王都にようやく平和が戻り、戦いの功績を讃えるために開かれたのは豪華絢爛な大宴会。
王宮の広間には、まるで宝石箱をひっくり返したかのような豪華な料理と美酒がずらりと並び、煌びやかな装飾もあいまって、見るだけで酔いそうなほどの雰囲気が漂っている。
「すごい祭りだな……!」
俺の目の前には、色とりどりの料理や豪華な酒、そして踊り子までが揃っていて、まさに贅沢の極み。
そんな俺の感動をよそに、クレハが勢いよく腕を掴んでくる。
「ロラン師匠! あちらの席で一緒に飲みましょうよ!」
「お、俺、酒はあんまり飲めないんだけど……?」
嫌な予感がした俺は、少しでも回避しようとするが、クレハは俺の言い分を華麗に無視。
強引に酒が並ぶ席に連れて行こうとしてくる。
俺にはちょっと重荷すぎるんだが……。
「ロラン! 今からアリス殿下と飲み比べをするところだが、一緒にどうだ?」
今度は王国の騎士団隊長、セレスが誘ってくる。
しかも相手はアリスだって?
俺はアリスに、視線で助けを求めてみるが、アリスはニヤリと笑う。
「ロラン、一口ぐらい飲んでいきなさいよ」
くっ、アリスに言われたら、引き下がれないじゃないか。
俺は観念して、クレハと一緒に席に座る。
そして、仕方なく杯を手に取る俺の姿を見て、周りが盛り上がり始めた。
そこへ、近衛騎士団の隊長セシルが、みんなを巻き込むように大声で叫ぶ。
「さあ、宴も佳境だ! みんなで祝杯をあげるぞ!」
「かんぱーい!」
祝杯の声が響き、全員で一斉に杯を掲げる。
俺もそれに続いて一口飲むと、喉に流れ込んだ強烈なアルコールに思わず顔をしかめてしまう。
それを見て、アリスとクレハは楽しそうに笑っていた。
「ロランはもう脱落ね」
「師匠の代わりに、私がどんどん飲みますよ!」
どうやら、アリスもクレハも酒が強いらしい。
俺はすでに酔いかけているというのに、羨ましい限りだ。
俺がちびちびと水を飲み、料理を楽しんでいると、どこからかリアの声が聞こえてくる。
「それで? あの魔王をどうやって倒したんだ?」
「ロランお兄様が《最上級》魔法を使って、次々と魔王を追い詰めていったんですよ!」
どうやらリアが騎士団の連中に、俺の武勇伝を得意げに話しているらしい。
俺が恥ずかしさで顔を赤らめていると、リアはさらに熱を込めて語り始めた。
「ロランお兄様が放った《炎竜》の魔法は、それはもう壮絶で……! 辺り一面を真っ赤な炎で染め上げて、魔王には逃げ場がなかったんです!」
リアの話に聞き入った周りの騎士たちは「おおっ!」と感嘆の声を上げている。
こっちは照れ隠しに顔を背けていると、セシルが俺の肩を叩いてきた。
「ロラン、お前の戦いは本当に見事だった。みんな、お前のことを誇りに思ってるぞ」
「そ、そうか?」
そんな風に言われると、少し照れくさいが……やっぱり、嬉しい。
すると、アリスがニヤッとした顔で俺を見てきた。
「でも、ロラン、次の戦いはもっと華やかに見せてくれるわよね?」
周りの騎士たちも興味津々の顔で俺を見つめている。
俺は苦笑しつつも、心の中でみんなの期待に応えたい気持ちが湧いてきた。
「やれやれ、俺に期待しすぎるなよ」
そんな俺に、クレハは熱い眼差しを向け、アリスやリアも満足そうに頷いている。
俺はそんな仲間たちと一緒にいる幸せを噛みしめながら、杯を掲げた。
「それじゃあ、改めて、皆に乾杯!」
こうして俺たちは杯を重ね、広間には一層の歓声が響き渡る。
王都の夜は、俺たちの絆でますます深まっていき、終わることのない賑やかな時間が続いていくのだった。
── お久しぶりです ──
この度、第17回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を受賞いたしました。
それを記念して、おまけとして番外編を投稿させていただきます。
ここまでのご愛読、心より感謝申し上げます!