冬の冷たい風が肌を刺す夜、テーマパークは煌びやかな光に包まれていた。
クリスマスシーズンを迎え、園内は雪の装飾と幻想的なイルミネーションで彩られ、訪れる人々の頬は寒さではなく興奮に赤らんでいた。そんな賑やかな空間の片隅で、夏樹はひっそりと立っていた。
「夏樹くん!」
声をかけたのは同僚の葵だった。彼女は白い息を弾ませながら駆け寄り、にっこりと笑う。
「スノーグローブ・シアターの準備、手伝ってくれる?」
「……俺が?」
「うん! このシアター、すごく素敵なんだよ。冬限定のショーで、みんなが夢を見る場所なの!」
葵の言葉は無邪気で、自信に満ちていた。
夏樹は、ふとテーマパークの灯りを見上げる。輝く光の向こうで楽しそうに笑う人々を見ても、自分の心は冷めたままだ。
「夢って、そんなに大事か?」
「もちろん!」
葵は迷いなく答えた。
「夢があるから頑張れるし、叶えられなくても、その過程が素敵なんだよ。」
夏樹は返す言葉を失った。
スノーグローブ・シアターへの道のりを歩きながら、二人の足元には降り積もる雪が淡く光っていた。その夜、夏樹の中で何かがわずかに揺らぎ始めていた。