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静かな幸福

朝陽がゆっくりと昇り、世界が黄金色に染まっていく。

空気は澄み渡り、柔らかな光が静かに広がっている。

草原が一面に広がり、風が穂を揺らして波のようにうねっている。


家が一軒、草原の真ん中に立っている。

古びた木造の家。壁は淡いクリーム色で、屋根には緑の苔が生えている。

煙突から白い煙が昇り、朝の空気に溶けていく。


家の窓から、湯気が漂っている。

温かな香りが空気に混じり、鼻をくすぐる。

パンが焼ける匂いと、コーヒーの香ばしさが静かに広がっている。


窓辺には、白いレースのカーテンが揺れている。

朝陽を透かし、光がレースの模様を壁に映し出している。

カーテンが風に揺れるたび、影がゆらゆらと踊っている。


キッチンには、一人の女性が立っている。

柔らかいベージュのエプロンを纏い、髪を後ろで束ねている。

顔は穏やかで、唇が微かにほころんでいる。


彼女はコーヒーポットを傾け、カップに注いでいる。

細い湯気が立ち昇り、カップの縁をくるくると踊っている。

彼女は顔を近づけ、そっと香りを吸い込む。


目を閉じ、微笑みが浮かぶ。

長いまつげが揺れ、頬がふわりと緩んでいる。

幸福が胸に満ちていくのを感じている。


テーブルの上には、焼きたてのパンが並んでいる。

黄金色に輝くクロワッサン。表面がパリッと膨らみ、バターの香りが漂っている。

隣には、赤いジャムの瓶。透き通るルビー色が朝陽を受けて輝いている。


彼女はナイフを手に取り、クロワッサンをそっと割る。

パリッという音が静かに響き、中からふわりと湯気が立ち昇る。

バターの香りが広がり、彼女の目が細くなる。


ジャムをナイフですくい、クロワッサンに乗せる。

赤いジャムが黄金色の生地に溶け込み、艶やかに輝いている。

彼女は一口、ゆっくりと口に運ぶ。


頬がふわりと緩み、目を細める。

ジャムの甘酸っぱさが口いっぱいに広がり、バターの香りと溶け合っていく。

幸福の余韻が舌の上に残り、彼女は静かに息を吐いた。


窓の外では、風が草原を揺らしている。

波のようにうねる草原が、朝陽を浴びて黄金色に輝いている。

遠くには、白い花がちらちらと舞っている。


その花びらは、空中を漂い、ゆっくりと舞い降りている。

まるで雪のように、静かに、優雅に。

花びらが風に乗って、窓辺に舞い込んできた。


彼女はそれに気づき、カップを置いて立ち上がる。

花びらが手のひらに落ち、柔らかな感触が伝わってくる。

透き通るような白い花びらが、微かに光を反射している。


彼女は花びらを見つめ、微笑む。

目を細め、優しく手のひらを包み込む。

その瞬間、花びらが淡い光を放ち、ふわりと宙に浮いた。


光の粒が弾け、花びらが蝶のように舞い上がった。

白い光を纏った蝶が、キッチンの中をひらひらと飛び回っている。

彼女は目を見開き、口元に驚きの微笑みが浮かぶ。


蝶は窓から外へ飛び出し、草原の上を舞い続けている。

黄金色の草原に、白い光の軌跡が描かれている。

風が吹き、草原が波のように揺れている。


彼女は窓辺に立ち、草原を眺めている。

その顔には、穏やかな幸福が溢れている。

目が細まり、柔らかな笑みが浮かんでいる。


遠くで、白い花びらが舞い続けている。

蝶のように、光を纏い、草原の上を漂っている。

朝陽が高く昇り、世界が黄金色に包まれていく。


やがて、風が静かに止み、花びらは地面に降り積もっていった。

草原は静寂に包まれ、光が穏やかに広がっている。

彼女はカップを手に取り、一口、コーヒーを飲んだ。


その瞳に、幸福の光が宿っている。

静かな朝が続き、世界は穏やかな時間に包まれていた。



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