「話したい事?」
俺がユキにそう尋ねると、静かに頷く。
「私達パーティーの目的だよ、これから一緒に行動していくんだし、説明をしておかないとね。ここに座って、アレン」
ユキは空いている席に座るよう、俺に言う。
席に座ると向かい側にはゴウとルンが座っており、真剣な顔付きで俺を見つめている。
「私達の目的なんだけど、国家直属の冒険者になりたいの」
「こ、国家直属……」
俺は『国家直属』というワードを聞き、少々驚いてしまう。
確か原作には王族に属している冒険者がいたような気がするが、半端じゃない鍛錬を積んでいたはずだ。
もし目指すと言うなら、生半可な道ではない。
「実際、国家に直属している冒険者がこの王都にいるわ。確か風の噂によると……冒険者ランキング3位のパーティーだったはず」
冒険者ランキング、俺も少しだけ聞いた事がある。
ランキングに入れるのはS級冒険者のレベルであり、ランキングが高いほど貴族からの依頼など、高度な依頼が来る。
基本的にS級冒険者はその場に留まることは無く、各地の大陸を渡って冒険者の活動をしている。
国家直属になるという事は、冒険者ランキングに入る事を目指すという事だろう。
そんな事を俺は考えていると、ユキが俺の手をぎゅっと握ってくる。
「私達のパーティーはまだ土俵にすら立ててないけど、どんどんパーティーランクを上げて冒険者ランキングに入りたいと思ってる。だから、アレンの力が必要なの」
俺の入ったパーティーがまさか国家直属を目指しているとは思わなかった。
ただ金稼ぎの為に作られたパーティーだと思っていたんだが。
(だが、俺をパーティーに入れたのは素晴らしい。ユキは先見の明があるな。それに、俺も国家直属の冒険者になる事は賛成だ。直属になれれば裏側の情報を入手する事が出来るし、俺にとっては上手い話だ)
「ああ、必ず国家直属の冒険者になれるよう、頑張ろう」
「ありがとうアレン! これからも宜しくね!」
「宜しく~アレン~」
「これでアレンが入ったからパーティーは4人だな! 早速依頼でも受けようぜ!」
なんだが騒がしいパーティーだが、この雰囲気は嫌いじゃない。
あの貴族学園だと俺も気楽に行動が出来ないからな。
「受付嬢さん! 大変だ! 近くの森でB級オークに襲われた冒険者パーティーがいるらしくて、緊急の連絡が来ています!」
突然、ギルドの扉が開かれ、男一人が入って来る。
どうやらかなり焦った様子であり、非常にヤバい状況なようだ。
「それはまずいですね……ユキさん、この件お願いできますか? 報酬金はギルドが出しますので」
「分かりました! それじゃあアラン! 初めての依頼だけど頑張るよ!」
「お、おう」
迷惑をかけないように頑張るしかないな……。