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『スパイ会社の聖さん。』
『スパイ会社の聖さん。』
きらり
現実世界裏社会
2025年02月08日
公開日
3,586字
連載中
とある裏社会のスパイ会社で働く『佐藤 聖』はいつもスパイとは思えないほど派手に依頼を解決してしまう。
殺人の依頼ならその人物がいるビルの同じフロアが消し飛び、会社の機密情報が欲しいなら一旦その会社の本社を乗っ取り堂々と思えてから出てくる。
そんな聖さんに目をつけた組織が彼女を殺すために計画を立てる。
がんばれ聖さん!負けるな聖さん!

第1話 「聖さんの身の回り」

スパイ会社『春蘭』

ここでは裏社会でも特に色々と『尖った』人物たちが働くスパイ会社だ。

そもそもスパイ会社とはなんなのかというと簡潔に言い表すと『金をもらえればなんでもやる何でも屋』。

殺人、工作、窃盗ect...

そんな『春蘭』でも一際(色んな意味で...)目立っている美少女アサシンがいた。

その名は『佐藤 アンク』。


今回はそんな彼女が会社の経営者である『桐山 誠司』に社長室まで呼ばれている。


「今回の依頼はなんだ桐山?くだらん依頼だったらぶっ飛ばすぞ。」


「私の事を本名で呼びなさいと何回言えばわかるんだ?」


「黙れ。この会社1番の稼ぎ頭は私だぞ?」


「はぁ、分かっている。今回の依頼はとある要人の暗殺だ。」


すると桐山は机の引き出しにしまっていた資料をアンクに手渡す。

アンクは中から紙を取り出すと、その紙をジロジロ見つめる。


「今回暗殺依頼が出ているのは大企業社長の『鷺沼 渉』だ。」


「鷺沼?聞いた事ねぇな。本当に有名人か?」


「この日本でお前以外が全員知っているぐらいはな!」


アンクは桐山との会話を終えるとすぐに部屋を出ていこうとした。


「おいおいおい!ちょっと待て!どこ行く気だ!」


「どこって、今から殺しに行くんだけど?」


すると桐山は頭を掻きむしって机を叩く。

その様子からは桐山がとても腹が立っていることがわかった。


「今から作戦を伝える。わかったら部屋に戻れ。」


「けど私が暴れてきた方が確実で早いじゃん。」


「だから!そう言う問題じゃねぇんだって!」


桐山がアンクの腕を掴んで部屋に連れ戻す。

アンクはとても不満そうな顔つきで渋々椅子に座る。


「お前なぁ!いっつもいっつも事後処理誰がやってんのかわかってんのか!?」


「知らん。そもそも事後処理までは私の仕事じゃないんだから当たり前だろ。」


「おっ前なぁ!ブッ◯すぞ?」


「・・・お前の作戦は確かに完成度が高い。普通のアサシンなら従ったほうが成功率は高いだろう。」


アンクは椅子から立ち上がり何度も桐山の頭を突く。


「だが!私の場合はその場その場で臨機応変に対応した方が成功率が上がるんだよ!」


「けど立てるに越したことはないだろ!」


「だからその場に行って私が考えた方が早いんだって!」


「けえどお前いっつも暗殺なのにロケラン使うじゃん!隠さないじゃん!暗殺じゃないじゃん!」


「依頼は達成できてんだからいいじゃん!」


「けどお前『アサシン』ではないじゃん!」


2人が口論を続けていると社長室のドアが開かれ中に1人のアサシンが入ってきた。

瞬間、2人は一定の距離感を保ち、ニッコニコの営業スマイルでそのアサシンを迎え入れた。


「あ、あの・・・。お取り込み中申し訳ありません。」


「いやいや。大丈夫だよ。なぁ、聖?」


「えぇ、もちろん。じゃあ私は出て行くから。新人くんも頑張って。」


「は、はい!ありがとうございます!」(アンクさん、やっぱりかっこいいな〜。)


「じゃあひじりが退室したら話を聞こうか。」(あいつしれっと逃げやがって・・・!)


