがてポケットから小さな雪の結晶型オブジェを取り出した。
「これを見てみろ。雪の結晶は、どれひとつとして同じ形をしていない。けれど、それぞれが独自の美しさを持っている。」
夏樹はオブジェを手に取り、じっと眺めた。
「夢ってのはな、形があるものじゃない。人によって違うし、目に見えなくても確かにそこにある。焦る必要はないさ。」
ダニエルの言葉は、夏樹の心に深く染み込んだ。
「まずは、自分が心から楽しいと思えるものを探してみるんだ。それが、お前の中に眠る夢のかけらになる。」
夏樹はゆっくりと頷いた。今はまだ見えなくても、自分の中に何かがある。そう信じて、一歩ずつ進んでいこうと思った。
夜空には、白く輝く雪が静かに舞い落ちていた。