「トン爺、今日は何の魔法を学ぶんだ?」
俺がトン爺の所に通い始めて数週間、俺は基礎の魔法なら簡単に使えるようになっていた。
まずは初級魔法から始め、今では中級まで使えるようになっている。
「最近のロランの成長スピードには吃驚じゃ。やはり王族はセンスが良いのじゃな」
トン爺に褒められて俺は少し嬉しくなる。
前世では運動神経も悪かったし、特にこれといった取り柄もなかったからな。
「さてと、今日は上級魔法の一番簡単な魔法を教えるとするかのう」
「おお! ついに上級魔法が使えるのか!」
上級魔法はかなり難しい魔法であり、魔力のレベルが相当高くないと覚えることの出来ない魔法だ。
「今日は火属性の上級、《火槍》を教えようかのお」
《火槍》は炎の槍を複数生み出し、敵に向かって放つ上級魔法だ。
この魔法は魔術師レベルじゃないと使えない結構高度な魔法だ。
「それじゃあ、まず感覚を覚えてもらおうのう」
「か、感覚?」
そう言ってトン爺は俺の背中に手を当てる。
すると手の平から何かが背中を通して入り込んでくるのが分かる。
これは魔力だ、多分トン爺は魔力を注ぎ込んで、俺の体に覚えさせているんだと俺は思う。
そして俺の体の中に何か別の物が入り込む感覚、気持ち悪いが我慢する。
「その感覚をしっかりと覚えるのじゃ、そして自分の魔力と合成させよ」
「はい」
俺は目を閉じて、魔力と魔力を合成させるイメージをする。
すると体の中にあった何かが消えた。
どうやら合成できたようだ。
そして俺は魔法名を言う。
《火槍》
すると俺の目の前に炎の槍が3つ現れた。
だが形や大きさはバラバラで、とても上級魔法には見えなかったが、トン爺は満足そうだ。
「初めてとは思えん出来じゃのう。《火槍》をあんな短時間でも形にするとは」
「トン爺の教え方が上手いからだよ」
「こればかりはお主のセンスじゃよ。儂はただ魔力の操り方を感覚で教えただけじゃ」
トン爺に褒められた俺は少し嬉しかった。
前世では褒められる事なんて殆どなかったからな。
「よし、次は中級魔法の《ファイアボール》を出してみるんじゃ」
「分かりました」
《ファイアボール》、これは炎の玉を複数生み出して、敵に放つ魔法だ。
これは中級魔法だが、俺はもう使える。
俺は手の平を上に向けて魔法名を言う。
《ファイアボール》
すると俺の周りに複数の火の玉が浮かび上がり、俺の周りを回り始める。
「その火の玉にさっきの《火槍》の感覚で魔力を注ぎ込んでみるのじゃ」
俺は言われた通りに火の玉に魔力を注ぐ。
すると火の玉は一つになり、炎の槍へと姿を変える。
「で、出来ました」
「うむ、良い出来じゃ。それじゃあちと《火槍》を撃ってみるかのう」
「分かりました」
俺は火の槍を投げて壁へとぶち込んでみる。
すると俺が生み出した火槍が壁にぶつかり、爆発して壁を大きく傷つけた。
(か、かなり威力が高いな……)
俺は《火槍》の威力に驚いたが、同時にこの魔法には欠点がある事に気が付いた。
それは魔力の消費が激しいという事だ。
中級魔法の《ファイアボール》はそこまで魔力の消費は激しくないが、《火槍》はかなり魔力の消費が多い。
それにコントロールも難しい。
俺は《火槍》の制御をもっと練習する必要があると痛感した。
「良き良き、この調子じゃ」
トン爺は嬉しそうに俺の魔法を見ていた。
俺はもっと強くなれる、そんな気がした。