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第49話  魔王軍と華陽の戦い 1日目

「準備は出来たな?」


「はいカーメンさん」


「よろしくお願いします、カーメン殿、エトラ殿」


 俺たちは今門の付近にいる。


 指揮を担当するのは俺とエトラ、そして華陽の軍から1人選ばれたキシさんだ。


 この華陽には3000人の兵がおり、その内の1000人を3人に割り振った。


 そしてもうすぐここに、魔王軍がやってくる。


「私達が出たらすぐに門を閉ざせ」


 キシさんがそう言うと、兵達は頷く。


 このキシさんは華陽の軍から選ばれた兵だ。


 守備兵の隊長でもあり、その実力は確かで俺やエトラよりも経験は多いだろう。


 するとキシさんは、俺の目を見るなり口を開く。


「カーメンさん、必ず華陽を魔王軍から守り抜きましょう」


 その言葉には、強い想いが込められているのが分かる。


 俺は大きく息を吸い、そしてゆっくりと息を吐く。


 そして冒険者、兵士に目を向け、口を開く。


「必ずやここ華陽を守るぞ!!」


 俺がそう叫ぶと、冒険者と兵士の叫び声が周りに鳴り響く。


 皆んなの瞳に一切の曇りもない。


 絶対に華陽を守るんだと言う強い意志を感じた。


 そんな中、ついに鐘の音が鳴る。


 それは魔王軍が来たという合図だ。


「魔王軍が攻めてきたぞおお!!!」


 城壁の上にいる兵士がそう叫ぶ。


「全軍出陣!!!」


 キシさんがそう叫ぶと、冒険者と兵士が声を上げ、門から出ていく。


 そして俺とエトラ、キシさんも門から出て、魔王軍と戦うのであった。



「あれが……魔王軍」


 俺はそう小さく呟く。


 今俺の視界には多くの魔物が写っていた。


 その数は1000を優に超えているだろう。


 それにただの魔物だけじゃない、上位種のゴブリン、オーク、トレントもいる。


「俺たちは中央軍だ、必ずここで食い止めるぞ!!」


 俺はそう叫び、前進を始める。


 エトラは左翼、キシさんは右翼の指揮を執ることになっている。


 一つでも突破されれば、華陽は終わりだ。


 だから何としてでも食い止めなければならない。


「カーメンさん! 前方にゴブリンの上位種を確認!」


 すると俺の近くにいた兵士がそう叫んだ。


 俺はその兵士が指さした方を見る。


 するとそこには確かに、他のゴブリンとは格の違う魔物がいた。


(や、やべえ、死にたくねえ!!)


(魔物となんてあんまり戦った事ねえよ……)


(い、いきなり上位種!?)


 周りでは、兵士からそんな声が聞こえてくる。


 それも無理のない事だ。


 魔物と戦う機会などそう多くは無い。


 そして上位種なんて、ほとんど出会った事すらないだろう。


 それに加えて精鋭となる兵士達は、胡威に向かっている。


 ここにいる兵士の殆どは新兵と言ってもいいだろうな。


 すると上位種のゴブリンが、俺たちに近づいてくる。


「よし、お前達! 前に出ろ!」


 俺がそう叫ぶと、後ろで待機していた冒険者5人くらいが前に出てきた。


「おらぁぁ!」


 後ろにいた冒険者達が剣を振り、上位種のゴブリンに攻撃していく。


「最初の勢いは重要だからな」


 俺はそう呟く。


 事前に俺は冒険者達を後ろに待機させていた。


 最初は兵士では無く、冒険者達の力が必要だと思ったからだ。


(す、すげぇ! ゴブリンをあっさり仕留めてる!)


(冒険者ってこんなに機敏なのか)


(俺らも負けてられねえぞ!)


 そんな冒険者達を見て、他の兵士達が驚きの表情を浮かべる。


「ここからは俺が先頭を行く! 付いて来い!」


 俺がそう言うと、兵士達が叫び前進していく。


《上級魔法 炎風》


  次の瞬間、炎で出来た風が多くの魔物を焼いていく。


 この上級魔法は威力が強いだけあって魔力を少し使うが、今はそんなことを考えている暇はない。


 (す、すげえ、上級魔法だ!)


 (そんな魔法を使う人間がいるなんて、何者なんだ!?)


 またも後ろで待機していた兵士達から叫び声が聞こえる。


 すると近くにいた冒険者が、俺に話しかけてきた。


「もしかしてあんた、あのセレス様と戦ったっていう『仮面の男』か?」


「ああ、まあな」


 俺がそう答えると、冒険者は驚いた表情を見せ、そして満面の笑みを浮かべる。


「そんなに強い人が味方にいてくれるなんて、心強いぜ」


「一応魔力にも限界があるからな、お前達の力が必要だぞ!」


 俺がそう叫ぶと、冒険者達は頷く。


 すると次の魔王軍が接近して来ているのが目に入った。


 接近してきた魔物は上位種のトレントだ。


 腕と足が異常に長く、そして木で出来ているため、その攻撃は多彩だ。


「ここは我らにお任せを!」


 兵士達がそう言うと、グループになってトレントに近づいていく。


 盾と弓矢、そして剣を持った兵士達が、一斉にトレントに攻撃を仕掛ける。


「弓兵、放て!」


 隊長がそう叫ぶと、兵士達は次々にトレントへ矢を放っていく。


 盾兵はトレントからの攻撃を抑え、防御としての役割をこなす。


 そして長剣を持った兵士達が、トレントに攻撃を仕掛けていく。


「おらぁぁぁ!」


 そして剣がトレントに突き刺さる。


 それと同時に、槍兵がトレントの幹に攻撃する。


 するとトレントは、木を折るような音を出し、その場に倒れてしまった。


「これが……兵の戦い……」


 俺は思わずそんな声をだす。


 こんなに連携がとれている戦い方を、俺は見たことがなかったからだ。


「カーメンさん! どんどん進んで行きましょう!」


 後ろから兵達のそんな声が聞こえる。


 どうやら士気がかなり高くなっているようだ。


 俺はこの流れを絶やすまいと、前に進んでいくのであった。

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