その一言が放たれた瞬間、隣にいたルンが恐怖で震え始める。
彼女の返事を待つ間、空気が一層重く、冷たくなるのを感じた。
「もう瀕死だったし、死んでるんじゃない~? まあ、私がこの剣を持っているのが答えってことで……」
レードの無邪気な言葉は、俺の怒りにさらに火を注ぐ。
胸の奥で煮えたぎる感情を抑えることができなくなった。
仲間の命を奪った可能性があること、それを楽しげに語る姿が、俺の心に深い爪痕を残す。
「話は終わりだ。《第三級魔法/ヴォイド・シフト》」
俺は意識を集中させ、無の魔力を操り、瞬時にレードの背後に転移した。
ヴォイド・シフトは通常の転移魔法とは異なり、魔力の波動を抑えたまま接近できる。
俺はレードに気づかれることなく懐に潜り込み、一瞬でレードの背後に立っていた。
「え、いつからそこに──?」
レードが驚愕の表情を浮かべる前に、俺は素早く次の魔法を発動させる。
「遅いぞレードよ。《第三級魔法/フェニックス・フレイム》」
両手から膨大な魔力を込めた炎が溢れ出し、レードの全身を覆うように放たれる。
その瞬間、周囲が眩い光に包まれ、熱風が吹き荒れる。
フェニックス・フレイム──その威力は地面を焼き焦がし、草木を蒸発させるほどだ。
「あああああああああ!?!?」
彼女の悲鳴が、灼熱の炎の中で響き渡る。
逃げようとするも、全身を苛む熱と痛みによって身動きが取れなくなっているようだ。
彼女の体は焦げ付き、皮膚はただれ、もはや人間の姿を保つのがやっとだった。
それでも、彼女は必死に逃げようと足掻く。
「ど、どうなってるのよ!? なんであんたが第三級魔法を!?」
その言葉に、俺は軽く鼻で笑い、冷たく言い放つ。
「ふん、第三級どころか、第二級魔法も使えるが、試してみるか?」
レードの瞳に浮かんだ絶望は、俺にとっての勝利の証でもあった。
もしここで第二級魔法を放てば、この森全体が消滅するかのような威力だ。
その一言がレードにとって、どれだけの恐怖を与えたかはレードの顔を見れば一目瞭然だった。