冬の夜、スノーグローブ・シアターの特別公演が始まろうとしていた。
観客席には多くの人が集まり、期待に満ちたざわめきが漂っている。シアターのスクリーンに映し出されるのは、人々の夢の物語。葵に誘われ、夏樹も客席に座っていた。
「夏樹くん、自分の夢が映し出されたら、どんな景色になると思う?」
葵の問いかけに、夏樹は曖昧に肩をすくめた。
「そんなもの、ないよ。」
舞台が暗転し、映像が流れ始める。最初に映し出されたのは、テーマパークで笑顔で働く葵の姿だった。彼女は小さな頃からの夢を叶え、輝いていた。
そして次の瞬間、夏樹の番が来た。
しかし、スクリーンに映し出されたのは、何もない真っ白な画面だった。
息をのむ夏樹の隣で、葵が静かに微笑んだ。
「まだ見つかってないだけだよ。でもね、それって今から探せるってことだよね。」
彼女の言葉は、静かに胸の奥に響いた。夢がないのではなく、ただ心の奥に閉じ込めていただけかもしれない。スクリーンを見つめながら、夏樹の心の中で、わずかながら何かが変わり始めていた。
舞台の上では、最後のシーンが流れ、観客席から温かな拍手が響き渡った。