次の日、俺は魔法学園に向かう為、馬車に乗って移動している。
俺一人では無く、メイドのリュカを連れてグレイス公爵領から王都のルグシア学園に向かっている。
正直言って、俺の転移魔法を使えば一瞬で学園に着くのだが、そんなものを使ったら騒ぎになってしまうからな。
仕方なく俺は馬車に座り、学園まで着くのを待っている。
(取り敢えず、俺は平和に学園を過ごしたい)
アレンは悪役という設定なのもあり、貴族の中では悪名高い。
魔法学園ではこの世界の主人公、カイルと出会う事になっている。
アレンはカイルを平民という理由でカイルに何度も戦闘を申し込む。
だが、アレンはカイルとの戦闘に何度も負けてしまい、クラスからも仲間外れにされていく。
そんでアレンはカイルに勝つ為にありとあらゆる方法を使って落とし入れようとするんだが……悪事が最終的にバレて、アレンは王国から追放されてしまう。
追放された後はどうなったか知らないが、多分生きてはいないだろう。
「まず、初日の入学式にカイルとのイベントがあるんだよな……どうしたもんだか」
俺は少し憂鬱な雰囲気を出しながら、窓の外を見る。
すると、護衛として同伴しているリュカが口を開く。
「アレン様は私が命に変えてもお守りします故、ご安心ください」
リュカは自信ありげな顔をして、俺の隣に座り、話しかけてくる。
そっちの心配ではないのだが……まあいいか。
「そう言ってくれて嬉しいよ、リュカ」
俺はリュカに感謝の言葉を送る。
するとテンションが上がったのか、頬を赤らめてにやけている。
一体どんな妄想をしているのか分からないが、スルーしておいた方が良さそうだな。
俺は興奮しているリュカを視界から離し、入学式の事を考える。
(目立たないことが重要だ……穏便に学園生活を送りたいからな)
俺の破滅的エンドを回避する為に、あまり勇者達とは関りを持たないようにしよう。
俺はそう決心し、学園に着くまで目を閉じるのだった。
★
「ここが学園……ん?」
俺はルグシア学園の敷地に足を踏み入れいると、周りにいる貴族達の陰口が俺の耳に入って来る。
「あいつってグレイス家の令息、アレンじゃない?」
「メイドや民に対して傲慢な態度を取っているらしいぜ」
「あいつがいると学園の空気が汚れるな」
ゲームの設定だとグレイス家の令息はかなり悪名高いし、評判も悪い。
何せアレンは幼い頃から権力を振り回して、色んな迷惑を掛けていたからな。
そりゃ貴族の間で嫌われてても、文句は言えないだろう。
「アレン様、奴らを殺す指示を下さい」
「な、何言ってるんだ! そんな指示を出したら俺は終わりだぞ!?」
俺の横にいるメイドのリュカは殺気を出して貴族達を睨んでいる。
流石にこのままでは危険だと思い、俺はリュカに一声掛ける。
「まあ、ここから評判を少しづつ取り戻していけばいいんだ。だからここでそんな物騒な殺気は出さないでくれ」
「アレン様のお考えを汲み取れず申し訳ありません! ですがもし、あの貴族達がアレン様に手を挙げましたら、私は問答無用で始末します」
リュカはグレイス家に忠実、そして献身的ではあるのは知ってたけど……まさか、ここまでだとは思わなかった。