サトルはキッチンで湯を沸かしながら、くしゃみをする妹のミナを気にしていた。
「風邪気味なんだから、あったかいもの飲みなよ」
ミナはソファに座りながら鼻をすすった。「うん……紅茶がいいな。レモン入りで」
「レモンティーね、了解!」
サトルはカップに紅茶を注ぎ、輪切りのレモンを浮かべた。その瞬間——
「あれ?」
紅茶の色が、さっきまでの濃い琥珀色から、淡く透き通った色に変わっていく。
「なんで? さっきまで普通の色だったのに!」
その様子を見ていた祖母が微笑みながら言った。
「ふふ、驚いたかい? これはね、紅茶に含まれるポリフェノールがレモンの酸と反応して変化したんだよ」
「ポリフェノール?」
「うん。紅茶にはカテキンやテアフラビンっていう成分が含まれていて、それが酸と混ざると構造が変わるの。だから色が薄くなるのよ」
サトルは目を輝かせた。「へぇ、まるで化学実験みたいだ!」
得意げに妹へ説明しようと振り返ると、ミナはカップを手に取っていた。
「科学の話はいいから、早く飲ませて」
サトルは苦笑しながらカップを差し出した。
「はいはい、お嬢様。どうぞ」
ミナは一口飲んで、ほっと息をついた。「やっぱりレモンティーは最高」
サトルはカップの中の淡い色を見つめながら、紅茶の奥深さを改めて感じていた。