その瞬間、俺の体から大量の炎が溢れ出る。
するとロゼッタは満面の笑みを浮かべ、楽しそうに口を開いた。
「炎竜みーつけた」
そう呟いたあと、ロゼッタはまたもや鎌を振りかざしてくる。
俺は横に飛び退き、ロゼッタの一撃を躱す。
そしてそのまま炎魔法を発動する。
《最上級魔法 獄炎!!!》
俺がそう唱えた瞬間、ロゼッタの周りを黒い炎が囲む。
炎は徐々に火力を増していき、最終的に炎柱がロゼッタの周りに出現する。
「な、なんなんだ!?」
兵士からは、思わずそんな声が聞こえてくる。
だがそんな事を気にしている余裕は今の俺にはない。
この魔法の後に起こる疲労を考えると、下手に時間をかける訳にはいかないのだ。
俺は魔方陣の描かれた手をロゼッタに向ける。
すると黒い炎がロゼッタに迫っていき、体を焼き尽くす。
「やばあ! お兄ちゃん凄いね!」
ロゼッタはそう叫びながらも、炎に飲み込まれていく。
(なんなんだこいつは)
俺はそう考えながらロゼッタを睨みつける。
すると俺を囲んでいた炎が消えていってしまう。
どうやら魔力切れのようだ。
俺は息を切らし、その場に座り込む。
そして俺はロゼッタのいる方を見る。
するとそこには火傷を負ったロゼッタが笑みを浮かべて立っていた。
だが再生能力があるようで、傷が徐々に無くなっていっている。
「いやあ、凄いね! 私の再生が追いつかないなんて!」
「おいおい……俺の魔法でも倒しきれないのか」
俺は思わずそんな声が出てしまう。
まさか俺の最上級魔法を見ても、笑みを浮かべられるほどの実力を持っているとは思わなかった。
やはり魔王軍の幹部は危険すぎる。
ロゼッタは俺の顔をしばらく見ていたが、突如くるっと後ろを向き、後ろにいた竜の上に乗る。
そして最後にロゼッタは振り返り、満面の笑みを浮かべ呟いた。
「今日の収穫は炎竜だ! 魔王様喜ぶだろうなー! それじゃあまたねお兄さん!」
ロゼッタがそう言うと竜は翼を羽ばたかせ、飛んで行ってしまう。
俺はその後ろ姿を見ながら、目を瞑り考え事をする。
(ロゼッタ……そんな奴原作にいたか? そもそもロゼッタなんてキャラクターは、このゲームにはいなかったはずだ。それに魔王が喜ぶ?)
俺はそんな事を考えていると、近くにいた兵士が俺に声を掛けてくる。
「カーメンさん! 次の魔物が来ます!」
俺は兵士の言葉に反応し、前を向く。
するとそこには魔物の大軍が見えた。
オークやオーガなどの中級魔物の大軍だ。
「盾兵、槍兵、次の作戦に移行する! ここは必ず死守するぞ!」
俺がそう言うと、盾兵と槍兵が盾を前に構える。
そして魔物との壮絶な戦いが始まるのだった。