アンクは部屋からさっさと退室すると一旦荷物をとりに自宅へと走って向かうのだった。


ーーーーーーーーー

自宅に戻るとリビングでは彼氏の『日向坂 千』が机に向かって睨めっこをしていた。

ずっと机の上にある紙をシャーペンでトントン叩いており、その表情からは長時間悩んでいることがわかった。


「おーい千。私がどっかに置いてたボルトアクション知らん?」


「すまないが知らないな。こっちも色々と立て込んでてな・・・。」


「何やってんの?仕事?」


「そうだ。明日俺の後輩が初任務に当たるんだが、その任務に必要な建物の図形から穴を見つけ出してるんだが・・・。」


千は机から立ち上がるとソファーの上に寝っ転がった。


「まーったく穴が見つからん!必ず穴が見つかるはずなんだが・・・?」


「ちょい見せてみ。」


アンクは千の机の前までいき、紙を流し見てマップの位置地点を指差し、赤いマーカーでなぞった。


「ちょいちょいちょい!何やってんだアンク!」


「ここ、監視カメラないよ?警備薄いよ?周りに特に重要な部屋もないはずだよ?」


「え?・・・あ!わかったぞ!?ここからこう広げていけば・・・!」


アンクが指定した穴を見つけると千はすぐに机に向かい直り、シャーペンと定規で何かを書き始めた。

アンクはもう話しかけても無駄だという事を感じ取ったのか自室に向かって歩き出した。

自室に入ると壁一面に銃火器が並べられており、まさにスパイ映画で見るような光景だった。

しかし一番部屋の入り口に飾られているボルトアクションが飾られているはずの額縁にだけは何も飾られてなかった。


「あっれ?どこやったっけ?確かにここにしまったはずなんだけど?」


部屋の中を探してみるがどこにもない。

しばらく探していると携帯がなった。


「へい。アンクですが何か。」


『お客様。お預かりしていた物の点検が終了いたしました。』


「あ、なるほど。了解、今から撮りに行くから準備して。」


『了解いたしました。』


そこでアンクは一昨日自分が武器屋に預けに行ったことを思い出す。急いでアンクは車の鍵をとり、ガレージにしまっていた車で武器屋に向かって走り出していった。


ーーーーーーーーー


武器屋に行った後のアンクはそのまま暗殺する予定の要人がいるビルに向かい、車の中で武器類の最終確認を行なっていた。


「武器屋で武器の調達よし!相手の建物の構造把握よし!行くぞー!」


ボルトアクションを背中に背負っているリュックサックの中にしまい、車から出る。ビルのエントランスに入るとたった1人だけ受付の人間がカウンターの中に立っていた。受付がこちらに気がつくと深々と頭を下げ、話しかけてくる。


「おっスー。この建物に鷺沼ってやついる?」


「鷺沼様ですか。・・・申し訳ございません。その様なお客様は本ビルのデータに御座いません。」


「えぇ?ほんとぉ?」


「私たちのデータに間違いはございません。」


するとアンクは背中のリュックサックからボルトアクションを取り出し、目の前の受付の頭に突き当てた。

受付は一切焦る事なく、話を続けた。


「申し訳ございません。できればその銃を下ろしていただきたいのですが。」


「私はお客様だぞ?お客様は神様じゃないのか?」


「申し訳ございません。しかし本ビルにも規律があるので。」


「うん、じゃあ死ね。」


アンクが躊躇なく引き金を引こうとした瞬間、受付がピストルを構え聖に対して発砲する。至近距離で放たれたピストルだったがアンクは簡単に避け、そのまま引き金を引き、受付の頭を吹き飛ばした。


「やっぱこのビルのやつ全員殺していくか。そっちの方がはえぇや。」


アンクはカウンターに入り込むとパソコンを操作し、ビルの何回に誰が入っているかを確認する。しかしパソコンにはセキュリティがかかっており、みることができなくなっていた。


「めんどくせぇぇ!いいわ!本当に全員殺してやる!」


アンクはエスカレーターに乗り込み、まずは2階を目指す。

2階に降りるとそこには『鷺沼 渉』が複数人の黒服の男に拘束されており、黒服はエスカレーターで登ってきたアンクに対して銃を構えて一斉に掃射することも可能だったはずだがなぜか武器を下ろしている。

1人の黒服が前に出てくる。そして手元にあるパソコンをアンクの目の前に突き出す。そのパソコンは1人の男性との音声通話がつながっていた。


「え?何?こわ。」


「え〜、君アンクだよね?スパイ会社『春蘭』の。」


「え、なんで知ってんの?こわ。」


「君と少し話がしたくてね、いいかい?」


「え?ファン?いいけど・・・。ちょっと重いぞ?」


「えっとね、単刀直入に言うと鷺沼くんを今すぐに引き渡すから僕たちを助けてくれないかな?」


「は?なんで。」


「流石に準備もなく君と戦って勝てる見込みがないからね。なら1人お客様を失って帰ってもらう方が被害が少ないんだ。」


「ほんとぉ〜?私にメリットしかないんだけどぉ〜?」


「じゃ、はい。やって。」


通話している男性が指示すると後ろで鷺沼を拘束していた黒服の1人が拳銃を取り出し、頭を撃ち抜いた。

一応プロアサシンであるアンクがいても一眼で鷺沼が絶命しているのがわかった。


「マジでなんで?」


「・・・それではここで行うあなたの仕事は終わりましたね?では速やかにお帰りください。」


通話していた男性がそういうと渋々アンクは再びエレベーターに乗り、エントランスに戻って行った。

帰りの車の中でアンクは桐山に通話で報告を行なっていた。


『・・つまりあのビルの奴らはお前にビビって鷺沼を差し出したと言うことか?』


「そうなるな。けどどうも引っかかんだよなぁ〜。」


『引っかかる?』


「あいつらお客様第一!みたいに言ってたのに急にそのお客様殺したのがどうも引っかかんだよ。」


『・・・お前がそれだけ裏社会でも危険視されてるってことだよ。』


「えぇ〜///照れるなぁ〜!」


『照れてんじゃねぇよクソ!』



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