2023年2月6日 月曜日 第2週目
朝
チャイムと同時に先生が入ってきた。
朝の会では平野さん以外の全員の名前が呼ばれた。
平野さんは体調不良で欠席らしい。
先生は一通り連絡を終えると、職員室へと帰って行った。
昼休み
いつもなら休憩の時間としてみんなが笑いあっている時間だが、今日は違うようだ。
「なんだか今日はみんな静かだね」
俺は、いつものメンバーに話を振った。
「当たり前だろ。早いやつは明日に私立の合格発表があるんだからな」
「みんなの合格発表はいつ?」
「私は、明後日だよ!」
「私も。あと、桜も明後日らしいよ」
「じゃあ、俺と鉄平以外は全員明後日なんでね」
「そういうことになるな」
「優気と鉄平はいつ発表なの?」
「明日だよ」
「そうなんだ‼優気ファイトだよ!」
「今からはどうしようもないかな」
俺は少し困りながら答えた。
「俺は無視かよ」
「何のことだか」
早速、今日も鉄平と島田さんの間に火花が散り始めた。
それを見て、俺は慌てて話題を逸らした。
「島田さんのほうはどう?」
「私は私立一本だから明日が勝負だよ!」
「凛ちゃんなら大丈夫だって‼」
「ありがとう明日香ちゃん!」
奥川さんが島田さんの頭に手を当ててぽんぽんと触った。
「合格発表って実際に高校まで見に行く必要があるのかな」
「まあ、ネットでも発表はあるらしいけどそれぞれの高校の掲示板に張り出されるほうが早いらしいよ」
「まあ、結果なんて見るまでもないがな」
「本当に姫路は動揺しないね」
「まあな。誰かと違って自己採点では余裕の成績だったからな」
「それは私に喧嘩を売っているのかな⁉鉄平‼」
「そう聞こえたか?」
島田さんは鉄平の肩を前後にぶんぶんと振りながら聞いた。
「島田さんは自己採点どうだったの?」
「それは……」
「D判定だったよな」
「言うな‼」
「鉄平が私をいじめるー‼」
そう言うと、島田さんは奥川さんの胸に思いっきり飛びついた。
どうどうどうと言いながら奥川さんはなだめた。
「鉄平のほうはどうだったの?」
俺は率直に気になったことを聞いてみた。
けど、鉄平の表情を見た瞬間にしまったと思った。
「もちろん。A判定だったぞ」
「へぇぇ」
俺たち全員はただ頷くことしかできなかった。
ちなみに、鉄平と島田さん以外は自己採点をしていない。
発表前に結果を知るのが怖いからだ。
「まあ、とりあえず明日は俺と優気の合格発表を楽しみにしていようぜ」
鉄平は俺の肩を思いっきり叩いた。
「優気の発表を楽しみにしているね‼」
俺はありがとうとだけ言った。
夜
俺は、勉強にひと段落つけて携帯を触っていた。
すると、1通のメッセージが来た。
―日曜日はありがとう
心臓がとくんと鳴った。
相手は平野さんだった。
―いや、こちらこそ付き合ってくれてありがとう
俺は、当たり障りのない返事を返した。
―それと、明日は頑張ってね
―合格発表のこと?
―うん
―よく覚えていたね
―凛からさっき聞いた
ナイス島田さん‼
俺は自分の部屋の中で小さくガッツポーズをした
―ありがとう。平野さんも早く体調が良くなるといいね
―ありがとう。
最後にお互いに1つずつスタンプを送りあって会話は終わった。
ほんの少しの間だったけど、凄く幸せな気持ちになることができた。
きっと、この気持ちにさせてくれるのはこの世のほかの誰でも無理だろう。
俺は合格発表が明日であるだけではなく、改めて平野さんへの強い気持ちを感じた。