「ど、どうなっているんだ、ぼ、僕が負けた?」
僕は今、学園の保健室に横たわっている。
どうやら、アレンとの決闘に負けたらしい。
しかも、場外負け――情けない、まさか僕がこんな形で負けるとは。
「くそ、なんであいつが第3級魔法を使えるんだよ……」
第3級魔法だぞ!? そんなもの、相当な魔術の才能と経験がなければ扱えるはずがない。
上位魔法は選ばれた者だけが手にする力だ。
それを、アレンは何の苦労もなく、涼しい顔で使いこなしていたなんて……信じられない。
僕は《剣聖》のスキルを駆使して、剣技を次々に繰り出した。
それなのに、あいつの前では僕の剣技なんて、まるで子供の遊びのように無力だった。
「もしかして、あいつは転生者なのか?」
そんなことが頭をよぎった。
原作にはこんな展開、どこにもなかったはずだ。
アレンは、ただの悪役貴族。
僕に倒され、ざまぁされるべき存在だった。
それなのに、僕とは比べ物にならないくらい強い。
こんな事はあってはならない。
あのアレンは、ゲームでは第8級魔法すらまともに使えない無能な令息のはずだ。
魔法テストでもFランクの成績しか出せなかった雑魚キャラ。
けど、もしあいつが転生者だったら?
もしそうなら、この世界のシナリオを既に理解していて、僕の人生をめちゃくちゃにする気かもしれない。
僕は、この世界を愛している。
ヒロインたちとの物語、そしてハーレム生活。
僕は全てを手に入れ、ヒロインを支配するんだ。
そう、この世界の主人公は僕、カイル・リューコスだ。
何をしても、許されるはずだ。
でも、もしアレンなんかにヒロインを奪われたら?
そんなことがあったら、僕は怒りで狂ってしまうだろう。
「絶対に、アレンを殺してやる。僕の手で……!」
僕には最強のスキル、《剣聖》がある。
今はまだ完全には使いこなせていないが、いつかあいつを倒す力を手にする。
簡単には終わらせない。
じっくりと、苦しめながら、殺すんだ。
「ふはははは! そうなれば、この世界は僕の物だ! ヒロインも、すべて!」
僕は、この世界のシナリオを守る。
アレンがそれを崩そうとするなら、絶対に許さない。
「待っていろよ、アレン……」