<廃墟の門>
月が高く昇り、光は静かに石畳を照らしていた。
古い回廊が、朽ちた柱の影を伸ばしている。壁にはツタが絡みつき、ひび割れたアーチが月明かりを受けている。
空気は冷たく、静寂がすべてを覆っていた。
足元に広がる敷石には、かつてこの場所を行き交った者たちの記憶が染み込んでいるようだった。しかし今は、何の足音も響かない。
ただ、風が微かに吹いている。だが、その音はどこにも届かない。
< 彫像の影>
回廊の奥には、石造りの広場がある。
中央には、水の涸れた噴水がひっそりと佇んでいた。その縁には、誰が置いたのか分からない古い書物が、埃をかぶっている。
広場の四隅には、長い時を耐えた彫像たちが立っていた。
月の光がその輪郭を撫でるたび、彫像の瞳がわずかに光を宿すように見えた。
風が吹いた。
ふと、影が揺れる。
……いや、それは影が「動いた」ように見えた。
<静寂の崩壊>
静寂が重くなっていく。
影が揺れる。壁に映る彫像の姿が、ほんのわずかにずれたように見えた。
ふと、広場の奥から微かな音がした。
——石の擦れる音。
まるで、誰かがゆっくりと足を引きずるような。
その瞬間、噴水の縁に置かれていた書物が、一枚のページを静かにめくった。
風は吹いていない。
だが、紙は確かにゆっくりと動いた。
<静寂の回廊>
月が再び静かに輝く。
影は何事もなかったように元の場所へ戻り、彫像は変わらずそこに立っていた。
噴水の水は枯れたまま、書物は開かれたまま、ただ夜の静けさが広場を包んでいる。
まるで何もなかったかのように。
ただひとつ違うのは——回廊の入り口にあったはずの門が、いつの間にか開いていたことだけだった。